40,治安維持part2。
サラとアークは、つらなった建物内を移動することにした。これによって隠密裏に、次々とならず者たちを片付けていくことが可能。
ならず者と一般市民の見分けかたとしては──まず序盤、サラは『自分を見かけて攻撃してきたら悪党でいいよね』という、それなりに筋の通った判断。
しかしアークは、この考えに致命的な欠陥を見つけ、なんとか猫語で指摘。つまりサラは武器を持っているのだから、仮に善良な市民が紛れていても、今度はサラを『ならず者』と誤解し、先手必勝で攻撃してくる可能性もゼロではない。
「ふむ。ミィくん、心配性だなぁ。だけど、その可能性もゼロではないというのなら」
サラは剣を鞘に納めて、両手を上げて移動。さすがにここまで無防備アピールしているところに攻撃してきたなら、それは『ならず者』でいいだろう。
サラの抜剣速度は、敵からの攻撃を待ってからでも十分すぎる。少なくとも、ここにいる雑魚どもではサラを止めることはできず、彼女が通った後には、半殺しの目にあったならず者たちが転がっていた。
ざっと8割ほど、この区画を回ったところで、サラは指摘した。
「ここ、悪人しかいない説」
「にゃいのにゃあ(ならず者たちの拠点になっているようだ。が、これが人里離れた地にある村とかならともかく、王都内の一区画というのは、これはどういうことだ。治安維持をつかさどる騎士団は何をしているのか)」
「……ミィくんさ。また猫のくせに難しいことを考えているようだけど──そんなに頭を難しく使っていると、あれだよ、ハゲるよ」
「にゃぁぁぁ(おれはまだ若い猫なんだから、ハゲてたまるか!)」
建物内を確認し終えたところで、外に出た。この通称ならず者区画、治安レベル最低のこの区画は『コの字型』に建物が並んでおり、アークたちが出たのは、いわば中庭のような開けた場所。
そこでは一般市民──の死体が転がっており、近くでは奪い取ったばかりの金目のものを数えている、大柄な男がいた。その男の近くには、大樹のような棍棒が置かれている。
一目見て、これは今までの雑魚ではないな、と分かる。おそらく頭領だろう。
その大男が、こちらに気付く。棍棒に手を伸ばしながら立ち上がった。
「てめぇか、さっきから殺気をばんばん飛ばしていやがったのは。オレ様の縄張りに入るとは、いい度胸だな。その身体、叩き潰して豚の餌にしてくれる」
「できたらねー」
サラは軽く跳んでから、剣術スキルlevel3《斬撃飛ばし:昏》を発動。飛ばした斬撃を当てた敵に、五秒ほど『盲目』状態にする技。
まともに食らった頭領は、「ぐぁぁ、これはどういうことだ!? 何も見えんぞ!!」などと、喚きだした。
そこをサラのトドメの致命の斬撃がぶちあたる。頭領に限っては、容赦なく息の根を止める。
アークはあくびした。
確かにこれまでの雑魚たちとは違うが──いまさらサラの敵ではないのだ。
サラは血を払ってから剣を納めた。
「さてと。ボランティアと食後の運動を同時に行い、一石二鳥の上機嫌さのまま帰宅するとしよっか」




