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転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
最終章 集大成
195/201

【配信】イベント最終日前の雑談




 ユズ姉さんの提案というか依頼については、会社とは切り離して行う事になった。

 会社対会社という関係で行うのではなく、あくまでも実験の支援を個人的に行ってもらう程度という形に落ち着いたのは、ひとえに会社という枠を考えると関係性が難しくなってしまうからだ。


 もっとも、何より最大の要因となったのは、私とレイネにとって、これは既存の魔法分野を超えた類の代物だから、というのがあった。


 もともと幻影魔法の類であれば、幻影としての第三者を登場させることはできるし、同じものを見ているような魔法自体はかけられるけれど、これが第三者も全く別のところから参加するような形となると難しい。


 レイネとしては色々と試してみたい方法も案もあるみたいだけれど、それらが形となったところで、VR機器のように継続的に利用できるような代物に落とし込めるかという問題もある。

 特に魔石の供給量的な意味合いで。


 なので一旦は実験を続けながらも、ジェムプロには既存技術とその発展系とも言えるVR機器を利用したサービスを進めてもらいたいと伝えて終話した。


 という訳で、2日目は終了。

 特大イベントの最終日前夜というところで、私はクロクロのライブが終了した夜の時間に配信を行うことにした。


「――よく来たの、臣下ども。妾こそがVtuber最大手事務所、クロクロとジェムプロを協力させて特大イベントを実施し、新たな時代を築き上げた偉大なる魔王、ヴェルチェラ・メリシスである」


『草』

『それはそうだがww』

『陛下のモノロジーくっそ笑ったw』

『自分でそれ言うかww』

『めっちゃ炎上というか、盛り上がってるよねw』

『偉業は偉業なんだが、大手事務所に乗っかってるって叩かれてますよ?w』

『実際は陛下が乗っかったんじゃなくて、クロクロとジェムプロが乗っかったんだがなw』

『これは偉大なる魔王様w』


 挨拶と共に早速流れるコメントの数々を見て、思わず苦笑する。


 実際、私は今、SNSで叩かれているらしい。

 ぶっちゃけ私を叩きたい連中というか、新技術という名の魔道具を使った話題性抜群のイベントを行った私に、自分たちが乗っかれない妬み嫉みをぶつけているという感じだから、私自身はまったく痛痒を感じないレベルではあるけどね。


 まあ、それはしょうがないよね。

 普通にイベントとしてクロクロとジェムプロを使っているのは、彼ら彼女らのネームバリューと実績、その価値があるからだ。

 現実的な話、そういった価値がなければイベントに起用しようなんて話になるはずもない。ビジネスとはそういうものだからね。

 なので、そんなところを叩いてる暇があったらお眼鏡に適うだけの人気を得てほしい。


 そんな内容をモノロジーで投稿したら、凄まじい反響だったんだよ。

 別に全方位喧嘩を売りたい訳でもないし、ごく当たり前な事を言っているだけだから、これで顔を真っ赤にして反論してくると自分の株を下げる事になるので注意してほしい。


「あー、モノロジーのアレについては、妾は撤回も訂正も謝罪もする気はないからの。現実的な話、妾としても会社のこれからの活動に対するプロモーションな訳じゃし。力を入れて当然であろう? やれ贔屓だのなんだの騒がれても、そんなの企業として宣伝力の強いところに依頼するのは当然であろうよ。むしろ、社運を賭けるようなこの規模のプロモーションを売れてない、名前の知られてないVtuberを使って妾に何の得があるんじゃ? それこそ贔屓でもなければ有り得んぞ」


『ぐうの音も出ない正論パンチであるw』

『それはそうw』

『まあねw』

『一部の隙もない現実で草』

『イベントの最中であっても堂々と言及する陛下強すぎw』


「いや、むしろそれでジェムプロとクロクロに文句を言ってる者もおるようじゃからの。敢えて妾が言っておるんじゃよ。今回のイベントは妾から依頼したものであって、その依頼内容に価値があったから両社は参加してくれておる。それ以上でもそれ以下でもないのでな。ジェムプロもクロクロもそういう意味の分からんクレームを無視してはおるようじゃが、妾は言わせてもらう。文句を言うヤツはお門違いも甚だしいぞ。身の程を知れ、たわけ」


『はい、たわけきました!』

『正論パンチどころの話じゃないんよw』

『私は嬉しいよ、ジェムプロとクロクロのこんな特大コラボ見れて!』

『今日も色々ゲスト参戦してたし!』

『夢の時間だったわ、マジで』

『めっちゃ腹痛いけどなw』

『ホント腹筋バッキバキになるわ』


 たった一日爆笑して腹筋バッキバキって言えるぐらい鍛えられたら、それはもう一種の拷問とかそういうレベルだと思うけどね。


 ともあれ、今日のこの発言はジェムプロにもクロクロにも許可を貰っている。

 というかこういう話をするのがジェムプロとかクロクロだと、なんか「お気持ち」とか言われて全然効果が出ないらしいんだよね。だから所属Vにはそういうのは触れさせず、事務所側で対処するのが通例らしい。


 けれどウチの場合――というか私の場合、こういう物言いは当たり前にやってきたことだし、レイネが呪いを飛ばして実際に黙らせたりもしてるからね。

 餅は餅屋と言うべきか、私がこういう宣言をしてもおかしくはない。

 これでも噛みついてくるなら、問答無用で実力行使に出て呪いがかけられるっていうのは、私の視聴者たちも「何か天罰みたいなものが落ちる」という認識が植え付けられているのか、むしろ楽しみにしている節がある。


 ……なんていうか、今の時代に魔法の事を堂々と公にしても、普通に自由に過ごせそうだよね。

 一昔前の古めの漫画とかアニメであったような、不思議な力を持っていると知られると監禁されて人体実験がどうの、とかっていうのは、その人間が知名度がないからできることであって、知名度があったら下手な真似なんてできないだろうし。


 そもそも監禁して存在抹消した上での人体実験なんて、今の時代にやったりするのかな。

 ちょっと気になる。


「まあそれはともかくとして、イベントも残すところ一日。どうじゃ、楽しんでおるかの?」


『マジ最高!』

『夢の舞台をありがとう!』

『なんかもう、時代の転換点って感じだわ』

『新技術ヤバすんぎw』

『昨日と今日でやった演出とか、普通のVでもできるの?』

『ヴィル様めっっちゃデカかったじゃんww』

『ソリアちゃん飛んでたぞ……?』

『もうわからんのよww』


「うむ、まあ色々と追って発表するが、普通に使えるようにはなる予定じゃな。クロクロのヴィルやソリアのようなアレについてはちょっとしたタネがあるからの。その辺りは公表せんが」


『教えてくれてもいいのよ!?』

『めっちゃ気になるw』

『だってみんな見上げて喋ってたじゃん……』

『ヴィル様動いてもみんな顔見上げてたし』

『意味わかんな過ぎてくっそ笑ったわw』

『もうね、魔法、ありまぁす!』

『ホント魔法が存在してるって言ってくれた方が分かりやすい』

『ロココちゃんも神秘は存在してるって言ってたしw』

『あの時のロココちゃんもマジでなんか凄いオーラあったよな』

『わい、何故か画面越しに顔見れなかった』

『俺も無理だった』


 コメントを見れば、ちょっと前のロココちゃんの配信の話題も出てきていた。

 人が、人間が未知を捨てて既知に縋ったという時代の話、だっけ。

 私も彼女の配信は観たし、あの後、レイネを通して宮比神に話を聞いてもらった訳だけれど、ロココちゃんのアレについては神使という彼女を利用して、宮比神が力を与えて民に訴えかけた、というのが真相だった。


 どうやら宮比神は「神秘を広めることに異論はない」というスタンスのみではなく、力を失い消失しかけている神々のためにも、積極的にそれらを広めたいというのが本音であるらしい。


 この調子なら、私も遠くない未来に魔法という存在を広めたりできそうだ。

 存在していると薄々実感している視聴者たち、半信半疑の者たち、最初から信じていない者もいる状態ではあるけれど、明確に存在を示す日はそう遠くないだろう。


「それよりもイベントについてじゃ。明日が最終日な訳じゃが、10時からジェムプロのライブ、途中途中で休憩を挟んだ後、夕方からはスペシャルコラボライブが始まる予定となっておる。せいぜい寝坊せぬよう気をつけるのじゃぞー」


『それはジェムプロのVたちに言ってあげてw』

『さすがにライブ当日に名物の寝坊はないだろ……ないよな?』

『マネちゃんたちが必死に起こしてくれることを期待』

『信用ねぇwwww』

『まあ、寝坊っていうレベルを超えて寝坊するもんなww』


 あぁ、うん、そうね。

 実際Vtuberが寝坊して最大4時間オーバーとか遅れた後に起きるとか、年に1回ぐらいそういうのがトレンドに上がるもんね。


 私は正直しょうがないと思うけどね、寝坊って。

 だって本人に悪気がなくて、当然ながら意識もないんだもの。

 怒ってみたってどうしようもないしね。

 視聴者の多くもそう考えていて、それどころか、むしろ寝坊したのがネタになると思ってお祭り状態にしちゃうぐらいだしね。


 ……まあ、本人としては、自分が寝坊したという赤っ恥を世界レベルで広められることになる訳なんだけどさ。

 そこは甘んじて受け入れてもらおう、うん。





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