70,サラさん、奴隷商人をはじめるpart3。
奴隷売買組織その1。
一応は立派な組織名があるにはあるが、どうせ30秒後には滅びるので、サラとしては
「どうでもいいので、剣術スキルlevel12《乱気斬》!」
拠点の外壁を、斬撃の嵐で破壊しまくる。
本来はドラゴンクラスの強敵を倒すための殲滅スキルなのだが、今日のサラはやる気だ。
それがなぜなのか、アーク(ミィ)はこの時点では知らなかったが。
とにもかくにも、やる気にあふれている。
そしてアークが呆れるのは、奴隷売買組織のくせに、なんだか立派な拠点を持っていること。
確かに拠点は必要だろうが、まるで隠そうという意志が感じられない。別に看板があるわけでもないが、王都警察がちょっと手入れでもすれば、すぐに正体を暴けそうなものだ。
これは王都政府の上層に、かなりの金が流れているとみられる。一説には、奴隷売買は貴族の副業、とまで言われている次第で。
奴隷売買組織その1の構成員たちが、「助けてぇぇ」「命だけはぁぁぁ」と命乞いをしてくる。
「うーん。別に君たちに恨みはないけど。まぁ悪いことをしていたという自覚があるなら──大人しく、死んでしまいなさーい。剣術スキルlevel12《乱気斬》!!」
通常の人間の構成員たちを狩るには、まさしくオーバーキルのスキル。
が、今日のサラは謎のやる気に満ちているため、殺生もいとわない。通常営業のサラならば、「敵意がない者は武器を捨てて出ていきなさい」くらいの慈悲は見せただろうが。
アークはサラの右肩にのったまま、「うーむ」と内心で首をひねる。
サラの『やる気スイッチ』を押したのは、一体、何が原因なのだろうか。
血みどろ祭り。人肉、斬斬、斬。
肉塊をふみこえていき、奴隷売買組織その1のトップと対面する。
そのでっぷり肥った男が、開き直って言う。
「我は、ガングギー伯爵だ! 貴様、無礼ではないか! 伯爵の施設に侵入してくるなど! どこのものだ? ただで済むと思って」
「うるさいなあ」
最後まで話を聞くのもだるいとばかりの、この迷うことのない一閃。
伯爵の首を刎ねる。勢いつきすぎて、飛んだ生首が天井にめり込んだ。
別の場所で、鉄鎖に拘束された奴隷たちを見つける。ほとんどがまだ子供で、いまから王都外に『出荷』されるところだったようだ。サラは鉄鎖をすべて切断し、宣言した。
「君たちは自由だ!」
奴隷にされていた人たちが、サラを救世主のように崇め、感謝の言葉を述べていく。
アークもすっかり感心して、
「にゃあ(みんなを解放することができて、よいことをしたなサラ)」
サラは迷いなく独り言をつぶやいていた。
「真に奴隷として売り飛ばすのは、生意気なくそガキどもだからね」
「……にゃぁ(いま、なんと???)」
「次いってみよー。今日中に奴隷商人は皆殺しだ」
結果。この日だけで、さらに7人の貴族が殺されたわけだ。それだけ貴族たちは、奴隷売買で利益を得ていた。そしてこのサラによる貴族惨殺は、ちょっとした問題になるわけだが──それはまた別の話。




