表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
最終章 集大成
192/201

【クロクロ配信中】神絵師降臨




 クロクロの配信は視聴者参加型が多い。

 同じクロクロの箱、それに視聴者を対象にお題を提供して、そのお題に応じたものをSNSを利用してハッシュタグで投稿してもらい、その中から選んだりするものとかもある。


 Vtuber業界では、だいたいがイラストがメインだったりするけれど、工作系ゲームだったりするとその図面、作り方の動画なんかを視聴者に作ってアップしてもらって、それをVtuberがゲーム内で再現したり、というものもあるんだよね。


 ああいうので選ばれた人は嬉しいだろうなぁ。

 私もノリでVtuberのお題イラストとか描いてSNSにアップしてみようかな。

 デフォルメ絵とかならそこまで時間かからずに描けるだろうし。


 まあ、それをやるだけの時間があればの話ではあるけれど。


 ともあれ、こうして配信を観ていると結構勉強になる。

 そもそも私の場合、箱――というか、これまではスタッフがレイネしかいなかったから、こんな人海戦術でどうにかなるような企画とかは一切やらなかった。


 選別するのも纏めるのも、それに評価基準だったりっていうのも個人の完全な主観になってしまうのは勿体ない。

 色々な着眼点もあるだろうし、逆に技術的なところじゃなくて、心に迫るようなものがあったとして、それを感じ取れる人と感じ取れない人なんて差も生まれたりするかもしれないからね。


 特にイラストってそうだと思う。

 全体的に完成度が高いかどうかだけじゃなくて、その絵師さんが拘っているポイントというか、「ここを見ろ!」ってすっごい熱意を持って主張していたりすると、そういうものが伝わってくることがたまにある。

 逆に、そういう主張を押し殺して、ただただ全体的な平均値をあげて完成度だけ高めようとしているものとかだとなんとも思わなかったりもするから不思議だ。


 ある意味、性癖の押し付けみたいなとこあるって思ってる。

 人物像を魅力的に描けるっていうのはそういうものだよ、多分。


《かわいいーー!》


《確かにこれは可愛いわ》


《踊らせたりとかしてくんないかなぁ》


『かわいい!』

『踊らせ分かる!w』

『こういう2.5頭身キャラ好きw』

『アイコンにしたくなるw』


 表示されたイラストを見て、クロクロのライバーとコメントが盛り上がる。


 今後は、ウチの一期生たちがそういう企画をするのもいいね。

 場合によっては魔法技術商品でどんなものがあったら嬉しいか、空想選手権的にSNSを通してニーズを探るということもできるかも。


 せっかくだから、そういう企画はロココちゃんに頑張ってもらいたいところ。


 特にロココちゃんは基本的にゲーム配信しかやってないからね。

 何かしらの企画をしようにも、まだまだ現世の知識が浅くて難しい。

 そういう意味では、視聴者参加型の配信をしたりしながら、一般人的な視点とか価値観を色々学んでいくのも悪くはないだろうし。


 ともあれ、クロクロの配信だ。

 お題に合わせた視聴者のイラストを発表していくというコーナーだったのだけれど……なんというか、出るわ出るわ……プロの所業が。


『うっっまwwww』

『またプロですw』

『つかこれ投稿主ママやんけww』

『あじふりゃい先生何しとるんww』

『さつきちのママ兼神絵師の人やんwwww』


 今回のテーマは、何故かクロクロなのに『ヴェルチェラ陛下の所業』というテーマ。

 ちなみにこのテーマを出したのは、過去のFPSイベントで一緒になった水無月サツキさんである。


 クロクロの人気Vライバーであるサツキさんと私のコラボ絵。


 私はその絵の中だと死体の山を築き上げていて、それらを踏み付けて立っている。そんな私の佇んでいるその向こう側、廃墟となった街中に真っ赤な満月が浮かんでいた。

 そんな満月に身体を向けながらも、なんかごっついスナイパーライフルを肩に担いで背中を向けて髪を靡かせつつ振り返っている。


 その手前側、瓦礫の後ろでサツキさんのモデルがデフォルメ化されて涙目になりながら、サブマシンガンを持ってぷるぷる震えている、そんな構図だ。


 そのほぼ全てが頭部を一撃で撃たれていて顔が判別できなくなっているのは、ヘッドショットのせいなのか、それとも騒動が多かったイベントという事もあったり、参加ライバーへの配慮か。


 多分全部だろうなぁ……。

 まあ、装備とかでなんとなく分かるけどね。


 というか、このイラストのために配信見返して私がヘッドショットしたプレイヤー調べたのかな……。

 すごいね、ホントに。


《はわぁぁぁ……っ》


《ちょい、サツキさん? コメントくださーい!》


《コイツ、見惚れてやがる……!》


『コイツww』

『草』

『魔王様の臣下だからなぁw』

『めっちゃ推しだもんね、さつきちw』

『コイツ、自分が描かれてるのにどう見ても自分を見てないだろww』

『赤い満月を背景に佇む陛下が顔面強すぎるんよwwww』


《はぁぁぁぁ……ッスゥーー……。これ、いくら? 二桁までは出す》


《コイツ、すっげぇ真剣な顔しながら……ッ!?》


《曇りのない目つき……!》


《今日イチ真剣な顔やめろよ》


『確かに今日イチ真剣な顔だわww』

『さっきまでにっこにこでデフォルメ絵見てたのにww』

『これにはあじふりゃいネキもにっこりだろwwww』

『いや、実際この絵のクオリティを無料っていうのはヤバいww』

『払わせろ!』

『これの特大版特別配布つき画集が『ねとけっと』で販売中ってSNSあがった!』

『これは買うww』

『おい、販売数カウンターwwww』

『良心的な価格とは言え、このカウンター数はエグいww』

『この数十秒で万単位はやべぇだろ……』

『あじふりゃい先生のSNSwwww』

『くっっっっっそwwww』


《めっちゃ盛り上がってるなぁ》


《ちょおおおおい! さつきち! スマホ出すなあああ!》


《邪魔しないで! どいて! 私は買う!》


『カwwオwwwwスwwww』

『これがクロクロだ』

『いや、普通にスマホ出してるってどういうことよ……ww』

『あじふりゃい先生万超えいったーーーー!』

『俺たちからのスパチャプラスファンの購入!』

『やっば……ww この数分で2500円の画集が万超え販売とかww』

『ひえええええ』


「凛音お嬢様、こちらを」


「ん? ……あー、そうなっちゃうんだね」


 わざわざレイネが『ねとけっと』――いわゆるイラストや3Dモデル、アバターなんかを販売できる通販機能持ちのサイト――を表示してくれたんだけど、すでに買い取りカウンターが5桁を超えている。


 ……手数料も取られるだろうけれど、うん。

 めちゃくちゃ大きな金額が動く世界だね。

 一人ひとりはちょっとしたお買い物感覚だろうけれど、単純計算2500万の売上を叩き出した訳だし。


 税金で泣きそう。


「ちなみにモノロジーがこちらです」


「……発狂してない?」


 遡って表示された投稿の数々は、「私が描いた!」から「なお、こっちでアップしているのは引き伸ばすと画素数荒くなる仕様ですぇ」という説明。

 続いて「『ねとけっと』にて『紅月に佇む陛下と死亡確定のさつきち』を購入特典の特別配布コード付き画集出しました! クロクロさんと魔王軍さんからも許可もらってるから安心してね! だから買ってね!」という投稿。


 その数十秒後には「ほげ」の一言から、「え、ty,まっtr」という謎の文言を残して、その次が「ひぇ……わたしの今年の収入を一瞬で超えた……え、こわ」と続いていた。


「私とサツキさんの絵は特別配布って形になったんだ」


「はい、著作権や肖像権の問題もありますので、このように。クロクロからこちらに相談が来ていました」


「そうなんだ。まあサツキさんのママで、しかも私のモデルは基本私が作ってるから、許可は取りやすい方だよね」


「はい。利益率の数パーセントを著作権、肖像権の使用料として払っていただく形になります」


「へー、そうなんだ」


 ぶっちゃけ私は気にしないと言えば気にしないんだけどね。

 ただまあ、会社としてはそうはいかないよね。


 この辺りを黙ってやってたら大問題だけど、さすがに神絵師と言われる先生だけあってキッチリそういうところは相談というか、事前に交渉をまとめているあたり、プロフェッショナルという感じだ。

 やっぱ法律って大変だけど勉強しなきゃだね。


《ふおおぉぉぉ、買えた! 見ていい!?》


《ダメだが!? というか配信中ですけどーッ!?》


《おいこら、さつきちィッ!》


《ちょっとだけ! ちょっとだけだからっ!》


『草』

『やりたい放題w』

『ダメに決まってんだるぉ!?』

『とか言いながらスマホ見んなww』

『周りの制止が通用してねぇw』

『配信中なんだがww』

『控室トークレベルで草』


 ……うん、配信中なんだからそこはちょっと自重した方がいいとは思うよ。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ