56,課金しようpart4。
〈課金ポケット〉に追跡スキルを付与。それで、この物体の元の所有者を辿る。まずひとつ前の所有者は、生活消費局のボブ。
ボブから渡されたアイテムなので、当然。さらにその前の所有者は、ボブが〈課金ポケット〉を没収した相手らしい。つまりただの課金者。
そうやって辿っていくと、ついにそれらしい人物に行き当たる。
ゴイという名の男だが、これは偽名。王都の再開発準備エリア(つまりいま居住者はいないはず)の建物を拠点にしている。
これぞ、〈課金ポケット〉の運営元とみて間違いない。
「にゃいのにゃあ(しかしこのゴイという男。《識別眼》によると、ただの職業シーフのようだ。手先は器用だが小物にすぎない。〈課金ポケット〉のような代物を作ったり、星5キャラのホムンクルスを創造する能力はないはずだ)」
「ふむふむ。突、撃!!」
〈課金ポケット〉運営拠点に突入。10人ほどのシーフがいたが、サラの剣術スキルlevel5《風斬乱舞》で
一掃。9人は縛り上げて地下室に放り込み、ゴイだけは椅子に座らせた。負傷した傷口にタオルを押し付けて止血させてから、サラが言う。
「こら、君たちが〈課金ポケット〉の運営元だね? ガチャの素晴らしさを世に広めるとは、悪い奴──あれ。これって悪い奴? いい人っぽくない?」
「にゃい(しっかりしろ、サラ。借金破産者を数多つくりだしているんだぞ。王都民に、ガチャは早かった)」
「いまミィくんに叱られた感じがするね。さて、ゴイ。全て話してもらおうか? ここにいる君たちは運営だろうけど、下っ端なんでしょ? どうやって〈課金ポケット〉を管理しているの?」
ゴイの説明では、ここに〈課金ポケット〉と接続している中枢アイテムがあり、それで限定のピックアップガチャの内容を決めたり、ガチャ確率操作などを行っているらしい。
「え? 確率操作? そんな悪辣運営は首を刎ねる!」
サラが本気だったので、ゴイが悲鳴を上げ、アークが慌てて止めた。
「にゃぁぁ(バカ、やめろ! 落ち着け!)」
深呼吸するサラ。
「ふぅ。危ない危ない。理性って、大事だよねー。で、ゴイ。〈課金ポケット〉を作りだしたのは、どこの誰なの? 黒幕は? 大人しく話さないと、分かっているよね?」
「ま、まってくれ、話すことはで、で、できききききき」
ゴイがいきなり燃え出した。サラがびっくりして、「ミィくん、水魔法で消火して!」と言うが、この火炎は無理だ。一目で、悪魔由来の炎と分かる。とすると〈課金ポケット〉を作りだしたのは、どこかの悪魔か。おそらく五大悪のどれか。ゴイは消す炭となった。
「にゃあ(さもありなん)」
気を取り直したサラは、〈課金ポケット〉の中枢アイテムを、ふうむと見つめていた。
壊すのだろう、とアークは思った。いまこそ、〈課金ポケット〉の課金地獄から、民を救うとき!
「ようし、今からわたしが、〈課金ポケット〉の運営だ!」
「……………にゃぃ!!(お前がなるんかぃぃぃ!)」




