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転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
第五章 TURNING POINT
155/201

【配信】ノア・フリージア――汀 結愛―― Ⅰ




「はわ、わわわわ……っ! ど、どどどっ、どうしよう……っ!?」


 玲愛(リリシア)ちゃんと薫子(ルチア)さん。

 二人の凄まじい配信で、視聴者のボルテージは最高潮といった感じ。


 そんな状況を目の当たりにして、私――(なぎさ) 結愛(ゆめ)――は過呼吸を通り越えてスマホのバイブ機能もびっくりな震えっぷりで慌てていた。


 ――無理無理無理無理無理ぃ……!


 無理という単語がゲシュタルト崩壊を引き起こしそうなぐらい、プレッシャーがえげつない。半端ない。

 あ、ほんとむり、吐きそう。


「すまぬ、待たせたのう」


「っ、へ、へーか……! どっ、わ、うっ、うぉぇぇ……っ!」


「お、おう……」


「う、うぅ……ど、どゔぉじでわだじが最後なんですがぁぁぁ!? あの二人みたいなの期待されたってわだじは何もないのにぃぃぃぃっ!」


「前から言っておったであろうに」


「ぞーゆー問題じゃないんでずぅぅ! あんな超人二人の後じゃ、わだじの場違い感がああぁぁぁっ!」


「ええい、落ち着かんか」


 陛下の一言と一緒に振るわれた指が僅かに光ったかと思えば、私の周りを光の粒が舞い踊り、言葉と一緒に吐き出しそうになったサムシングが引っ込んで急に気持ちまで落ち着いた。


 すん、って顔になった、多分。


「やれやれ。本来、自力で乗り越えてもらいたいところではあるのじゃがな。まあ今回は特別じゃ。どうじゃ、すっきりしたであろう?」


「あ、へ、へへ、はい」


 いやぁ、ホント魔法しゅごい。

 感情がジェットコースターどころかフリーフォールみたいにすとんと落ちていったけど、うん、すっごい落ち着いた。


「ノアよ。何も心配する必要はない。お主はまだ己の才能を理解しておらぬやもしれぬ。故に、その才能を理解しておる妾が断言しておるのじゃ。お主のその声、その纏っておる空気、そのどれもが愛される要素になる、と」


「ふぃっ、え、あっ、スゥー……ッ! そ、その、頑張る……、ります!」


 うぅ、情けない……わたしぃ……!


 堂々としていて揺るがないような、憧れの人。

 年下であることは知っているのに、頭を撫でながら優しくそんなこと言われたら、なんかもうママーって感じ。

 不安とかそういうのが、この人に言われるとホントにどうにかなっちゃう。


 あー、尊いんじゃぁ……。


「ふ、ふへ、へへへ……」


「いや、デレッデレじゃのう……。――という訳で、この娘が最後の一人での。ノア・フリージアと言う。どうじゃ、可愛かろう?」


「へへ……――へ?」


 いきなり振り返って何を言い出したのかと思えば、陛下がパチンと指を鳴らした。


 途端に霧が晴れたかのように姿を現したレイネさんと、その手にはカメラ。

 そして陛下の斜め前にはタブレットが浮かんでいて、なんだかすっごい速さで何かが流れていってる。


『てぇてぇ』

『マジで気付いてなかったんか?ww』

『なんかもう、才能に全振りした二人の後だったし、どんなバケモンが出てくるのかと思ってたけど親近感あって逆に素直に推せるわ』

『かわいいw』

『見た目もだけど動きも小動物っぽさが可愛い』


「…………ゑ?」


『あ、気付いた』

『近年稀に見るレベルのガチぽかん顔で草』

『いえーい、みってるー?』

『陛下くっそ悪い顔してわろてるやんw』

『これが初配信なのかww』

『大丈夫、Vの初配信はだいたい黒歴史と相場が決まってる』


「……あ、ああああ、あのあの、へーか……?」


「くふ……っ、なんじゃ?」


「も、もも、もしかして配信……!」


「しておるのう」


「……にゅぇえええ!? なんでええぇぇぇ!?」


「くふっ、ふはっはははは!」


『これは悪役w』

『可愛いww』

『ガチめの涙目で助かるww』

『これは盛り上がってきたwwww』


 ええぇぇぇ、なんでぇぇぇ……?

 だってだって、私の配信は陛下が入ってきて最終打ち合わせをして、それから始めるって話だったのに……!


「さて、臣下諸君、それに初見の者たちよ。実のところ、元々妾はこの一期生に積極的に絡むつもりはなかったんじゃ。しかしルチアに配信に出てほしいと土下座……頼まれるわ、ノアはこんな状況だわでのう。仕方なくこうして出ておる訳じゃ。故に、すぐに引っ込む予定じゃ」


『土下座って言ったなw』

『ナイス一期生ww』

『つまり、ソロでやり切ったリリシアちゃんだけが真っ当ということかw』

『いてくれてもいいのよ?w』

『まあせっかくの初配信だしなw』

『ソロでやるのが普通なんだが、まあ陛下の箱だしなw』

『面白いからなんでもオッケーw』


「ここからはノアの時間として、ノアにしっかりと挨拶をさせる。邪魔してすまんの……うん? ……ノア、離さんか」


「え、あ、ま、まだちょっとだけ! ちょびっとだけいてくれても!」


「阿呆、妾は元々出る気はなかったんじゃ! あのままお主だけにしておったら虹を噴出しそうじゃったから、仕方なくこうして参加したんじゃぞ!」


「あーあーっ! だ、ダメですぅぅ! へーかがいなくなったら、私、虹を量産しますよぉ!?」


「妙な宣言で脅しとるつもりか、この戯けがーっ!」


『草』

『これは草』

『てぇてぇ……なのか?w』

『もうめちゃくちゃだよw』

『なにこれ腹いたい』


 うぅぅ、離さぬ、離さんぞおおぉぉぉ……っ!

 陛下のドレスをぎゅっと握りしめた私を見て、陛下が呆れたようにため息を吐き出した。


「……仕方ないのう。では、この際だから妾の配信で話すつもりであった話を今ここで少しだけしておこうかの」


「やったっ」


「……その話を終えたら、問答無用で引き剥がすからの?」


『お、助かる』

『いや、初配信だろうにw』

『可愛いんだがw』

『既存のルールなんて知ったこっちゃねぇ、という魔王スタイル』


 こくこくと頷いてからちらりとタブレットを見てみれば、コメントも……うん、褒めてくれてる。へへ、やったね。


「さて、実は一期生デビューの際に前世で活動した者はいなかったという話をしたんじゃが、気付いた者もいる通り、ルチアは別の畑で活動しておった存在での。積極的にVとして、配信者として活動していなかった、という意味で伝えておったつもりなんじゃが、どうにもコメントに気にしておる者がおったようでの。語弊を招いてしまってすまなんだ」


『あーね』

『え、俺は陛下の言ってる通りの意味だと思ってたけど』

『プロゲーマーでも配信にたまに出る、みたいなのまで活動には含まんだろ』

『人によるだろうけど、気にするヤツは気にするからなぁ』


「うむ、まあ妾の説明不足だった、という話じゃ。なので、この際だから一応伝えておこうと思っての。それだけじゃ」


「うぬぬぬ……っ」


「……いや、往生際が悪いのう、ノアよ……」


『草』

『必死ww』

『初配信だよ、ノアちゃん!?』

『挨拶すらしてなくて草なんだがw』


 力を入れてまだもうちょっとだけと粘る私を見て、陛下が呆れたように笑い――そして指をパチンと鳴らして、消えてしまった。


「へぁ……っ!?」


『え、消えた?』

『どういうことw』

『そういう演出で台本通りの展開とか?』

『いや、台本通りだとしたらノアちゃんの演技力ヤバ過ぎだろw』

『ガチめにキョロキョロしとるやんw』

『ノアちゃん、配信中やでー?w』


 突然姿を消してしまった陛下の姿を探していたら、カメラを構えたレイネさんと目が合って――……スゥーー……ぁ、ハイ、ゴメンナサイ。


「え、あー、えっと、その……の、のの、ノア・フリージア、です……!」


『知ってるw』

『草』

『独特な声で可愛い』

『さっきから陛下に甘えてる感じとか可愛かったし、みんなの妹感』


「い、妹!? い、いいい、いえいえ!? わ、わわ、わたし、へーかより年上ですしっ!? お、おお姉さんですし!?」


『お姉さん(陛下のドレスを掴みながら涙目)』

『お姉さんかぁ(なでなでに恍惚としてたけど)』

『お姉さんなんだねぇ(目そらし)』

『コメ欄がいじり倒す方向で一色w』


「え、あっ、ぉ゛……っ!? み、見られてたんだった……! き、記憶を消してくだしゃぃ……」


『こーれポンコツのにほひ』

『ぶっちゃけ可愛いw』

『顔真っ赤w』

『ワイ女、母性に目覚めるw』




 ――わ、私の初配信……大丈夫なの……っ!?




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