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75,サラさん、奴隷商人をはじめるpart8。

 


 久しぶりに猫スキル──ではなく、拳闘魔術スキルを見せるときかと思ったが、


(面倒くさい)


 という猫的思考。

 に毒されて、アークは隠密スキル《隠滅》で、そそくさと退散。

 はじめの狙いどおり、貴族は収納したのだから問題はない。


 尾行なしを確認してから、奴隷ギルドに戻る。とはいえ奴隷ギルドとして正式受理されているので、本住所もバレているわけだが。


(まぁしかし、いまのところ『連続貴族失踪事件』と、奴隷ギルドの活動成績が関連づけられているところはないしなぁ)


 しかし今回、肥満の貴族を拉致する現場を、王都の女騎士に目撃されているので、『失踪』から明確な『誘拐』へとシフトされるわけだ。

 これまで王政府側が『失踪』か『誘拐』かで迷っていたのは、仮に誘拐ならば、身代金要求があるはずではないのか、という一点。もちろんサラは奴隷ネットワークに流す腹なので、身代金要求などに興味はなく、結果的に捜査攪乱につながっていた、というわけだ。


 アークは今回の貴族収納中のトラブルを、サラに伝えた。動物の言葉が分かるケイトなくしても、ついにサラとのコミュニケーションが、それなりに取れるようになったのだ。

 絵を描くことで。猫の肉球で描くのは大変だが、自分の力で描くことに意味がある、たぶん。


「ふーん、王都の女騎士に見つかった。するとその女騎士に『くっ殺せ』してきたの?」


「にゃぁ(なんだ、それは)」


「最近、流行ってないのかな? ポリコレ的にも、くっ殺は、もう時代遅れ? どうでもいいけど。ミィさま、お次は大物だよ。ゴーグ公爵。実は奴隷組織をいくつか裏で動かしていた黒幕的なお方。こういう大物を奴隷に落としてこそ、奴隷ギルド〈シロネコトマト〉の本領発揮というものだよね」


 アークはひとつ疑問に思っていることがあった。貴族奴隷は、どれも見目麗しさに欠ける。先ほどの肥満の貴族がよい例だが。これに需要があるのか?

 しかしアークの心配など、サラ──ではなくライラエルは、すでに到達し、かつ解決済みだった。なんという仕事ができるメイドか。


「はい、秘技をもちいて、拉致した貴族たちをみな美人に転生させてから売ります」


「……」


 このメイドはできすぎている。

 アークは困惑しながら、ゴーグ公爵邸に向かうも、『美女に転生してから売る』の衝撃に、気づくのが遅れた。

 半日前に遭遇していた女騎士に、またも見つかっていたことに。何か縁があるのか。というか猫を見つけるのに長けているだけか?


「ここで会ったが百年目!」


 などと女騎士は言うが、その古典的様式、嫌いではない。

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