73, サラさん、奴隷商人をはじめるpart6。
残りのJCを回収しながらも、サラは不可解に思っていた。
奴隷ギルドの資金が、異常な速度で増えていくことに。これはどのような投資だろうか。
奴隷ビジネスである。
サラとアーク(ミィ)がJCの回収に動いているとき、ライラエルは粛々と奴隷ギルド運営に精を出していたのだ。
そして気づけば、この営業利益である。そもそも奴隷ビジネスというのは、売上原価はかからない。販売費としては、配送業者への支払いが主か。ところがサラは収支表を見て気づいた。配送業者への支払い項目がない。
「ライラエル。配送業者への支払いは? どういう契約条項だったの?」
「お嬢様、配送業者の方々は、喜んで無償でご協力してくださるとのことでした」
世の中、タダほど怖いものはない。
と、サラは我ながら鋭い意見だぞ、と思う。しかしライラエルは、星5ガチャのメイドだけあって、そんなことはすでに考慮済み。
「お嬢様。今や〈名前はまだない〉は最大手ギルド。冒険者ギルドに匹敵しうるギルドに恩を売っておきたいという業者は多くいるのです」
なるほど、なるほど、としばし納得する。
納得してから思うに、いやまてよ。
無償の意味、というか、相手がたの狙いは理解した。しかしそれに乗っかると、恩を売られたことになるのでは? そんなものを買いたくはないのだ。
しかしライラエルが言うには、この場合の恩を返すとは、この契約を続けることでよいのだとか。
つまり、〈名前はまだない〉傘下の奴隷ギルド〈シロネコトマトの愉快便〉と契約している業者というだけで、王都では箔がつく、というかその業者の資産価値が上がるのだとか。
「うーん。まさか〈名前はまだない〉が、そこまでの影響力を有していたとは」
それにしても、小生意気なJCをビビらせるためだけではじめた奴隷ビジネスだが、こうも利益が出ると、やめるのがもったいない。
しかし、さすがに奴隷ビジネスは心が痛む。ポリコレ精神にも反するぞ。
しかして、サラのもとに天啓がひらめく。
思うに、弱者を奴隷にするから犯罪なのであって、強者を奴隷にする分にはオーケイなのではないか?
使えない王族、貴族、政治家。奴隷に値する。これぞ逆転の発想。
「いわばこれは正義の道」
とりあえず儲かるし、気持ちの整理がつくのならば、それは正しい。
「ね、ミィくん?」
と、笑顔で呼びかられた転生三毛猫は思う。
(まぁ、勝手にやってくれ)




