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64,密室で殺されると迷惑part2。

 

 冒険者ギルドの意志決定は、十三人の幹部によって決められる。

 今回、密室とやらで殺されたのは、この幹部の一人。シュナイダーという男。


 シュナイダーはあろうことか冒険者ギルド本部内で殺されたという。殺害方法は絞殺。その死体は本部内の禁書閲覧室内にあり、内側から鍵がしめられていた。閲覧室はその利用目的の性質上、外側からは鍵を開けることができないのだ。


 サラとアーク(ミィ)は、さっそくボブとともに、犯行現場へと足を運んだ。

 サラは大いに楽しんでいる様子で、


「ふむ、ふむ。閲覧室の扉は、このひとつ。窓はなく、ほかに室外に出る方法はない。そして唯一の扉には、内側から鍵がかかっていた。これぞ、おあつらえむきの密室……ところで、どうして『唯一の扉』が破壊されているの?」


 ボブが説明した。


「シュナイダーさんがいつまでも閲覧室から出ず、廊下からの声がけにも反応しなかったため、異変を察知した者によって、施錠された扉を破壊。そして室内で殺されていたシュナイダーさんが発見されたのです」


「はん…それはそうだね。外側から開錠できない扉なんだから、壊して中に入るしかないよねー」


 閲覧室に入るなりアークは全域に《識別眼》を使った。

 空間を転移する魔術は、いくつかある。ただそのどれもが、使われれば魔術痕跡を残すはずだ。ところが魔術痕跡はない。


 ただし空間転移のスキル系では、魔術痕跡は残らない。

 それに何も空間転移で密室から出ずとも、たとえば浮遊魔術などで、外側から扉に鍵をしめればよい話。


 そこで壊された扉を確認すると、なかなか気になる呪文付与を見つけた。これは高等な『プロテクト』魔術だ。

 すなわちこの閲覧室は、保護されていた。外部からの魔術・スキル干渉から。

 よって空間転移で出入りすることも、浮遊魔術で外から鍵をしめることもできなかった。それはプロテクト魔術自体が破壊されず、いまも機能していることから間違いない。


(まさか。本当に、古典的な密室だとうのか……サラが歓びそうだな)


 そのサラはいきなり声を上げた。


「謎はまるっと解けた!」


「にゃぁ(なぬ)?」


「本当ですか?」とボブ。


「ふむ。これは、とてつもなく複雑なトリックが使われているね。まずそこにワイヤを引っかけて、こっちからぐるーーーーと回し、この鍵のかかっていた扉の下の隙間を通って、廊下を走らせ、別の扉が開いた瞬間、ワイヤが切れることによって、ピタゴラス×ッチ的な感じで、自動で内部の鍵が閉まるのだよ」


 アークは呆れ果てたが、なぜかボブは驚嘆の溜息をついた。


「なんと、そのような複雑なトリックが! さすが、〈名前はまだない〉のリーダーですな!」


「えへへ、まぁね」


「あ。ですがサラさん。『施錠された扉の下をワイヤが通った』ということですが、この扉には上下左右、ワイヤが通る隙間はありませんが?」


「…………………あのね。一発目で謎が解けたら、苦労しないの。分かる? ミステリーって、そういうものだよ? 出し惜しみするものなのー!」


 アークは溜息をついた。


(これはダメだ)

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