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74,サラさん、奴隷商人をはじめるpart7。

 


 なんと貴族というのは、住まいを公開しているのだ。

 このご時世に、なんて大胆。しかし王都法では、貴族への犯罪は軽微であっても、処刑か、よくて終身刑。つまり貴族の邸宅に盗みに入ったり、誘拐したりする猛者はそうはいないわけだ。

 ただでさえ王都でも貴族区画は、治安が良い。王都軍が直々に巡回しているほどなのだ。


「うちのミィくんが、黙ってないよ」


「にゃぁ(なんだと?)」


「貴族を片っ端から拉致して奴隷として売り飛ばすプランのために、ミィくんの力が必要なんだよ。ミィくん、お願いします」


 と頭を下げるサラ。

 飼い主に甘いので、アーク(ミィ)は仕方ないな、と思いつつ、立ち上がる。

 はたして前世で、こんなことのため魔術を使うため、訓練していたのだろうか。などと疑問に思わないでもないが、アークは最近、次のような素朴な結論に達していた。


 人生、ままならん。


 拉致するにあたり、収納魔術を活用する。片っ端からと言いつつ、サラはちゃんと選別していた。

 まず未成年は除外。さらに庶民に優しい、たとえば慈善活動などに力を入れている有益な貴族も除外。


 一方、自分のことでしか金を使わない、庶民から巻き上げることしか考えない、あと給付金の申請がめんどくさい──そういう有害で使いものにならない貴族や王政府の者には、容赦がなかった。 


 アークとしても、別段、このような貴族や王族(王位継承権が205位まであるだけあって、王族の数も多い)は、いてもいなくてもよいとは思っている。

 いないほうが、国のためには良いのかもしれない。


 拉致は手際よく行っていく。夜寝静まったとき、まるで神隠しのように、ベッドから貴族たちが消えていく。噂はあっというまに広がり、貴族たちのあいだでは恐怖をもって語られ、庶民たちには面白い娯楽として語られた。庶民からすれば、偉そうにしている貴族が消えようが、どうでもいいわけだ。


 ある夜。200キロはある巨漢の貴族の収納に手古摺っていると、巡回中の王都騎士にみつかった。

 アークは非殺傷の火炎弾を投げておいてから、巨漢の収納を済ませて跳ぶ。


 ところが斬撃をくらい、くるっと回転して、着地。


「にゃぁ(怪我したくなかったら、やめておけ)」


 その騎士は、やたらと自信満々な長身の女だった。片手剣の刃が、月光を反射させている。いや、月光をチャージしているのかもしれない。月の光の剣か。


(……さては、武器ガチャで引いた星5武器だな)


「この猫が、我を王都騎士団の隊長と知っての愚弄か?」


 アークはあくびを噛み殺して、肉球を地面でこすりながら思った。

 こんなことのために魔術と拳闘スキルを磨いたわけではないのだが。

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