72,サラさん、奴隷商人をはじめるpart5。
奴隷ギルド〈シロネコトマトの愉快便〉は、知らない間に大手の配達業者と契約を結んでいた。
これは信じがたいことだが、契約書類には確かにそう明記されているのだ。
「うーん。でもおかしいよ、ミィくん。ギルドメンバーはさ、ギルマスのケイト、あたし、そしてミィくんの二人と一匹だけ。でもケイトは行方不明だし、一体誰が契約したというのだろうね。この謎はきっと永久に解けないにちがいない」
メイド服に隙のないライラエルがはたき片手にやってきて、
「お嬢様、奴隷ギルド拠点のお掃除を済ませました。何か御用はありませんか?」
「……謎が解けた。そういえば、ライラエルがいたんだっけ。もしかして奴隷ギルド〈シロネコトマト〉のために、大手配送業者と契約した? 奴隷を配送するために?」
「はい、お嬢様。将来的には奴隷配送ネットワークもまた、奴隷ギルド〈シロネコトマト〉の構成員で成すべかと愚考いたします。ですが現段階では現実的ではありませんので、このように大手配送業者と契約を結び、奴隷の配送を恙なく行うことができれば、と思います」
「ふーん。いい仕事するんだから」
いい仕事をしすぎたのではないのか。
4人のJCは、すでに配達業者によって、奴隷売買ネットワークにのせられてしまったのだ。
さすがにこれはやりすぎたと、ちょっぴり思ったらしいサラ。
『ちょっぴり』というのがみそだが、さっそく配達業者と連絡を取り──ライラエルが──まずは4人のうちの一人の配送先を突き止めた。
「これは貴族御用達の少女娼婦が売りの高級娼館! ……処女膜の責任を負わされるから、助けるのはやめておこう」
「にゃぃ(まだ処女膜は助かるかもしれない!)」
「そうだね、ミィくん。善は急げだ! 正義のために~!」
結果からいうとダメだった。
とりあえず娼館の経営者と話し、買い戻す。このさい、『せっかくの上物を安々と手放せるか』と経営者がごねるので、『うちに喧嘩を売って、キミのご家族の安否が心配だよ』と、サラがオーラばっちりで脅かす必要もあった。
とにかく、一人目を回収。
しかし、JCその1の心の傷は深い!
「まぁ、人生いろいろだよね。物事のいい面をみていこう。キミはもう経験者だ。次に学校にいったときに自慢できるよ」
慰め下手。
アークは毛づくろいしながら、うちの飼い主はこれでも善人枠なのだからなぁ、つくづく思う。
だいたいこの世界の全体的な倫理レベルが落ちているので、サラでもまだまだ善良代表でいけるのだ。




