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転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
最終章 集大成
191/201

クロクロ勢配信中




 超大型イベント2日目。

 今日はお昼から『CLOCK ROCK』ことクロクロのイベントが始まっている。


 内容的には、大型コラボ系がメイン。

 前半は小物を使ったちょっとしたパーティーゲームみたいなものが多い。


 元々クロクロは、ジェムプロのアイドル路線とは違って、どちらかというと「フレンドリーな面白い仲間」みたいな距離感を視聴者と共に共有する。

 そんな箱であるからか、彼らのイベントは配信者の性別問わず笑いが多くて盛り上がるし、視聴者層もジェムプロに比べて女性層も結構多いんだよね。


 今回は、視聴者アンケート機能を利用した視聴者参加型企画なんかも大々的にやっている。

 お茶の間で流していても笑えるような、ファミリー層にもリーチできそうな配信、とでも言えばいいのかな。

 時間帯や曜日にキッチリ合わせてくるあたり、さすがって感じだ。


「相変わらず、クロクロって仲いいよね」


「そうですね。あまり垣根がない、とでも言うべきでしょうか。男女、先輩後輩、年齢によって差別化されていない、本当に仲の良いグループという印象です」


「だねー。変に恋愛感情とか絡んでたら面倒そうだけど、そういうのもなさそうだし」


 レイネの言う通り、本当にそういった垣根が見えないのはいいね。

 まあ、男女の仲の良いグループだからこそ、逆にノンデリ――デリカシーのない発言や言動――だったりも飛び出たりするけれど。


 それはそれで彼ら彼女らの持ち味というか、盛り上がる要素にもなっているけれどね。


 実際のところ、Vtuberという職業は「誰もが個人事業主」と言える。

 いい意味でそれぞれの自我は出ているけれど、どこかビジネスライクな思考が纏わりついていたりもする。

 人気商売であり、自分でブランドを守っていく必要もあるからね。

 それらを前提にお互いに踏み込み過ぎずに済んでいるからこそ、ある程度は割り切って付き合える、というような部分もあったりしそうだけどね。


 ノンデリな発言とかが飛び出ても、それはあくまでもキャラクターとしてのものだったりもするだろうし、裏では謝罪していたりもするかもだし。


「……まあ、私は結果として『魔王軍』という箱を作った理由だけれど、私みたいなのはすでに形ができているどこかの箱に所属する、なんてできなかっただろうね」


「凛音お嬢様が先輩後輩だので下に見られるなど、あってはならないことです」


「いや、箱に入るならそこは割り切ったりもできただろうけど。なんていうか、箱に迷惑がかかったりすると、自分だけじゃなくて会社にも迷惑かかったりするじゃない? そういうの考えて活動するなんて息が詰まっちゃうよ」


 Vtuberとしてのキャラクター性、口調であったり性格であったり。

 それらを演じきれる人もいれば、自分自身に寄せていき、ちょっとずつ自我を出すようになったりという方法なんかもある。

 ただまあ、私は「どこかで自分自身とVtuberというキャラクターの一線を引いておくべき」と考えている。


 私の場合は前世の自分がキャラクターとなっているけどね。

 ほら、さすがに普段の生活で私も自分を「妾」なんて言ったりしないし、当然ながらに現代社会的に失礼なこととかは言わないようにしているし。


 まあ、その結果が「案件先との話し合いは同行しても口を開かず、レイネが対応する」という超絶お嬢様感ある形になっちゃったんだけどさ。

 他社からの案件を受ける機会もこれからはほぼないだろうし、別にいいけど。

 むしろ自社プロモーション配信専門みたいになっていくだろうし。


「あ、設置型のアレ、使うんだ?」


「はい、そのようですね」


《――マジでえええぇぇぇっ!? ナニコレェ!?》


《は? は!?》


《え、これ視聴者のみんなも見れてる!? 月ィ!》


《やば、なんか感動……――ッ、ちょっ!? 後ろ見て、後ろ!》


《地球……!?》


《すげぇ……》


『え、どゆこと?』

『ん? 見えてるけど』

『背景嵌め込みじゃないってこと?』

『いやいやいやww じゃあどうやってんのさw』

『マジで陛下ホント陛下ww』

『どういうこと……?』

『全員で後ろ見てるww』


 レイネが幻影魔法を仕込んだ魔道具。

 起動すると同時に360度、全てを包みこんだ幻影が月面を思わせるような空間を作り上げた。

 クロクロのライバー達がすっごい慌てて周囲を見回して騒いでいるおかげで、これがただの嵌め込み映像ではないことに気が付いたのか、視聴者たちもゆっくりと盛り上がっていく。

 なのに、その光景に言葉を失って呆然とした様子で後方に映った地球を見つめて固まってしまっている。


「あらら」


「配信事故みたいになってますね」


「まあ、そりゃそうなるよね。実際に見てきた光景の反映だもん」


 いやあ、実はあの光景は私とレイネが見てきたものを記録したものだからね。


「凛音お嬢様がいなければ、私だけでは障壁を保てそうにありませんでした」


「あれは私も大変だったから、専門知識とか専用の対策魔法が作れないと無理だね。軽い気持ちで行ったの後悔したもん」


 さすがに宇宙空間は私も長時間は耐えられそうになかった。


 重力はともかく、気温とか放射線とかが厄介過ぎる。

 魔力障壁の維持と水の膜を温度調整して維持するっていう、なかなかに面倒な術式を常に維持しなきゃいけなかったり。

 魔力障壁だけでどうにかできれば良かったんだけど。


 ともあれ、そうやって手に入れた映像記録を幻影魔法に刻み込んで展開させる、設置型の魔道具を利用した舞台背景の変更。

 一応グリーンスクリーンを利用して、背景をCGで変えたりっていうのはできるんだけど、そうなった場合、ライバーにはその光景をモニター越しに確認してはいるものの、現実の光景が変わる訳じゃない。


 なので、こういう風に一瞬で周辺が変わるというのは驚くのも無理はないだろうね。

 魔石の都合上、リハーサルとかじゃ魔道具を使わずに動きの確認だけだったから、こうなるっていう事前情報だけあってもビックリするのは仕方ない。


 うん、仕方ないよ。


「本人たちは「自分たちはプロだから配信を忘れるようなことにはなんねーっすよ」と言っていましたが、見事に反応がなくなりましたね。ざまぁ、というやつですね」


「いや、別にざまぁではないと思うけど。あ、スタッフさんが声かけたのかな?」


《いや、ごめんごめん。でもこれヤベーって》


《それな。マジで月にいる気分》


《ホントごめんごめん。というか陛下ちゃんヤベーな》


『陛下ちゃんは草』

『不敬』

『処す? 処す?』

『審議不要、処刑』

『ギルティ』

『自分らの推しに対して辛辣で草』

『味方いなくて草』

『いや、そもそもどういうことなの?』

『それホントに映像が切り替わった的な?』

『え、全面ディスプレイか何か??w』

『もうマジ陛下は魔法使ってるってw』

『ホントそう考えた方が健全まであるw』


 基本的に箱のイベントは、その箱の所属Vtuberに対して優しいし擁護される流れになりがちだ。

 けれどクロクロの場合、コメント欄とのプロレスというか言い合いみたいなのも含めてエンタメと化しているからか、私を擁護する流れが出来上がっていて笑えてくる。


《いや、でもさーホント陛下は謎だよね》


《ガチ魔法使い説チョー分かる。なんなら俺も魔法教えてほしい》


《教えてもらって使えるものなのかな?》


《だったら俺も使いたいわ》


《ほんそれ》


『もはや魔法が当たり前にw』

『以前までは魔法なんて信じられなかったのに、陛下のせいでw』

『良い時代になったもんじゃのう』

『魔法を公表するとは、さすが陛下』

『なんで当たり前に存在を認める流れになってんだw』

『草』

『私も魔法使いたい!』


《ハッ、てことは『魔王軍』の一期生が魔法使い始めたら、教えてもらえるかも?》


《それだ!》


《後で聞いてみよう!》


 ……そう来るかぁ。

 リリシアちゃんたち、頑張ってね。





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