5,技能レベル大事。
どんな要望も、探せば満たされる。
あるとき。アークが路上を歩いているとき──ちなみに野良猫と間違われて駆除されないよう、サラから首輪をつけられている──見知らぬ新米の冒険者二人の会話を小耳にはさんだ。
「西方山脈には、初心者救済ダンジョンがあるとか」
「『休載』?」
「違う、『救済』だ。上級者パーティに紛れ込んだ初級者が、自分だけレベル上げに勤しめる。このダンジョンのいいところは、死にかけると、自動で外に出してくれるらしい。ワープってやつで」
これは、実力不足のサラを鍛えさせるにもってこいだ、とアークは思った。
そこで宿の部屋でぐうたらしているサラのもとにいき、「にゃあ」と呼びかける。
救済ダンジョンに導くまでに数十分ほどかかったが、だいぶ「にゃあ」でも通ずるようになってきた。
今回、ケイトは留守番。というより居所不明。サラが言うには、よくあるらしい。
救済ダンジョンを前にして、
「分かるよ、ミィくん。わたしに実力を証明しろ、というんだね」
「にゃい(以前のクエストで実力不足が証明されたから、こで実力を高めろ、という話だぞ)」
「うんうん、分かる分かる」
あまり分かっていないサラは、ブロードソードを手にして、単身ダンジョン内に入った。
数分して、入口に空間転移してくる。ダンジョン内で死にかけたらしい。
それを五回ほど繰り返したところで、サラが絶望した様子でがっくりした。
「ミィくん! わたしは、どうしたらいいのでしょうか?! はじめの中ボスのミノタウロスに、まったく勝てないんだけど!!」
よくよく考えると、アークは剣術には覚えがない。魔術師として己を高めるため拳闘士として鍛えていたら、知らない間にそっちのスキルも会得していただけで。
「にゃぁ(ちょっとそれを貸してみろ)」
「え、これ?」
サラからブロードソードを借りたミィは、まず黒魔法level5《封印》で、己の魔法と拳闘スキルを封じた。
こうして剣一本の状態でダンジョンを進む。ダンジョン生成型モンスター(つまり魔物の模造品)のスケルトンたちを、斬り捨てていく。
しばらく同じところを巡回したところ、剣術スキルlevel1《斬撃飛ばし》に覚醒する。
剣術の弱点である射程短いを補うスキルだ。これを伸ばすことにして、さらに同じところを巡回。
剣術スキルlevel3《斬撃飛ばし:昏》を会得。飛ばした斬撃を当てた敵に、五秒ほど『盲目』状態にするデバフ付き。
もういいだろうと進み、はじめの関門らしいミノタウロスと戦う。
ミノタウロスの動きは、ダンジョン生成だけあって、15パターンしかなかった。これはレベルが低くとも、『覚え』でいける。
ミノタウロの大技をまって右回避。隙を見せたところを、《斬撃飛ばし:昏》クリティカルで、盲目状態付与。この五秒で、畳みかけて、撃破成功。
ここでいったんダンジョンの外に戻ると、剣術技能のレベル(つまりジョブ全体のレベル)が、5になっている。
「にゃぁ(サラ。とりあえず、剣術のはじめのコツみたいなのは掴んだ。ひとまず【スキル伝授】で、《斬撃飛ばし:昏》を会得するところからはじめるぞ)」
「ミィくん。半時間で、わたしより剣術技能レベル上げてこないでくれる? さすがに心が折れるんだけど」
「?」




