4,加入後に。
それから、アークは少女剣士──サラと行動を共にすることになった。
その経緯は。
リザードマン討伐のあと、アークが路上を歩いていると、サラがやってきて言うのだ。
「ミィくん。実はわたし、いまあるパーティのリーダーを務めているんだけどね。是非ともミィくんも、パーティの一員になってほしいんだよ。大丈夫。パーティには『マスコット』枠というものがあるんだよ。でもミィくんの力は、マスコット枠で留まるものではないけれど」
「にゃぁ(知らん。酒場の用心棒の仕事があるから、もう帰れ)」
「ありがとう、ミィくん!! わたしの気持ちが分かってくれたんだね!!」
と後ろから抱き上げられ、そのまま連れていかれてしまった。
よって厳密には、これは猫攫いなのだが、アークは『下手したら娘のような年齢だし』ということで、許した。
そうして、サラのいまのところ唯一のパーティ仲間、ケイトを紹介される。
ケイトは、装備や衣装などからはジョブの分からない、金色の髪がふわりとした、お嬢様のような見た目だった。幼馴染らしく、サラと同年齢。
「ネコ、可愛い」
と、ぼそりと言う。
アークはダメ元で、
「にゃぃ(誰が猫だ)」
と訂正すると、ケイトが不思議そうな顔で、サラを見た。
通訳を求められている、と思ったらしく、サラが答える。
「どうやら、嬉しがっているようだね」
「……なにを言っているか、分かるの?? 凄い…リーダー。はじめて凄いと思った、かも」
変なところで尊敬の眼差しを受けるサラ。
肝心なことは、まったくの誤った通訳だが。
サラの説明では、このパーティは、できたてほやほやだという。
ちなみにパーティ名は〈名前はまだない〉。
「パーティ登録のとき、まだパーティ名を決めてなくてね。後から決めるよ、という意味で、『名前はまだない』と答えたら──それで決まっちゃった。しかもパーティ名を変えるには、料金が発生するから、もういいや、ってなった」
「にゃぁ(さもありなん)」
ケイトが怪訝そうに言う。
「……この猫、人間の言葉、分かるの?」
そんな〈名前はまだない〉。パーティランクは最低のF。
ミィ加入後、はじめに向かったのは、ダンジョンから抜け出した暴れゴーレム一体の討伐。
「ゴーレムは土属性。土属性が弱いのは、、、水?」
とサラが腕組みして言うと、ケイトが訂正を入れる。
「違う風属性」
「にゃあ(風属性なら任せてくれ。四大元素+光闇の魔法は、おおかた扱える)」
「リーダー。いま猫さんは、なんて言ったの?」
「………自分で考えてみようか、ケイト」
砂漠地帯でゴーレムを見つけ、サラが計画もなく突撃する。
「覚悟しろ!!」
ゴーレムが両手を振り下ろすと、サラは紙一重で回避。が、風圧で飛ばされて、斜面を転げ落ちた。
サラに追い打ちをかけようとするゴーレムに、ミィは跳びかかり、拳闘スキルlevel3《岩砕き》に、魔術level1《風纏》で、拳に風属性を纏って、一撃必殺。
バラバラになったゴーレムの破片を剣で弾きながら、サラが戻ってきた。風圧で飛ばされただけなので、とくに負傷はしていない。
「さすが、ミィくん。わたしが見込んだだけはある!」
「にゃい(お前は、もう少し、己を鍛錬したほうがいいのではないか?)」




