48,同時進行クエストpart3。
ポーションもそろえたことだし、あとは出発するだけとなる。
ここで強い絆で結ばれたパーティならば、互いの武運を静かに祈りあうところだ。
が、〈名前はまだない〉は不仲ではないが、特段、強い絆的なものとも無縁なので、淡々と進むことになる。
「ところでサラ。この八方美人的な不義理な同時進行クエストだけど」とケイト。
「え、褒めてる?」
わざとなのか天然なのか、サラのこの空気の読まない発言に対して、アークは鳴き声を上げた。
「にゃあ(いや、ただの皮肉だろ)」
ケイトはうなずいてから、
「どこまでやるつもり? とくに、そっちは?」
「つまり?」
「王城を〈シグマ〉が落としたら、革命が成功してしまう」
サラは頭をかいた。
「えーと。それはミィくんが、どこまでやる気になるのか、にもよるけど」
全員の視線を向けられ、アークは『なぜ猫に転生したのにこんな決断を迫られるんだ』と疑問に思った。
「にゃあ(それなりに)」
その後、〈名前はまだない〉は二手にわかれ、サラとアークは〈シグマ〉主力と同流するため、指定ポイントへ向かう。そこからさらに地下通路を使って、王城の近くまで出るという。このときサラははじめて、〈シグマ〉を率いるリーダーと会うことになった。
まだ20代の、濃緑色の髪をした女性で、魔導シリーズの弓を装備している。見たところジョブはアーチャーなのだろう。彼女はサラとアークを見つけると笑顔で歩いてきて、クローバーと名乗った。
「サラさんですね。何度か〈シグマ〉の革命運動を手助けしてくれたようで。今回も頼りにしていますよ」
「はぁ。頼まれると断れないパーティというだけなんだけどね。ところでもしかして、王を討ったあとは、あなたがこの国を統治する考えなの?」
「革命の先のことは考えていませんよ」
アークとしては、それは無責任すぎる気もする。とはいえ『部外者』であるサラに、すべてを明かすわけもないのか。
サラも似たような結論に達したようで、余計なことは言わず、アークを抱き上げてつきつけるようにした。
「はい。こちらが、うちの自慢の猫。ミィくんです」
とたんクローバーがくしゃみを連発しだす
「す、すみません、その猫を遠くにやってください。わたしは、猫が近くにいると、くしゃみがとまらなくなるのです」
「あ、すみません」
アークを抱いたまま、そそくさとクローバーから離れるサラ。
「ミィくん。なんだか、嫌な雲行きだよね? そう思わない? 王城を落とせるかどうかはミィくんにかかっているのに、向こうのリーダーは猫と相性が悪いなんて。嫌なー、予感がー、する」
「にゃぁにゃあにゃあ(まぁ猫アレルギーは仕方ないだろ。体質だしな。というより、お前、いまのはアレだぞ)」
「ミィくんがいつものようににゃあにゃあ鳴いている。可愛い」
「にゃぁ(余計なフラグをたてたな)」




