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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第3章

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第77話 いつもの日常


 ゴブリンキング騒動のあった翌日。

 街はいつもの姿に戻っており、騒がしかった昨日が嘘のような街並み。


 結局、昨日は営業ができずに煙玉は売ることができなかったものの、俺は新品の革の防具をマイケルから貰えたし、久しぶりにスリリングな一日を過ごせた。

 頻繁にあんなことが起こると嫌だが、たまになら強い相手と戦うのはいいかもしれない。


 魔人と戦った時に体が若干鈍っているのも感じたし、次の休みにマイケルと話す際、危険な魔物のいる場所を教えてくれないか相談してみようか。

 トレバーとテイトの件もあるため、指導するなら少しは魔物との実践も増やしておきたいしな。

 そんなことを考えながら準備を整えた俺は、いつもよりも全然早い時間だが『シャ・ノワール』に向かうことにした。


 出発したのも早く、宿屋からも近いということもあり、昨日と同じくらいの時間に『シャ・ノワール』についてしまった。

 流石に早すぎたかと思ったが、店の中の明かりはついている。


「んおっ! なんだよジェイドか!」


 レスリーは店の中で何やら作業をしており、静かに入ってきた俺に酷く驚いた様子を見せた。

 こんな時間から何の作業をしているのか気になって覗き込むと、どうやら煙玉の最後の調整をしていたらしい。


「こんな朝早くから煙玉の調整をしていたのか? てっきりまだ寝ていると思ってた」

「昨日、貴重な意見をジェイドから聞けたからな! 煙玉が発煙するタイミングをもう少し早くできないかを調整してたんだ!」

「まさかとは思うが……寝てない訳じゃないよな?」

「キッチリ寝たっての! 年を取ってくると睡眠時間が短くなるんだよ! ジェイドの年齢じゃ、まだギリギリ分からねぇだろうがな!」


 とは言っているものの、目の下にはクマができているし徹夜で調整しているのは丸分かり。

 俺に心配かけまいと嘘を吐いたのだろうが、その嘘が逆に心配になる。


「とにかく煙玉より体を休めてくれ。レスリーが倒れたら『シャ・ノワール』は終わりだからな」

「んなこたねぇよ! ニアがしっかりと配達をこなしてくれるようになったし、ヴェラも積極的に仕事に関わってくれている。そして何よりジェイドがいるからな! いつ死んでもこの店は任せられる!」

「縁起でもないこというな。死ぬ前の台詞にしか聞こえないぞ」

「例えの話だ! 例えのな! あと四十年は生きるから安心しろ!」


 ドンッと厚い胸板を叩き、元気にそう宣言したレスリー。

 肉体もそうだが、精神的にもあと四十年は生きていそうだな。


「それなら安心した。俺にも手伝えることがあったら言ってくれ。開店までギリギリまでは付き合う」

「そりゃ助かるぜ! なら、ジェイドには使用感を確かめてほしい! 昨日と比べての変化を教えてくれ!」

「分かった。この煙玉を使ってしまっていいんだな」

「ああ! その代わり倉庫で頼むぞ!」


 昨日の時点で正直素晴らしい出来だったのだが、まだ追及したいというレスリーの思いに応え、二人で開店時間まで煙玉の開発を進めた。

 そして無事に八十個の煙玉に修正を行うことができ、なんとか開店時間までに間に合った。



 それから俺はいつものようにニアと二手に分かれて配達へと向かい、昼過ぎ頃に店へと戻ってきた。

 店の中に入ったら煙玉の売れ行きが一目で分かるため、少しだけ店の中に入るのに緊張する。


 まぁ午前中は冒険者の客は少ないし、本番は午後でもあるため気負わずに店の扉を開けて中へと入った。

 店内には三人の客。そして正面のヴェラ手製の棚には……まだ大量の煙玉が見える。


 ただ、それでも数が減っているのが分かり、午前中での売り上げとしては予想以上だと思う。

 ホッと胸を撫でおろし、裏の倉庫で作業をしているレスリーの下へと向かった。


「配達を終えて戻ってきた。煙玉の売り上げの方はどうだ?」

「ジェイド、お疲れさん! 今のところ十個も売れたぜ! 初日の午前中としてはかなりいい売り上げだぞ!」


 目に見えて減っているのが分かったし、初日の午前で十個は上出来。

 火炎瓶のお陰で、『シャ・ノワール』の品質の高さを信用してもらえているのかもしれない。


「十個はかなり順調だ。ここから冒険者たちが多くなってくるし、そこで更にどれだけ売れるかが肝になってくるが……喜んでいい数字だな」

「俺は煙玉なんて需要ないと思ったんだけどな! 俺の長い冒険者人生で、一回も使ったことがなかったしよ!」

「値段の問題もあったんだろ。昨日使ったが、相当優秀なアイテムだぞ。ヴェラは毒煙玉を作っているが、俺は臭い付きの煙玉を作ろうと考えている。鼻が利く魔物用に売れるはずだ」

「……確かに、獣系統の魔物は鼻で追ってくるもんな! こりゃ大ヒットするんじゃねぇか!?」


 レスリーは大喜びしているが、煙玉系統は基本的に逃げるためのアイテムになるからな。

 俺のように攻撃に活かせる冒険者がいれば、ガンガン使うだろうから大ヒット間違いなしだろうが……使い時が少ない商品は得てして大量には売れない。


「大ヒットは絶対にしないだろうな。そこそこ売るようのものだし、実際そこそこ売れてくれればいい」

「そうか? 俺は大ヒットすると思うけどな!」

「まぁ何はともあれ、まずは煙玉を売ることからだ。ウキウキで話しているがまだ十個しか売れていない訳で、このまま追加で一つも売れずに終わったら今の話は立ち消える」

「確かにそうだ! まずは煙玉を売るように接客頑張ろうぜ!」


 レスリーと軽く拳を合わせてから、ヴェラと合流して三人で接客を行った。

 あの後は一つも売れず……なんてことはなく、午後の冒険者が多くなってきた時間帯で更に売り上げが加速し、初日だけで合計五十個の煙玉を売ることができた。


 火炎瓶も良いペースで売れているし、オリジナルアイテムの効果か以前よりも客が増えて来た気もする。

 順調すぎる滑り出しに、俺達三人は終始口角が緩むのを抑えられなかった。


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