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76,脱税バレる。

 

 女騎士の名はスゥというらしい。あとから聞いたところでは、


 アークは拳闘スキル《八の弾》。八度目の拳で意識を刈り取る非殺傷スキルで気絶させてから、ここにサラがいたら、この女騎士も奴隷コースに入れられかねなかったな、と無用な心配をした。


 その後、ゴーグ公爵を拉致。

 奴隷ギルド本部に戻り、できすぎるメイドのライラエルに女体化の素材として提供する。


 しかし──このメイド、性別転換の技など、どこで学んだのだろう。それはもう人間の領域ではなく、悪魔の力なのではないか。

 そういえば、もとは悪魔のガチャから排出された星5だったか。


「にゃぁ(さては悪魔が、人類支配のため送り付けた尖兵、とかではないよな?)」


「猫様。存在もしていない私めの企みについて考察している時間がありましたら、もう一つの懸念材料について対策されたほうがよろしいかと」


「にゃぁ(懸念材料? 冒険者ギルドのことか? そして普通に猫語が分かるのか)」


「にゃぁ(理解できるだけではなく、少しばかり話すこともできますが)」


「にゃぁ(なんて完璧な、猫語だ!)」


 という驚きに満ちていたところ、ライラエルの企みやら、『もう一つの懸念材料』の正体について追及るのを忘れた。


 その後、サラの奴隷ギルド商売は軌道に乗った。

 貴族拉致→強制女体化→闇ルートで販売。結局のところ、良質な商品と販路さえ確保することが大切なわけだ。


 ただ奴隷ギルドが短命だったのも事実だ。貴族の数には限りがあり、王都側もさすがに貴族連続誘拐事件の解決のため、本腰を入れ始めた。

 となると冒険者ギルドが出張ってくるし、最近は闇黒島という捻りのない未開領域の探査に出ていたSランクパーティも帰還したという噂もあれば、サラも、


「そろそろ引き上げどきだね」


 という賢明な判断に至る。

 もともと生意気なJCに痛い目を見せるためだけの、一時的な奴隷商人としての仕事だった。


 かくして奴隷ギルドを畳むため、届け出を出した。

 が、このとき確定申告は省いた。奴隷ギルドは自己矛盾をはらんだ存在であり──正式な届け出を出した正統ギルドである一方、やっていることは王都の法律に反する。ついでにいうと、王都側はいまだ気づいていないが、売りさばいたのは行方不明中の貴族たちだ。ライラエルの手際で、美人化しているので気づきようもないが。


 とにかく違法なことに手を染めたギルドが確定申告を出すなどバカバカしい。

 結果、これは脱税したということになる。


 そしてのちに気付くこにとなるが、脱税を取り締まる税務ギルドは、業務の一部を外部に委託していた。どうにも困るところに。


「あ、やばい。それ、うちだよ!」


 と、サラが無駄に驚いたのが三日後のこと。

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