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67,密室で殺されると迷惑part5。

 

 拳闘スキルlevel13《次元斬拳》。

 使い手は数えるほどしかいない、次元を穿つパンチ──猫パンチを決めた。


 これでアーク(ミィ)は間一髪で、消滅先の空間から逃げ出すことに成功。消滅に『行き先』があるのもおかしな話ではあるが。


 アークはふぅと溜息をついた。冷や汗ものだ。実際のところ猫は肉球からしか汗をかけないが。そのせいで熱中症の危険が高まるという話。

 とにもかくにも、『攻撃』を受けたことで、アークははっきりした。


(なるほど。密室トリックが解かれると、解いた者が強制的に消滅させられる仕組みか。どうりでケイトが消えたわけだ──しかも認識阻害で、対象が消えたことを忘れさせるという細工まであるとは)


 ケイトは、この罠を仕掛けた者を見つけることができれば、助けられるだろう。そして罠をしかけた者は、まずもって殺人の真犯人と同一人物──殺人の……………


 アークは部屋に戻り、安楽椅子探偵をしているサラの膝にとびのった。


「ミィくん、撫でてほしいのかな?」


 サラが真実に辿り着くと、強制消滅させられてしまう──消滅といっても、即死亡ほどの凶悪なものではなく、どこか別空間に飛ばされるだけだが。アークが見たところ、あれはただの『真っ白い部屋』だったが。


 サラはアークの前脚のわきに両手を入れて、自分の目線まで高く抱き上げた。それから内緒話するように、アークの耳元で言った。


「ミィくん。いまライラエルが、細工をほどこしにいっているからね。もう少しで帰れるよ。だいたい、密室殺人なんていまどき古いんだよ。時代は先にいっているんだよ。そういえば、わたしが子供のころ読んだ推理小説だと、笑っちゃうんだよ。殺された被害者が、実は犯人だったというおち。つまり、死んだふりをしていたというわけ。そりゃあ自分で鍵をしめるんだから、現場が密室になるのは当然至極。まったく、あれはふざけたオチで──」


 サラの目に何かが走った。それはおそらく、『原点回帰』への閃き。


「もしかして!」


 と、アークを抱えたまま、現場に戻った。いまだ現場では、被害者シュナイダーの死体が放置されている。現場保全が大事という考えなのか。単に冒険者ギルド幹部が殺されたことを外部に隠し通すため、死体処理に手間取っているのか。


 サラはシュナイダーが本当に死んでいるか確かめたが、結局、これはただの死体であることに納得する。返事がない、ただの屍のようだ──


「なーんだ」


(その古典トリックは違うんだよなぁ。だからいまのところ、サラが消滅させられる心配はない、か)


 サラが妙に得心がいった様子で言う。


「まてよ。これ、もともと密室殺人の事件なんかなくて、単にわたしたちをおびき出すためのものだったんじゃない? つまり、ここは密室でさえないんじゃないの!」


 とたん、認識阻害スキルで造られていた四方の壁が消え去る。

 同時に謎を解き明かしたことで、サラが強制消滅させられようとする。


 だがアークが驚いたことに、サラは踏みとどまった。自力で、強制消滅をキャンセルするとは。


「腹がたつことこのうえなし!」


(時おり、こいつは天才ではないかと思うことがある)

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