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転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
最終章 集大成
188/201

未来への展望




 ドンッ、と小気味良い音を立てて、花火が飛び出て火花が踊る。

 同時に舞台上に飛び出したジェムプロの単独ライブ一発目は、エフィと同じく一期生のメンバーが飾るらしい。


 前奏に合わせて踊る二人と、同じく打ち合わせとリハーサルを重ねたカメラマンの動きがシンクロして、キレのあるダンスが魅力を増して映像越しに視聴者たちに届けられる。

 そんな光景をしばし唖然として、一拍遅れて視聴者たちが我に返ったかのように、一斉にコメントが送られてきた。


『やべえええええ!』

『あっっっっっつww』

『力入りすぎて思わずコメント打てなくなった』

『すげええええ!』

『なんだこれ、マジで』

『これがVtuberなの?』


 反応は凄まじく、夕方になってチャンネル視聴者数が増加傾向にあるというのも事実だけれど、カウンターは50万人を超えている。


 コメントの早さが凄まじいため、コメントも一度打ち込んだら次の打ち込みまで間隔を設定する、いわゆる低速モードを設定されているらしい。

 ただ、それでも50万人という視聴者を前にして、そのコメント欄の速度は衰えることはなかった。


 今まさにジェムプロのメンバーが踊るスタジオ内。

 そこで私と一緒にライブ映像を観ているリリシアちゃん、ルチアさん、ノアちゃんの3人も、舞台演出の各種レーザーや花火の効果なんかにも驚いていて、自分の目とタブレット端末の映像を交互に見たり、口が開いたまま塞がらずにその光景を見つめていた。


『おいおいおい、マジか!?』

『これもう3Dモデルの動きじゃねぇのよ!』

『え、汗!?』

『きらっと光る汗がふつくしい』

『やば、なんか感動して泣けてきた』

『テンション上がる系の曲なのに泣けてきた感わかる』


 激しい踊りと、ホンモノの炎が噴き上がる演出効果の熱。

 スタジオの中はどちらかと言えば暖房を切って少し寒いぐらいだというのに、その熱が凄まじくて吹き出てきた汗がきらりと光って舞う。


 3Dモデルでは、ただ笑顔で笑っていたり、限られた表情だけが表現される。

 その映像クオリティは確かに近年上昇傾向にはあるけれど、それでも、どうしたってスタッフが遠隔で操作したりという手間も発生する。


 けれど、新技術――つまり、魔法を用いたこの幻影にそういった手間はない。


 それはつまり――――


「……な、んですか、これ……。すごすぎませんか……?」


 ――――だからこそ、〝本気度〟というものが垣間見える。


 笑顔の向こう側で燃える闘志のような熱意と、この幻影に合わせて演出を変えたが故にできる細かなダンスが、動きが、その難しさが浮き彫りになって、リリシアちゃんが呑まれたように呟いた。


 Vtuberという立場にあるけれど、ジェムプロのメンバーたちはいつだって本気だ。

 そこに〝本物の姿〟だとか〝3Dモデル〟だとか、そんなのは一切関係ない。


 常に最高のパフォーマンスを目指していて当然。


 何をどうすればより良く伝わるのか。

 どこを意識してどう動けば、感情が3Dモデルを通して表現できるのか。

 考えることは、もしかしたら生身の姿よりもよほど多い。


 私は普通の3D配信というものをやった事はないし、そのノウハウを実践したことはない。

 でも、3Dモデルで感情や動き、ダンスを十全に表現するためには、少々大袈裟なパフォーマンスというか、動き一つとっても大きくしなくてはいけないという話をユズ姉さんから聞いたことがある。


 そういった枷から解き放たれたからこそ、できるパフォーマンス。

 これまではあくまでも〝3Dモデル特化〟であった動きが、〝生身の動き〟に矯正されたからこそ、この数ヶ月ジェムプロはリハーサルとダンスレッスンを繰り返していた。


『何今の!?』

『え、やば』

『ダンスに応じて髪が靡いたりするのが自然過ぎる』

『モデル特有の無重力感が一切感じられない』

『あ、むり』

『すごすぎだよ、ジェムプロ』

『もう泣きっぱなし』

『おれこのアーカイブ鬼リピしそう』


 彼女たちの頑張りは、視聴者に確かに伝わっているらしい。

 そしてそれはジェムプロのスタッフたちも一緒みたいで、みんながみんな真剣な表情だけれど、その熱に浮かされて従来以上の集中力を発揮しているようにも見える。


 ――このステージを完璧にやり遂げたい、完成させたい。

 そんな熱意もあってか、雑に脱ぎ捨てたであろうコートが椅子やらその近くに落ちていたり、腕捲くりまでしてみんなが真剣にステージを見つめている。


「……すごいね」


「えぇ、本当に」


 アイドルを目指していたリリシアちゃんにとっては、憧れ、夢見ていたその場所そのもの。

 ルチアさんにとっては遠い世界の出来事のようで、けれど、その圧倒的なパフォーマンスとスタッフたちの熱意の凄まじさに感嘆している。


 ノアちゃんは、ただただステージを見つめている。

 口を開けたまま。

 それはただ見惚れているとかではなくて、真剣にそこに魅入っていながら、しかし同時に吸収して学んでいこうとしているようにも見える。


 そうして、スタートの一曲が終わり、スポットライトがエフィたちを隠した。

 凄まじい数の拍手の絵文字が大量に流れていて、あっという間に言葉が押し流されている中でも、幾つかこんなコメントが見えた。


『感動する』

『ほんと初期の頃と技術も段違いだ』

『陛下のおかげ感』

『3Dモデルとか映像技術も行くトコまで行った感じ』

『眠りながら3D空間いける日は近い!』

『ホントもう涙がやばい』

『初期の頃はポリゴン感あったのに、たった7年でこれか……』


 確かに、そう言われればそうかもしれないね。


 7年ばかり前――つまり、ジェムプロが本格的に動き出す、ほんの少し前までは、まだまだポリゴン感というか、CG感が拭えなかった。


 そんな時代からLive2D技術と3D技術は圧倒的に進化した。

 最近ではメタバースなんていうVR技術も凄まじく発展していて、まさに拡張現実とも言えるような世界が創造され始めている。


 確かに魔法という、一種のズルい手――チートを使ったのが私たちという存在だけれど、この魔法技術を更に転用すれば、きっともっと世界は広がると思う。

 私たちの齎した魔法技術に負けないぐらいに科学技術が発展して、お互いの利点を上手く活かせるようになれば、さらに3D技術、VR技術は加速していくだろうしね。


 そうした技術を、ウチのメンバーたちが広めていければ。

 きっともっと世界が面白くなるだろう。


 そんな事を考えてから、ウチの一期生メンバーたちを横目に見やる。


 ――この子たちは私とは違う。きっと〝一流の演者〟になれる。

 改めて、そんな風に思う。


 私は元々、〝一流の演者〟にはなれない。

 私の性質として、私は彼女たちのように物事を一人称的にというか、自分自身を重ねて見てみたりする以前に、自分を第三者的な視線――俯瞰的に捉えてしまうから。


 もちろん、そういうタイプであってもグループの中にいるのであれば、それはそれで輝くことだってできたかもしれない。

 個を活かすための調和であったり、状況に応じて対応したりなんていう器用さはあるかもしれないけれど、抜きん出た個にはなれないな、なんて。


 その点、やっぱりウチの子たちは凄い。

 この圧倒的なパフォーマンスを見て、それぞれに熱を感じ取って、闘志すら燃やしているのだから。


 ――うん、面白くなりそうだ。

 これから先が、なんだか楽しみになってきてわくわくしてきた。


《――さあッ! 始まるよーッ!》


 エフィのジェムプロ単独ライブの開催MCの締め括りの言葉が、私にはまるで未来の訪れを告げる言葉のように聞こえていた。





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