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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第3章

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閑話 初めての敗北


 目を覚ますと、視界いっぱいに広がる木々の葉っぱと木漏れ日が飛び込んできた。

 一瞬、自分が何をしていたのか思い出せず、記憶を必死に辿るが……やっぱり何も思い出せない。


「あっ、ギルド長。目を覚ましましたか?」


 俺が目を覚ましたことに気が付き、駆け寄ってきたマイケルの顔を見て、ようやく記憶が徐々に戻ってきた。

 確か……ゴブリンキングや魔人を倒したジェイドとやらと試合をすることになって、それで俺は――。


「俺が勝ったんだよな?」

「え、えーっと……それは……」

「俺が勝ったんだよな!?」

「…………………」


 気まずそうに俯いたマイケル。

 返事をせずとも、この反応だけで俺がジェイドに負けたことを察してしまった。


 あんなおっさんに負けた自分に対する怒りがこみ上げ、悔しさで歯を砕きそうなほど食いしばる。

 生まれてからこの方、俺は意識を飛ばしたという経験が一切ない。


 冒険者時代も適当にやっているだけで魔物を狩ることができ、ダンジョンではトップクランのリーダーとして数々の偉業を成し遂げてきた。

 ちやほらされる生活が楽しく、酒を浴びるように吞みながらダンジョンに潜る生活を送っていたが、二十代前半の時にはそんな生活にも飽きがきた。


 そんなタイミングで、ライバルクランの副リーダーを務めていたマイケルに誘われ、ヨークウィッチのギルドで働くことに決めたのだ。

 誘い文句は確か、ギルドで働ければ強い魔物がどこにいるかを一番最初に知ることができる――だったか?


 結局、魔物とは戦うことはあったものの、大抵はギルド内に籠もって書類確認の日々。

 ギルド長なんてのは、魔物を討伐したり退けた功績のみで祭り上げられた肩書であり、二十代後半にしてギルドで働く日々にも既に飽きていた。


 そんな最中……現れたのが面白そうな人物であり、俺が今回戦いを挑んだジェイドだ。

 一回の騒ぎだけで俺並みの功績をあげたジェイドに興味を持ち、どれくらいの腕かを確かめようとして戦いを挑んだ結果がこのざま。


 ずっとギルドに籠もっていて腕が鈍っていたってのもあるが、やられた瞬間がどうしても思い出せない。

 逃げ回っていたのを追っていたと思うのだが、次の瞬間の記憶が仰向けで目を覚ました状態だからな。


「俺は……ジェイドって野郎に負けたんだな」

「で、ですが、条件が悪かったと思いますよ。傍目で見ていて、卑怯だと思ったくらいですから。それにギルド長が本気を出す前に……って、笑ってます?」


 そんな発言をしたマイケルを殺す気で睨みつける。

 発狂するほど悔しく、すぐにでもジェイドを見つけて襲い掛かりたい気持ちなのに――俺が笑っているだと?

 笑ってるわけねぇだろと言い返そうと思ったのだが、手で触れた俺の口元は確かに上がっていた。


「……いや、笑ってねぇ!」

「いや、目は怒っているんですけど口は笑ってますって」

「笑ってねぇって言ってるだろ!」


 訳が分からないが、怒りや悔しさの奥底に嬉しさが確かにある。

 強い敵とも戦えず、目的を見失っていた中で現れた好敵手。


 技術を積んできたであろう相手であり、今の俺では何度やっても勝てない相手。

 ただ、このまま負けっぱなしってのは俺の人生の汚点となるのは確実で、一生後悔する一件となるは目に見えている。


 マイケルには絶対に言わねぇけど……ジェイドを倒すためだけに密かに鍛錬を積むか。

 そう目標としてキッパリと定めた瞬間、奥底に感じていた喜の感情が溢れて、俺は久しぶりに心の底から笑みを浮かべたのだった。


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