番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その67
楽しかった焼肉パーティーの翌日。
まだまだ楽しい余韻に浸っていたいが、今週の調達に動き出さなければいけない。
眠い目をこすりながら目を覚まし、朝のルーティンをこなしてから準備を整えた。
そして、ハンモックで寝ていたエンペラを鞄の中に移動させ、ヨークウィッチを出発する。
今回の目的地は、もちろんメルデルクの街。
お土産のタン元も持ってきたし、フーディーの話が本当なのであれば、美食ギルドから話を聞くことができるはず。
一人楽しみにしながら、軽い足取りでメルデルクへと向かった。
ヨークウィッチから歩くこと約三時間。
荒野の真ん中に見えるあの街がメルデルクだ。
大きさは中程度で、人の出入りはヨークウィッチと比べると少ない。
あの街に美食ギルドがあるのか不安になってくるが、信じるしかないし、仮になかったとしても時間的にはリカバリーできる。
あまり深く考えすぎないようにし、俺はメルデルクの街へと入った。
入門検査も軽いものであり、あっさりと街の中に入ることができた俺は、道行く人に美食ギルドについて尋ねたのだが、反応がすこぶる悪い。
反応があったことから、この街に存在することは間違いないのだが、相当嫌われているようだな。
「全員が嫌な顔をしていたな。美食ギルドってところはよくないんじゃないか?」
「いつの間に起きていたんだ。……何にせよ、一度会ってみないと話は始まらない」
鞄から顔だけ出しているエンペラにそう返し、俺は引き続き美食ギルドについての聞き込みを行った。
反応が悪いこと。それから、美食ギルドについての情報がほとんどないことが分かり、秘匿性の高い組織であることは間違いない。
直接探すことはここで諦め、フーディーに教わったように『ウォルテール』という店から当たることにした。
門番的な役割を果たしているはずだし、『ウォルテール』の店員を唸らせる食材を持ってこられたら、美食ギルドに紹介してもらえるのだと思う。
「ここが目的地か? 質問を変えたらあっさり着いたな」
「ここは世間一般的にも知られている店だからな。多分だけど、この店が美食ギルドと裏でズブズブなんだと思う」
「人間って本当に面倒くさいのが好きだな」
確かにまどろっこしいとは思うが、対策をしないとそれ以上に面倒くさいことになるから仕方ないんだろう。
とりあえず……店主を探すか。
「いらっしゃいませ! 『ウォルテール』へようこそ!」
「すまないが、店主はいるか? 店主に用があって来たんだ」
「店長ですか? ちょっと待っていてくださいね!」
一際元気な女性の店員は、笑顔でそう言うとバックヤードへと消えていった。
そして、一分ほど待っていると、店の奥からだらしのない男性を連れて戻ってきた。
「お待たせいたしました! こちらが『ウォルテール』の店長さんになります!」
「ん? 見たことない方だなぁ。本当に私に用事があって来たのかい?」
店長と呼ばれた男性は、顔が青白く非常に痩せている。
ヨレヨレのシャツにボロボロのズボン。
身だしなみも悪く、とても人気店の店長には見えない。
……が、店長に見えない男が店長だからこそ、美食ギルドと繋がっている線が濃厚になった。
「ああ。とある人物から紹介してもらってここを訪ねてきた。美食ギルドの窓口になっているんだろ?」
俺のそんな問いに対し、一瞬だけ眉をピクリと動かした店長。
平静を装っているが、今の反応だけでフーディーの情報に間違いがないことを確信した。
「美食ギルド? 知っているけど知らないよ。一体誰がそんなデマを流したんだろうねぇ」
「隠さなくても大丈夫だ。これを見てくれ。挨拶代わりになるはずだ」
俺は店長の前に、エルダーワイバーンのタン元を置く。
最初は受け取り拒否してきそうな感じだったが、しばらく考えてから袋を手に取った。
「……うーん。僕にはよく分からないけど、一応見させてもらうよ」
「その反応で、よく分からないは無理がありすぎる」
俺のツッコミに対しては反応せず、袋の中身の確認を始めた店長。
そして、一目で代物であることを見抜いたのか、無言のまま手招きしてバックヤードへと案内してくれた。
「これはエルダーワイバーンのタンだね! ……ということは、本当に紹介でやってきたんだね。客前で言っちゃ駄目だよ。紹介者も言わないし、誰に紹介されてきたんだい?」
「それは言えない。情報の公開はタブーなんだろ?」
「もちろんタブーだけど、実力者を紹介したなら別問題だよ。で、誰に紹介されたんだい?」
「諸々が確定するまでは言えない。迷惑は掛けたくないからな」
「第一印象そうだとは思ったけど、随分と頑固だねぇ。まぁいいや。エルダーワイバーンのタンは本物みたいだからね」
俺が渡したタン元を確認しては、ニヤけている店長。
何の説明もせず、すぐにエルダーワイバーンのタン元だと分かったことからも、目利きのできる人間であることだけは分かった。
「それで、美食ギルドには紹介してくれるのか?」
「もちろん。優秀なハンターは常に欲しているからね。……ああ、自己紹介がまだだった。僕は『ウォルテール』の店長を務めながら、美食ギルドの監査員をしているスキャンダーだ」
「ジェイドという。よろしく頼む」
俺はスキャンダーと挨拶を交わしてから、握手を行う。
見た目から分かってはいたが、手のひらが綺麗なことからも、スキャンダーが全く戦えない人物であることが分かった。
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