【配信】イベントスケジュールのご案内
パチンと指を鳴らして背景にレイネからもらった簡易スケジュール表をアレンジしたものを投影させる。
イベントのスケジュール。
23日はお昼の12時からオープニングセレモニーというか、スタジオの紹介。
その後、16時からジェムプロの単独ライブ。
24日はお昼からクロクロの単独ライブがあって、25日は再びジェムプロのライブが午前中から始まって、夕方からジェムプロとクロクロ、そしてウチのリリシアちゃんによるスペシャルコラボライブと各種企画というスケジュールになっている。
企画はクイズとか色々だね。
ジェムプロ、クロクロに持ち寄ってもらう形になっていて、さらに言えば企画のコラボメンバーについてもジェムプロとクロクロで自由に決めてもらっている。
時間割についても私たちのオープニングセレモニー以外は二社に話し合って決めてもらうという形にしているので、ぶっちゃけ私も渡されてから初めて知ったぐらいだし。実際「へー、こんなスケジュールになったんだ」ぐらいの気分で見ていたりする。
「――とまあこのようになっておってな。3日間、割とぶっ通しで行われる予定じゃの」
『すげえええええ』
『下手なリアイベより充実するのでは?w』
『全部配信してくれるん?』
『というか無料でいいんですか!?』
『無料が気になるならスパチャの準備でもしておくのがファン』
『冬のボーナスが火を噴くぜぇ』
「イベント開催中はクロクロ、ジェムプロ、そして妾たちそれぞれの視点でカメラが動くからの。たとえばジェムプロのライブ中ならば、クロクロの方でオフショット配信が同時進行する予定じゃ。また逆も然りじゃな。基本的に公式チャンネルはイベント中は繋ぎっぱなしとなっておる。好きな箱にスパチャでもなんでも投げれば良かろう」
『えっ!?』
『そうなの!?』
『3窓確定!』
『デュアルモニターのわい、新たにモニターとモニターアームをポチる』
『ノーパソ、タブレット、メイン推しはデスクトップの三種の神器でいくか……』
『どれも観たいけど端末もモニターも足りねええぇぇぇ』
『3窓全配信はマンションのデフォよわ回線がああぁぁぁ!』
『超特大企画すぎて思わず固まるわ、こんなんw』
嬉しい悲鳴というべきか、何やら気になるところがたくさんあるようで、視聴者たちの反応が凄いことになっているみたいだね。
でもまあ理解はできる。
実際、こういうイベントって基本的には単独になってしまうのが普通で、コラボイベントとしての規模で考えると有り得ない規模のものだ。
できない大きな理由として、大前提としてイベントで売上が分散するのは好ましくないっていうのが一つ。
これは当たり前の話だけど、大型イベントをするとなれば当然大きなお金が動くから、ある程度回収できなければイベントだって行えない。
それに加えて、Vtuber業界の視聴者層、ファン層がある程度似通った層にリーチしてしまっているため、同時期に大型イベントをやってしまうと売上が伸びにくい、という事情もあったりもするだろう。
次に、たとえばタレント事務所とかならイベントに呼ばれてタレントだけ参加をすればいいと言えるけれど、Vtuberタレントの場合、イベントを打ち出す側が機材も含めた全ての準備をしなくてはならなくなるため、どうしたって呼び出すに当たっての初期投資額が大きくなってしまう。
そのため、企画側にとってもVtuberをイベントで利用するというのは簡単な話ではない。
そうした背景もあって、Vtuberイベントは基本的に主催会社が自社――つまりジェムプロならジェムプロが、クロクロならクロクロが全てを負担して、その分かかった費用を回収しなくてはならなくなる。
もちろん、コラボという形でイベントに参加するとかならやりようはあるけど、その場合は数名程度、小さな規模での参加のみとかになってしまいがちだ。
こういうイベントは、ただただ綺麗な夢や理想だけでは成立しない。
お金が大きく動く事を考えると、そのかかった分を回収して上乗せできるだけのメリットをどうやって取るか、という採算性の話になってしまう。
それに、所属タレントが多い以上、ほぼ全員参加イベントなんてものをやろうとすると、リハーサルの時間配分だけを考えても自社のタレントだけでもいっぱいいっぱいになる。
ただでさえVtuberが利用できるような設備が整ったスタジオは、こちらも採算の話になるけれど、投資額を回収できるだけの運営をする事そのものがあまりにも難しすぎるため、どうしたって数が少ないしね。
そこに同業他社のリハスケジュールも組みます、なんて言えるはずもなく。
その点、ウチのスタジオは幾つものスタジオがあって、魔道具カメラも最初から備え付けられている。
タレントたちをあちこちに分散して一斉にリハーサルすることもできてしまうし、今回、二社には場所と機材を提供する代わりにウチからは無報酬でイベントを打ってもらっている。
もちろん、これはウチだけが得しているという訳ではない。
二社とも、今後ウチの新技術配信でウチのスタジオを利用するシミュレーションにもなるし、本来ならばできないような特大コラボイベントという話題性もあり、かつ二社に負担が少なく実施できるというメリットがある。
さらにそれぞれのチャンネルでオフショットを公開したりという、普段ならそうそうできないような配信スタイルで配信が可能となっていて、そういう需要もリサーチできるというのも大きいらしい。
実際、ジェムプロやクロクロの面々にSNSでオフショットを公開してもらっているのはその需要のリサーチの一環でもあるらしいね。
ファンもお得に普段は垣間見えないシーンを見れるし、会社側は情報を収集できる。
お互いにwin-winという訳だね。
こうした条件もあって初めて可能になった、異例中の異例の特大イベントなのだ。
色々と背景とか採算がどうとかっていうのは、全てレイネから聞いた話だけどね。
他にもなんか色々と事情があるみたいだったけど、ぶっちゃけこの世界の事情について、まだ一般JKレベルでしか理解できていない私には、難しい話なんてよく分からなかった。
前世時代からたまに使っていた秘技、「うむ、よきにはからえ」という名の丸投げだね。
「しかしまあ、こうして見ると目白押しじゃなぁ」
『それはそうw』
『3日間張り付きっぱなしになりそうw』
『友人とお独り様パーティー予定だったわい、キャンセルの連絡済み』
『ぶっちゃけ恋人いるけど観たい……w』
『クリスマスデートキャンセルはヤバイw』
『浮気疑われそうw』
『彼女も沼に落とすんだよ!』
「いや、用事があるならアーカイブで観れば良かろうに」
『何を仰るんです!?!?』
『生配信を観てこそ推せるってもんでしょうが!』
『生配信を観ながらスパチャ投げてこそのファンでしょうが!』
『¥50,000 おらぁ!』
『¥50,000 こうすんだよぉ!』
「いやいや、待て待て。妾に今投げんでも良いのでは?」
『¥39,000 素晴らしいイベント開催の御礼に』
『¥3,939 ホント陛下のおかげでV配信がめっちゃ盛り上がってるよ、ありがとう!』
『唐突なスパチャ祭りw』
『¥50,000 みんな落ち着け??』
「……落ち着けと言いながら限度額投げるってどうなんじゃ? というかせめてイベントの時に投げれば良かろうに、なんで今投げとるんじゃ」
『草』
『それはそうw』
『確かにw』
『¥50,000 祭りか??』
『止まらねぇwwww』
なんというか、配信あるあるというか……。
うん、こういうお祭り感覚で唐突にスパチャの連続投入が来る感じ。
お金ってホント、あるところにはあるんだなぁ……。




