【配信】前夜祭&重大発表Ⅱ
「――本日の24時、明日0時、そのタイミングで予約受付をホームページ上で受け付けを開始します。ちなみに、予約はVtuber活動をしている個人、または団体であることが条件となりますので、個人なら活動証明、企業なら団体証明の添付を行っていただきます」
『聖地巡礼対策わかる』
『まあそうなるよなw』
『新技術体験したいだけの一般人わい、涙目』
『会社命令で行かなきゃいけなくなってたけど、おかげで行かなくて済みそう』
『産業スパイかな?w』
『やったー!』
『活動証明します!』
『活動証明ってなぁに?』
レイネの淡々とした説明を聞いて、コメント欄が盛り上がる。
今回の予約受付は、あくまでもVtuber活動を行っている人達を優先する。
順次一般予約というか、そういった証明がなくても使えるようにすることも検討してはいるけれど、それは最低でも1年から2年後の話かな。
「活動証明は、仮登録情報に対してランダムに生成されるキーワードがメールにて送られてきますので、そのキーワードを活動しているVtuberの姿で喋る動画を撮影していただき、そちらを提出してください」
『あーね』
『確かにそれができれば証明になるか』
『かしこい』
『ランダム生成されたキーワードどんなのがあるんだろ』
『早口言葉だったら笑うのにw』
『言えてなくて不合格、遅すぎて不合格とかあったら何人か絶対通らんぞw』
「また、今回は試験的に芸能事務所の参戦についても受け付けます。ドラマ、映画、アニメなどを撮ってみたいという方は、予約ページではなく、問い合わせ用のチャットbotを利用して相談してください。その後、改めて担当よりご連絡させていただきます」
『え』
『は??』
『ちょww』
『スケールデカw』
『いやいやいや、ちょっと待った』
『ドラマ!?』
『ドラマは現実的でないにしろ、映画は割と有り得そう』
『ちょっと待ってw 滝紅葉が反応しとるwwww』
『まてまてまて、大御所ww』
『芸能事務所の社長とかもめっちゃ多いww』
……うん、これはお母さんに泣きつかれたからなんだよね。
ほら、お母さんって「思い立ったら即行動」みたいなトコとかあるから、新技術でVtuberデビューするとか言い出してたし。
そんな動きが大きくなっていて、特別ドラマとか映画とか事務所でお金出すから撮ろうぜ、みたいなノリで話が進んだらしいんだよね。
お母さんが所属してる事務所の社長も、やっぱりそういう事務所の代表者だけあってアグレッシブというか、行動力が凄いよ。
で、お母さんの事務所が動くってなると、やっぱり他の芸能事務所とかもやりたがる可能性があるからね。
だからこういう形で進めていくつもり。
ただまあ、もちろん制約は設けている。
「なお、テレビ局やマスコミの取材、利用などについてはお断りさせていただきます。あくまでも地上波ではなくインターネット上のサービスでの放送などであることが前提となりますので、規約などはきっちりと守ってくださいますようお願いいたします」
『へ?』
『テレビ局ダメなんだww』
『人気アナウンサーが絶望してるぞ、SNSww』
『草』
『業界各所が一喜一憂してて笑うわww』
『やべえ、SNSと一緒に見てるのくっそ面白い』
『なんでテレビダメなん?』
「テレビ局を禁止する理由については――」
「――まあ待て、レイネよ。それについては妾から説明しよう」
さすがにレイネにそれをやらせるとなると、変に叩かれそう。
そういう事をやってこその代表、みたいな部分もあるし、そもそも私が決めたことだから、私の口から説明する。
「ぶっちゃけ、テレビとマスコミ嫌いなんじゃよ、妾」
『え』
『は!?』
『ちょwwww』
『そんなこと80万人の前で堂々と宣言するぅ!?w』
『そんな理不尽が許されるんですか!』
『まてまてまてww』
『下手したら炎上するww』
『陛下は炎上なんてどうとも思わんだろw』
『差別だ!』
『ほらあ、なんか湧いたーw』
「妾は別に公共事業をやっておる訳ではないんじゃぞ? 万人に対してなんでもかんでも提供するとか、そんなつもりは毛頭ないわ、たわけ。それでもそっちが騒ぎ立てるというなら、ウチの事業は中止じゃな」
『これはつよいw』
『ほらぁ! 陛下はこうなるんだから! 謝って!』
『怖いもの知らずにも程があるんよww』
『この陛下、利益とかそういうのじゃないとこで動く節があるんだから!w』
「そういう訳じゃから、文句があるなら局の声明で発表でもすればいいんじゃないかの? もっとも、その局のドラマだのなんだのに、今後ウチで撮影とかやりたがっておる芸能事務所やらが協力してくれなくなっても妾は責任なんぞ取らぬが」
『煽りよるww』
『それはそうww』
『SNSやっばwwww』
『テレビ局のモノ消しが著しいですぅww』
『くっっっそwwww』
『紅葉様のモノロジー、くっそ真顔っぽくて草』
『そういうことした局が関わる作品は絶対に出ませんは強カードなんよw』
「そもそも一般人にも予約やらは禁止しておるしのう。ある意味平等であろうよ。そんなトコに「ワタクシ、天下の地上波テレビ局様ですけれど?」みたいな顔とか、「知る権利が!」とか騒がれてみよ。鬱陶しくて消し飛ばしたくもなるであろ?」
『草』
『あー、テレビの撮影スタッフとかも偉そうって話だしなw』
『マスゴミの伝家の宝刀、知る権利があるんです主張w』
『それはそうw』
『陛下が消し飛ばしたくもなるって冗談に聞こえなくなってきてる自分がいるw』
『実際、某議員げふんげふん』
『おいばかやめろww』
私の我儘でそうなっている、というイメージをつけるにはこんなものでいいかな。
実際には、魔法技術をテレビしか観ないような層――いわゆるお年寄り世代や、インターネットなんかを毛嫌いしているような人たちが観たりしたら、妙な混乱を招いてしまったり、変に騒ぎ立てたりする層が多くなりそうだから、というのが本音だったりもする。
まあ、私がマスコミとかテレビが嫌いなのは嘘ではないけどね。
お母さんのことを叩くような番組とかマスコミとか、昔から何度も見てきたから。
そのくせ、ドラマの主演とか大事な役で使いたがったりもしてたりで、お母さんが抱きついて愚痴ってきたこととかあったし。
「そういうわけで、妾の一存でノーじゃな」
「御安心ください、陛下。そちらには我が――」
「――それ以上は言わんで良いからな? フリじゃないぞ?」
『なんだなんだw』
『裏で何かが動いている……!?』
『こーれ何かやってますww』
『メイドさんこわww』
『陛下真顔で笑うwwww』
『めっちゃ真顔じゃんw』
そんなこんなで、我が『魔王軍』の新サービススタートのお知らせはさくっと終わらせて、待っててくれた一期生のイベント振り返りトークが始まった。




