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転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
第四章 手を伸ばした先に待つもの
136/201

【配信】神使としての助言

レビュー2件いただきましたー!

この場を借りて御礼を申し上げます、ありがとうございます!


今回はロココの配信ですー







「――こんばんはでございまする! 魔王軍(まおーぐん)の愛され担当! ロココでございまするっ!」


『ございまする!』

『愛され担当……?』

『レイネたそからの怒られ担当では??』

『解釈不一致』

『鏡みてどうぞ』


「し、視聴者の方々が失礼でございまする……!?」


 宮比神(みやび)様に言われてレイネ様、そして魔王陛下(まおーへーか)の元へとやって来たわたくしめに与えられたお役目は、『ぶいちゅうばあ』なるものの活動でございまする。

 色々な『げえむ』をやりながらお話をするだけ。

 そう言われていたのでございますれば、しかし様々な『ねっとりてらしい』なるものを覚えるためのレイネ様の指南の数々……大変でございました……。


 あわわわ……、思わずレイネ様の地獄の特訓の日々を思い出して身震いがががが……。


『なんか震えてね?』

『今日はホラゲかな?』

『サバイバルから逃げるな』

『ホラゲから逃げるな』


「ふぐぅ……っ! そっ、そのように言われずとも、わたくしめは逃げる気などございませぬっ! 失礼でございまするよっ!?」


『ございまするよキタ』

『ノルマ達成』

『こういうの、普通ならプロレスになるのに、ロココちゃんの場合はプンスコになるからかわいいw』

『もっと罵り返していいのよ……?』

『是非とも一方的に罵ってほしい』


「え゛……? 罵られたいのでございまするか? それはまた……稀有なご趣味でございますね……。わたくしめは断然罵られるよりヨシヨシされたいのでございまする」


『あ、はい』

『ゴメンナサイ』

『ちょっと男子ー? 変態発言通じないんだから気をつけなきゃー』

『この子、ホントに何歳なんだ……?』

『お約束が全く通じてなくて居た堪れなくなるまでがロココちゃんクオリティ』

『ネットのノリがホントに通じないw』


 むむむっ、なんだか小馬鹿にされているような気分でございまする……!

 でもでも、視聴者の皆々様方に対し、あまり言い返し続けていて進行が遅れてしまうのはご法度とのレイネ様の教えを思い出して、気持ちを切り替えて『まうす』を『くりっく』。


「今日の配信では、先日の魔王陛下(まおーへーか)の配信、そこで使われていた魔法についてお話させていただきたいと思いまする!」


『おぉぉ! 待ってた!!』

『助かる!』

『え、ロココちゃんが? 大丈夫……?w』

『実際、先週公開された結末編の動画に出てたモデル似の議員が、緊急記者会見開いて汚職を自白したりって大騒動になってるからなw』

『芋づる式に色々な政治家が逮捕されてるしなぁ』

『補助金とかに絡んでたらしい会社とかも出てきてるらしいし』

『いや、さすがに魔法ってのはないだろww』


 凄まじい勢いで流れる文字に目を回しそうになったので、今は『こめんと』なるものは無視させていただく事にいたしまする。


 レイネ様がご準備してくださった『ふぁいる』を開いて、『おーびーえす』に展開して……よいしょ。


 あわわ、わたくしめの映像が裏にいっちゃったのでございまする……!

 えっとえっと、こうして……こう!


「はい、できました! じゃじゃーん! 皆々様、ご覧くださいませ! レイネ様が! わたくしめのために! ご準備してくれたのでございまする!」


『かわいいw』

『いいこいいこしてあげたいw』

『さすが有能メイドさんw』

『ルンルンでかわいいw』

『自慢げw』

『実際あのメイドさんにお世話されるのはうらやま』

『ワイもお世話されたひ。何をとは言わんが』

『ちょくちょく変態湧くんよなぁ、ロココちゃんの配信w』


 最初のは……はいっ。


「では早速、〝魔法が本当に存在しているのか〟についてでございますね」


『お!』

『CGとか合成でしょww』

『さすがに魔法はないと思うけど、ライブ配信の中でやってたからなぁ』

『常識的に考えればCGとかかなって思うけど、今回の騒動も考えると、ただのCGとしては片付けられない気がしてる』

『結末編でも名前とかは出なかったけど、見た目が酷似してたし』


 結末編と称して公開された動画は、実際にいた議員が『もでる』化したような映像でございます。

 しかしながら、当然名前を口にした部分は編集されておりますし、敢えて明確に言及はしない、というのがレイネ様、そして魔王陛下(まおーへーか)のご判断でございまする。


 けれど、あの配信、そして動画内に存在していた魔法については?

 そんな疑問を持つ方々がいらっしゃるのも当然というものでございましょう。


 故に、わたくしめが――神使として、語らせていただく事となったのでございまする。


「結論から申し上げますれば、皆々様方が何を指して〝魔法〟として仰っているのかは兎も角、それに準じた力というもの――神秘はこの世界に確かに存在しておりまする」


『え?』

『そうなん?』

『マ!?!?』

『え、設定として、とかじゃなくて?』


「古来、この国にもそうした力は確かに存在しておりました。神通力といったものや、あるいは霊力と呼ばれた時代もございまする。もっとも、これらはすでに遠い時代のこと。多くの人間が拒絶したその力は、今となっては脈々と受け継がれてきた血族を除いて、使える者はごく少数の者のみといったところかと思いまする」


『人間が拒絶した?』

『なんとなく想像がついたかもしれん』

『どういうこと?』

『なるほど、わからん』


「むむ、分からないのでございますね! では、こちらを見てほしいのでございまする!」


 レイネ様にご準備いただいた『ふぁいる』を『くりっく』して、次の頁へ移動させれば、画面も切り替わりました。


 ふふふ、わたくしめも文明の利器を活用できるようになっておりますれば!

 今度、宮比神(みやび)様に自慢してあげまする!


『ウッキウキで草』

『お、ページ変わった』

『なんかロココちゃんドヤ顔しとらん?w』

『ロココちゃんはかわいいんだが、いや、これって……』

『……マジかよ』


「今の時代に受け継がれない理由は、こちらにあるように当時の権力者が神秘を持つ者、その一族を秘密裏に集め、秘匿したせいでございまする。それ故に、俗人には奇異なものに映ったのでございましょう。そうした力を生まれ持った子を、祟り、あるいは呪い、(あやかし)憑きの忌子として拒むようになり、その命を断ってきたのでございまする」


 レイネ様がご用意してくださいました『ふぁいる』の頁には、左側には仕立ての良い朝服を纏った者達が描かれており、反対側には、汚れ破れた服を着る者達――つまり、当時の庶民が描かれておりまする。

 その庶民らが見つめる先には生まれたての稚児の絵。

 稚児の身体はもやもやとしたものに包まれていて、それを見て怪訝な顔、恐怖する顔を向ける者達の構図でございまする。


 そしてわたくしめが『くりっく』をすると、稚児の絵は赤い飛沫に染まり、その横には農具の斧を持つ薄汚れた人の手が描かれたものへと変化いたしました。


『ひえ……』

『そういうことか……』

『えぐぅ……』

『さすがにこれは……』


 先日、わたくしめも宮比神(みやび)様からこの話を伺いました。


 当時の権力者は、どうやら市井に力のある者を野放しにしたくないとも考えたようなのでございまする。そのような状況を防ぐべく、〝力〟のある仔は忌子であるといった噂を流布し、村々に厄災を齎すといった情報を流しもしていた、と。


 故に、〝力〟を持った赤子が生まれる度に、村の決まりがその赤子を亡き者にしてきたのでございまする。


 再び『くりっく』。

 もやもやを持つ稚児をバツ印で示し、ただの稚児だけがそのまま残る。

 そうして、その稚児が大人になり、またもやもやを持つ稚児が離れた世代で生まれては、バツ印という系図がそこに表示されました。


「そうして続いた習慣は、その結果、良くも悪くもこの世を変えたのでございまする。人に()てられた神秘は薄まっていきました。同時に、人から向けられる恐怖という糧によって力を得ていた(あやかし)もまた存在を秘匿され、忘れられ、弱り消えていったのでございます。やがてこの国もまた外来の文化に染まり、信仰はやがて薄れ、そうして神秘は俗人から完全に隠され、今の世へと移り変わったのでございます」


 人が神秘を捨て、外来文化に染まり神を()てたこと。

 人は知らぬが故に恐怖する。

 故に未知(恐怖)を捨て、人によって解き明かせるだけの既知に縋った。


 そうして人の世が移りゆき、消えていったものであったとの事でございまする。


『ほーん、そういう設定なのか』

『陰陽師とかそういう系っぽいね』

『いや、なんか妙に納得したんだが……』

『なんだろう、罪悪感みたいなものがいきなり生まれてきた』

『俺はなんか泣きたくなってきた』


 流れる『こめんと』の反応は、大きく二つに分かれておりまする。


 一方は、僅かに神秘を感じ取り、胸の内に去来した悔恨(呪縛)を素直に受け止める仔ら。

 対して、それを己の知る既知(現実)で無理矢理に押さえ込んでしまっている仔ら。


 ――「ロココさん。今回の配信は、いわば(ふるい)であると思ってください」。

 今日の配信にてレイネ様から告げられたそんな言葉を、わたくしめも今、強く実感しておりまする。




 ――――とかく、神様は平等でございます。




 わざわざ手を差し伸べるでもなく、ただ機会を与え、ただその結果を受け入れてしまわれまする。

 たとえそれが俗人にとっては分かりにくいものであっても、機微に敏く、順応できるものが少数であっても、そこに頓着などいたしませぬ。

 結果、多くの犠牲が生まれようとも、それは摂理であり、世界の流れによって淘汰されただけである、と。


 そも、改めて機会を与えれば、その時点で平等ではなくなるというのが神様方の認識なのでございましょう。


 故に、陛下(へーか)やレイネ様といった存在が現れ、魔法を世に広めることも。

 たとえば、魔法によって人を、世界を滅ぼしたとしても。

 いずれを選んだとしても、神々はそれを自然な流れと受け入れてしまいまする。


 そしてそれは、神使であるわたくしめもまた同じこと。


 その点、陛下(へーか)やレイネ様は、まだ人に近い考えを持っておりまする。

 人に寄り添い、混乱や混迷をあまり生み出さぬよう、段階を踏んで進めていこうと考えているのでございますから。


 ――わたくしめは、神使でありながらも、けれどそんな陛下(へーか)やレイネ様の考えが好ましいと、そう思っておりまする。


 ゆっくりと、僅かながらに発露させていく神使としての力。

 ふわふわと柔らかな風がわたくしめを包み、髪を揺らします。


 ――故に、これは神秘を忘れた人の仔らへの、祝福と宣託。

 宣託を受け取り、真実を受け入れ、魂が震える者ならば、神秘もまた発現しやすくなりましょう。


 かつての過ちすらも感じられず、再び既知で未知を遠ざけてしまうようであれば、その者は神秘を感じる資格はございませぬ。

 今後陛下(へーか)やレイネ様によって魔法(神秘)を広められた暁には、きっと変化に順応できずに取り残されるのでございましょう。


 最初から全てを掬い上げようとは考えておりませぬ。

 故に、篩なのでございます。


 


「設定と感じられた方も、胸の内に去来する感情に揺さぶられた方も、どちらも正しいのでございます。どちらが良いか悪いかというものでもございませぬ。とは言え、皆々様も困惑されていらっしゃるご様子でございまする」




 ゆっくりと発現させた神使の力を言霊に変えて、この言ノ葉に乗せて宣託いたしましょう。

 かつて、神託を告げていたという神使(わたくしめ)らの力を乗せて、現代(イマ)を生きる人間の仔らへと。


 一人でも多く、新たな時代に順応できるように。




「――改めて、お伝えするでございまする。魔法(神秘)は、確かに存在しておりまする。そう遠くない将来、皆々様方もまた、それを目の当たりにする事となりましょう。この流れは、かの方が望んだ結末(未来)でございますゆえ」




『おー、そうなったらアツいww』

『え』

『なんか涙とまらん』

『ん? なんかコメ欄おかしくなった? 妙に流れ遅くなったけど』

『なんで』

『とまらない』

『くるしい』




「人の仔らに、わたくしめから心ばかりの助言をいたしましょう。今、その胸に感じた想いを大事にするのでございます。無理に全てをせずとも良く、しかしながら何もしなければ、何も変わりませぬ。ここが、未知と既知、その行く末の分水嶺でございまする」




『はい』

『わかりました』

『え、何この流れ?w』

『なんか知らんが信者っぽくなってる奴ら湧いてて草』

『必ずや』

『↑お前は流れに乗ってみただけだろww』




 わたくしめの言ノ葉が、幾許なりとも人の仔へと届いたことを感じ取り、わたくしめは神使ではなく、ただのロココとしてにぱりと微笑んだのでございました。






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