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転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
第三章 『魔王軍』始動
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おいでよ、魔法の世界へ Ⅳ



 突然無人島に転移魔法で連れて来られて、さらには魔法を見せられて。

 あまりの情報量に固まっていた3人だけれど、そんな3人を前にレイネがさも当たり前の流れとでも言わんばかりに「とりあえず、まずは水着に着替えましょうか」と言い出してテントを取り出して私たちを押し込み、着替える事に。


 他人の目がないんだからその場で着替えてもいいんだけど、オープン過ぎる場所で着替えるって落ち着かないしね。

 前世ならともかく、この現代日本で育った私の感覚としてもテントがあって良かったよ。


 ともあれ、先程のショッピングで買ったばかりの水着もある。

 呆然としていた3人を他所にさっさと着替えてテントを出たら、パラソルやらビーチチェアやらまで用意されていた。


 ……いや、いつの間にそんなの用意してたの……?

 おまけにサイドテーブルに半透明のトロピカルな飲み物まで用意されてるし。


「……やば!? ウチら南国リゾートに来ちゃった感じ!?」


「ふぁっ!? しょ、衝撃が大きすぎて今更気が付いた……っ!」


「……そういえばそうね……。転移魔法、だっけ? リンネのアレで来たから実感湧かなかったけど……」


 トモとユイカ、それにこのみんが遅れてテントから出て来ると、口々に目の前の光景を見て声をあげた。


「あー……、そっか。飛行機とか船とかだったら向かってる感あって徐々にエンジンかかるみたいな、そういう感じがあるもんね。そういうのまるっと無視する形になっちゃったからね。ごめんごめん」


「ううん、責めてる訳じゃないわ。むしろわたしは助かるかも。飛行機とか船とか、乗り物全般酔いやすいのよね、わたし」


「このみん、乗り物系ダメなんだ」


「えぇ、そうね。あまり得意じゃないわ。特に船は無理」


「船かぁ。船に乗って海に出るなんて経験した事ないなぁ。川の屋形船とかなら乗ったことあるけど」


「うちの家族とトモの家族で乗ったよね、結構前だけど」


「川なら揺れも少ないでしょうけれど、海は波もあったりするから結構大変なのよ……。……昔クルーズ船に乗せられた時は、魚に餌を与え続けたわ……」


「おぅふ……」


 なんだかんだでテンションも上がってきたのか、3人もいつもの調子を取り戻してきたらしい。

 そんな3人と一緒に砂浜を進んでいき、パラソルの下に並べられたビーチチェアにそれぞれ腰掛けてから、トロピカルドリンクを飲んではまた大はしゃぎ。


 いや、話題的に悲惨な話ではあるけど。

 ともあれ、一通りテンションも上がって我に返ってくれたらしいので、改めて口を開いた。


「どうする? 先に海に入っちゃう? それとも先に魔力とか魔法の説明した方がいい?」


「え、どうしよ」


「アタシは魔法が気になるなー。海も入りたいけど!」


「わたしもユイカに同意ね。少し落ち着いてきたけど、海に入っても魔法が気になっちゃうもの」


「じゃあ魔力と魔法で!」


 ユイカとこのみんは先に続きを聞きたいらしく、トモとしても先に説明を聞くのに異存はないらしい。


「そっか。じゃあ海で遊ぶ為にも、さっさと覚えようか」


「え」


「さっさと覚えれるの!?」


「……そんなに簡単なものだったら、もっと魔力とか魔法が一般的なものになっているはずよね?」


「うん、このみん正解。魔法を使うにはまず、魔力を感じ取れるようになる必要があるんだ。もっとも、本来なら自分自身で時間をかけて行うものなんだけど、それをやろうとすると膨大な時間がかかってしまうんだよね」


「膨大な時間って、具体的にはどれぐらい?」


「修行法は私が教えるとしても、早ければ3年程度かな。でも、それは半日程度を修行に費やした場合の話。普通に日常生活を送りながらやるってなったら、多分8年から10年ぐらいかかるかも」


「そ、そんなにかかるの……?」


「正しい修行法なら、ね。間違った事をしていたら何年やっても無意味だよ」


 特に、この世界の人間は魔力があまりにも小さすぎるからね。

 皆無という訳でもないみたいだけれど、私やレイネじゃ魔力を感じ取り、操れる程の力を持っていない限りは感知できない程に。

 もしも魔力を感じ取り、操っているような存在がいれば、その僅かな動きで感知に引っかかるんだけどね。


 実際、私の城で今ロココちゃんがパタパタと動き回っているのは私も感じ取れているし。

 ロココちゃん、何してんだろ……。


「まあともかく、そんなに時間をかけてもしょうがないからね。そこで、3人にはちょっとした裏技を使おうと思ってるんだ」


「裏技?」


「うん。私が今から3人の魔力に干渉して、3人の魔力を励起させて活性化させるよ」


「れーき?」


「励起……。外からリンネが魔力を加えて、わたしたちの魔力を活動状態にさせる、という意味かしら?」


「おぉ、すごいね、このみん。正解だよ」


「すご、このみん。よく知ってたね」


「量子力学について少し学んだ事があったのよ。本来、原子や分子の定常状態に対して、外からエネルギーを与えて、より高いエネルギーを持つ定常状態に持っていく事を指した言葉だったはずよ。リンネの文脈から、魔力でも似たような事を行うのだろうと思って」


 このみんすごいな。

 私の場合、励起って某アニメから学んだ言葉で、力を加えて無理やり起こす、って意味としか思ってないんだけど。

 トモとユイカみたいに「ほへぇー……」って顔しないように隠しておく。


「魔力を一度感じ取れるようになれば、それがどういう感覚かは自然と理解できると思うんだ。何もしなければ少ししたら感覚も消えてしまうけど、活性化させた状態を自分でできるようになれば、第1段階は突破って言えると思う」


「お、おぉ、がんばる!」


「うん、がんばって。――じゃあ、早速」


 ビーチチェアから立ち上がり、まずはトモの前へ。

 トモの胸の間にそっと手のひらを押し当てて、魔力をゆっくりと流し込んでいく。

 私クラスの魔力量だと普通に魔力を込めただけでも負担になってしまうから、気分はビーカーからスポイトを使ってごく少量の水を移すような、そんな感覚だ。


「……ぁ、ん……っ」


「ぶふっ!? おいこらトモ、エロい声出すなー!」


「ち、が……っ、そんなん、じゃ……ぁ……っ」


「……声だけ聞いてると確かにそう聞こえるわね」


 ユイカとこのみんが言う通り、確かにそう聞こえなくもないけれど……。

 うん、そこまで言うなら、自分達の番が来た時に耐えてもらおうじゃないか。


 そんな事を考えつつ、トモの身体――正確には魂に直接魔力を流し込み、無理やり活性化させていく。


「――っ!?」


 トモの魔力が活性化して、同時にふわりとトモを中心に弱い衝撃が風になって周囲に拡散した。魔力の波動が表に漏れたらしい。

 近くにいる私や他のみんなが感じ取れた程度の弱い魔力の衝撃だけれど、突然そんなものがトモから放たれた事にユイカとこのみんは驚き、目を瞠ってこっちを見ている。


 一方で、トモも自分の中で魔力が活性化している感覚に驚いているのか、目を大きく見開いたまま自分の胸元に顔を向けていた。


「トモ、そのまま目を閉じて、その魔力の感覚だけに集中して」


「……ん、わかった……」


「自分の中で動いているその感覚を、常に動かし続けるように強く意識を集中させていってね」


 こくりと頷いたトモからそっと離れて様子を見る。

 うん、うまく感じ取れてはいるらしい。

 ちらりとレイネに目を向ければ、レイネも魔力を感じ取れたのか頷いてくれた。


「うん、その調子。じゃあ次はユイカね」


「はーい」


 続いてユイカの目の前に行って、その胸に手を当てる。

 胸と言っても、本当に胸の中心だけど。


「――いくよ」


「うん」


 ゆっくりと魔力を注ぎ込み始めて数秒ほど。

 身動ぎせずに目を閉じていたユイカが、プルプルと震え始めた。


「――……んん、ぁ……、ふぁ……っ」


「…………エロいわ」


 このみんがぽつりと呟いたけれど、ユイカは否定する余裕もないらしい。


 トモの魔力はどちらかと言えば〝静〟だったけれど、ユイカの魔力は〝動〟だね。

 そのせいで魔力が活性化した時の動き方が明らかに異なっているようで、ユイカの方が刺激が強いらしい。


 こうした魔力の性質の傾向は得意とする魔法に現れたりする。


 トモの場合は水や氷、あとは地属性。主に干渉するような停止と干渉。

 ユイカの場合は風、火属性。加速なんかの方向に伸びやすいと思う。


 まあ、これはあくまでも『覚えやすい』というだけの話。

 鍛錬すればどっちも使えるようになるしね。


 しばらくユイカの声を無視して活性化が定着し始めたところで、ユイカの魔力が活性化して、ユイカの魔力が風となって一瞬だけ放出される。


「……うん。さっきトモに言った通り、意識を集中させて、魔力を動かし続けてみて」


「はぁ、はぁ……っ。ん……っ」


 返ってきたのは荒い吐息と、頷きと一緒に漏れた吐息。

 なんだろう、さっきからちょっとそっち方向の反応ばかり返ってくるんだけど。

 女しかいないこの場所で誰得なんだろう。


「じゃあこのみん、やろっか」


「……えぇ、お願いするわ」


「……なんでそんな意を決した感じなの?」


「……だって、なんか二人が、その、エロかったんだもの」


 ……いや、さっきからそういう方向に結びつけてるのはこのみんな訳だし。

 最初にトモの時に反応したのはユイカだけど、なんかユイカの反応を見てた時からこのみん、やたらとドリンク飲むスピード上がってたんだよね。


 なくなりそうになったところでレイネが新しいものと交換してたけど。


「……このみんって、むっつりなの?」


「んなぁっ!? ち、違うわよ!?」


「いや、だって、なんか顔赤かったし」


「暑いからよ! ほら、早くやって!」


「あ、ハイ」


 必死に否定しているあたり、ちょっと無理があるというか。

 さすがにそれを指摘したら拗ねちゃうかもしれないし、本人も否定したいらしいからそれ以上は追求しないまま、私はこのみんの胸に手を当て……ようとして、動きを止めた。


 ……オフショルダービキニのせいで素肌に触れられないんだよね。

 そうなると魔力を無駄に流しちゃいそうだし……仕方ない。


「このみん、ちょっとごめんね」


「え、なに――ひぁっ!?」


 オフショルダービキニの下から手を滑り込ませて、水着の中に手を潜り込ませて素肌に触れる。

 うん、ちょっと慎ましやかながらも南半球部分が見えてしまっているけれど、男の目もないしこのままやろう。


「な、な……っ!? り、りんね……!?」


「素肌に触れないと、魔力を流し込み過ぎちゃうかもしれないから。我慢して。はい、流すよー」


「ちょ、ちょっと……! ――ひぅ……!? ふ、あぁ……ん……っ!」


 おー、このみんの魔力はトモと似た性質かな。

 魔力量は少し少なめだけど、大規模な魔法とかを使わない分には不足ない。

 うん、悪くはない。


 ただ、ちょっと活性化まで時間がかかってる。

 このみんの魔力はどうも活性化するまで時間が必要みたいだ。

 だいぶ魔力量自体も少ないみたいだし、少し根気強く、それに流し込む魔力量も増やした方が良さそうだ。


 そんな訳で、流し込む魔力を少し増やす。


「んあぁ……っ! ちょ……、んぁ……、りんねぇ……っ!?」


「はいはい、活性化するまで我慢して」


「ん、そ、んな……んんっ」


 ……むず痒いようなぴりっと痺れるような、そんな感覚だっていうのは分かるんだけどさ。

 そうやって目を潤ませながら力なく言われると、うん、確かになんかエロいなって思えてくるよね。


 いや、健全なんだけどね??

 別にそういう魔法とか使ってないんだけどね??






健全ですが何か??(真顔)

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