表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
最終章 集大成
189/201

【ジェムプロ】ガールズバンドプロジェクト




 ウチ――ジェムプロ――の子たちのライブは、これまでの3Dライブだけではできなかったような演出を盛り込んでいる。

 その最たるものが、小道具を使った演出、乗り物に乗っての登場など。


 要するに、元来の3D映像であれば、どうしてもモデルが持つと浮いて見える(・・・・・・)ようなものを使った演出だったり、乗り物に乗って登場したり、というような類の演出のこと。


 昨今の3D技術ではだいぶ違和感もなくなったと言える。

 昔はモデルから数十センチぐらい離れたところとかを浮いていたりもしたしね。

 それでも、最近でも握り込んだ手の上に掴んだ物の映像が出てしまったりという事も含めると、まだまだ現実に即したものになっているとは言い難いのが実状だ。


 けれど、凛音ちゃんのこの新技術ではそういうことも一切ない。


 本当に、技術的には凄いことよね。

 魔法っていう、そもそもこの地球で培われ、研鑽されてきた技術とは根本的に異なるものである事を知っている私――滝 楪――だけれど、その万能さには恐れ入る。


 でも、ありがたい。

 ウチの子たちも技術的な可否のせいで表現できないものは多かった。

 たとえば、ピアノを得意としている子だって今回のライブで手元を映して本当にピアノを弾いているしね。


 そして何より、今までの技術だけじゃどうしても踏み込めなかったジャンルに踏み込めるというのは、それだけで世界が広がる。


 ――始まる。

 カメラが切り替わって、私たちのいるスタジオにライブ映像が飛んでくる。


 暗いステージを映していたそこに、ライブスタジオのように色とりどりの照明がステージ上のメンバーたちの上で輝くと同時に、ドラム担当のエフィがスティックを打ち鳴らしてカウントを始めてから、同時にギターとベース、キーボードが音を奏でた。


 同時に正面からの照明。

 誰が何を演奏しているのかが視聴者たちにも映し出された。


『は!?!?』

『バンド!?』

『は? ヤバ、すき』

『マジで弾いてて笑うwwww』

『エアギターとか3Dお約束のエア楽器じゃない!?』

『カッコイイ!』

『マイク持つ時の雑な動きとか、もうリアルやん!w』


 流れる凄まじい早さのコメントの数々に、私も思わず口角がつり上がる。


 新たにガールズバンドを組んだ新ユニットのお披露目。

 完全生演奏で、その手元の動き、ドラムの叩くタイミングに弾ける細やかな楽器特有の振動さえもが映し出されている。

 それに合わせてライブハウスを意識したこの場所は、照明も曲調に合わせて多彩にステージを彩ってくれて、なおさらにライブ感が強い。


 普通の3D配信の場合は手で持っているだけ、弾いている風に見せかけるだけ、となるようなそれとは違う、本物の演奏を届けている。


 ホント、すごい話よね。


 もともとウチのメンバーたちは、アニメの影響を受けたり、学生時代に吹奏楽部だったりでそれぞれの楽器を習ったりしていた子も多い。

 そんな子たちの経験が今、まさかVtuberなのに、数十万人の前で生演奏でライブする事に繋がった。


『汗とかもしっかり映るってどんだけ……?』

『ギターソロ!』

『かっけえええぇぇぇ!』

『アニメの時と同じようなアングルきちゃ!』

『すげえええwwww』

『いや、マジでこれヤバww』

『逆に言えばバンドアニメとかこの技術使えば演奏シーンガンガン撮れるんじゃ』

『ハッ、それだ!』

『第2期これでいこうぜ!!』


 つい最近、ガールズバンドのアニメがすっごい盛り上がっていたのよね。

 その曲の配信、演奏許可とかもしっかり取れて、アニメの映像を再現するかのようなカメラワークでスタッフたちもノリノリだものね。


 ちなみにカメラワークとかもアニメスタジオとか原作者にお伺いを立てて、オーケーもらってたりもする。


 スタッフたちをちらりと見やれば、みんないい顔してるわね。

 なんというか、普段の3Dライブの時よりも熱があるというか、真剣味の種類が違うというか、うん……熱い(・・)とでも言うべきかしら。


 なんというか、込み上がってくるものに押されて笑ってしまうのよね。

 かく言う私もそうだけど、ね。


 コメントからだって、その早さとかコメントの熱量みたいなものが伝わってきて、この感覚が共有できているのだとよく分かる。


 リズムの良い曲に耳を傾け、身体に響いてくる音の振動に身を委ねながら微笑みを隠さずに浸っていると、一曲目の演奏が終わって僅かな沈黙が流れた。


「――やば……っ、めっっっっちゃきもちいい……」


「おま、それ言い方ァ!」


「ホントわかる。なんかもう笑っちゃうもん」


「あははははっ、わかるけどねー」


「うん、ピッタリ過ぎて楽しすぎて、ホントもっとやりたい感じ」


『なんかもう、青春て感じ』

『わかりみ』

『みんな笑顔が眩しすぎててぇてぇ』

『エッッッッッッ』

『いや、さすがにこの場面にエッッを感じるのは無粋だろw』

『それはそうw』

『草』

『ガールズバンドとかマジか、すごいわww』

『Vtuberっていうジャンルを超えつつあるな、ホント』


「はいはーい! じゃあ2曲め! 1曲めが今のなんだから、なんとなく分かるかな?」


「分からなかったらアニメの中でのバンド演奏全部履修してくるといいよ!」


「時間なくて草」


「あはは、足りないね、それは」


「ちなみに、アニメ履修済みなら気付いてると思うけどー、なんとアニメスタジオからも原作者さんや出版社さんからも、今回のライブでカメラワーク真似するのとか許可もらってまーす」


『すげえええwwww』

『マ!?』

『原作者のモノロジー、また荒ぶってんぞww』

『アニメの時も荒ぶってたのになw』

『アニメの制作会社も違う意味でなww』

『まあ、作画神ってたのがVでできるって知らされればそれはそうなるww』

『作業時間があああってクソ笑ったわww』


 ……うん、それね。

 実際、私たちがデモ映像送った時に似たような感じの叫び声をあげていたものね。

 いや、その、アニメだからこそできるアングルもあった訳だし、あの頃は新技術なんてなくて革新的かつ大バズしたんだから、そこは素直に喜んでおいてもらえると……。


 ただまあ、今後ガールズバンドとかバンド系マンガとかで、この技術を使ってアニメ用に撮りたい、みたいな人とかも増えるでしょうね。

 それこそレイネさんあたりが狙っている通りなんでしょうけれど、そうなった時に先駆者としてジェムプロの名前も上がるのは、言い方は悪いけれど美味しい。


 そんなことを考えている内に、2曲めが始まった。


 今しがた演奏したアニメの曲に続いて、昔、一斉を風靡した学園アニメの伝説的な曲。

 ハイハットオープンのドラムから刻まれた音に乗る、細かくて速い激しいギターフレーズが特徴的な曲。


『マジか!?!?』

『鳥肌やっばww』

『弾けるんかい!?』

『すっっっっご』

『初めて聴いたけどカッコ良すぎて口ぽかーん』

『あっっっっっつwwww』

『一周回って泣けてきたww』

『神アニメ!』

『ハモりかっこよwwww』


 うん、そうなるわよね。

 私もリハーサルが完璧に成功した時、何故か泣けてきちゃったもの。

 歳かしら……嫌ね。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ