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59,課金しようpart7。

 

 それから、サラは馬車馬のように働いた。

 王都民を一人でも多く〈課金ポケット〉に沼らせ、廃課金者にするために。


 とにかく、まずサラが思いついたのは、ただ武器やキャラ(ホムンクルス)を引くだけでなく、その用途も作りだすことだ。

 つまり〈課金ポケット〉用のダンジョンを造り、エンドコンテンツとした。このダンジョンは月一で更新され、すべてクリアできると、報酬としてガチャ石がもらえる。

 ここでポイントは、エンドコンテンツに挑戦するのは、必ずしもユーザーでなくてよい、ガチャで引いたキャラ(ホムンクルス)でよいということだ。


 考えてみれば、冒険者でもない一般人が星5武器を引いても、このままでは意味がない。そんな一般市民が真に欲しいのは、ライラエルなどの美男美女のホムンクルス。

 そしてそのホムンクルスたちの活躍の場としてのエンドコンテンツ・ダンジョン。しかもこれで武器の価値も出てくる。つまりより強い武器を引くことで、自分のホムンクルスを強くできる。強くしたホムンクルスで、高難易度ダンジョンをクリアできる。

 そのためにさらにガチャを回す。


 またケイトの提案で、このガチャにも追加要素を加えた。これまで以上に、ガチャ演出を派手にしたのである。すなわちガチャを回すだけで、ユーザーの脳汁をドバドバ出させる。ガチャを引くだけで幸せ、至高の歓び、さぁもっともっと課金しよう!


 いつになく頑張るサラをなまあたたかく見守りながら、アークは素朴に思った。


(しかし、悪の幹部みたいなことをしているような)


 同じようなことを思ったのは、ボブもだった。生活消費局のボブである。サラのもとにやってくるなり、口角泡を飛ばしながら怒鳴る。


「誰が、誰が、誰が誰が運営側になって、廃課金者を大量に作ってくれ、と依頼しましたかかか! おかげで王都民たちは借金づけばかりですぞ!!」


 サラは冷ややかにボブを見返して、


「あのね、ボブさん。あなたのお怒りはごもっとも。当然至極の天井知らず」


「あなた、真面目に答えてください」


「真面目に答えているよ。こっちだってね、まさか黒幕が五大悪の一体とは思わないでしょ。そんじょそこらの尖兵の悪魔とは訳が違うんだから。地獄の階層を所有している悪魔に脅されたら、言うことを聞くのが人間というもの」


 サラの言いたいことはもっともといえば、もっともだが。アークも五大悪の一体とやりあいたいとは思わない。あれは次元が違うし、同時に殲滅魔術を1000は発動できるような化け物。


 ただボブは悪魔のくだりは信じなかったらしい。


「このまま放置しているとは思わないことですな! 消費生活局にも兵はあるんだ! これは、われわれと戦争するということですぞ!」


 サラはあくびを噛み殺してから、律儀に答えた。


「五大悪にはビビっても、いまさら人間の兵にはビビらないよ。〈名前はまだない〉と戦争するなら、それなりの覚悟をもつことだね。ほら、ミィくんも、何か言ってやって」


「にゃあ(アホらしい)」


「いまのミィくんの猫語を翻訳すると、『かかってこんかい蛆虫どもが』と言っている……ミィくん。ちょっと口が悪いぞ」


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