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転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
第四章 手を伸ばした先に待つもの
130/201

【配信】裏 流れ変わったな……?




 暗転した画面が切り替わり、今度は凜音ちゃん達が泊まっているらしい場所の映像。

 監視カメラのように寝室二部屋と、玄関の扉、廊下や窓が数秒ごとに切り替わる映像が画面内を三分割した形で映し出されたもの。


「……画面を切り替えたりもしてるって事は、やっぱりドラマチックに仕立てて撮影したものを編集した……? いえ、でも、あの子――というよりレイネさんがいるとなると、リアルタイムで画面を切り替えるような技術者たちが控えていてもおかしくはないし……」


 缶チューハイをぐいっと呷り、思考を整理するように呟いていく。


 もしも今日のこの映像が事前にしっかりと準備されたものであったのなら、当然ながらにSNS上で配信の告知の一つや二つぐらいはしてくるはず。

 凜音ちゃんは地味に筆不精というか、SNSをそんなに積極的に使わないんだけど、レイネさんが管理するようになってから『今日のお嬢様』シリーズが毎日頻繁に更新されるようになったし、宣伝を抜かりなく行うぐらいは当然のようにしてくれているし。


 まあ、『今日のお嬢様』シリーズの返信、「てぇてぇ」ばっかだけど。

 あれはあれであり(・・)よね。

 クールなメイドさんなのに凜音ちゃんのどこそこが可愛らしいとか、そういう画像とかつけてくれたりもするし。


 ……うーん、それにしても判らないわ……。

 ドラマ風に撮影していると考えるのが当然だけれど、一方で、凜音ちゃんとレイネさんの魔法でカメラを見えなくして映している可能性もあるし。そういう事もできるって言ってたもの。


 ――ただ、もしも現実の出来事をエンタメ化して扱っているのだとしたら?


 そりゃあ、私にとっては可愛い姪っ子だもの。

 助けを求めて緊急で動画を回してます、的なサムシングだったらすぐに警察に通報したりとかもする。

 もっとも、それが凜音ちゃんやレイネさんの使う、魔法なんていう存在を知らなかった頃ならば、という話にはなるけれど。


 こうしてしっかりと構図まで考えて撮影されちゃってる辺り、どう考えてもあの犯人たちは凜音ちゃんたちに弄ばれているってことだし、通報なんてしなくても全て解決するとしか思えないけど……。


 襲撃は本当に行われていて、それを察したレイネさんや凜音ちゃんが突発的に配信する方向で話をまとめた。告知もせずに配信したのは、SNSを監視されている可能性を危惧したものだったりしたのかしら?

 そして、こうしてゲリライベント的に配信を行っている、というところかしら。


 末永という男の心の独白、それに襲撃犯の過去映像。

 そういったものも、魔法で読み取ってそれを幻影として可視化したと言われれば。

 常人が相手なら有り得ないと一蹴する内容ではあるけれど、相手が相手なだけに納得もできる。


 そうなると、レイネさん……確実にあの犯罪者集団を処分した(・・・・)って事にもなるのよね……。


『出た、監視カメラ風』

『ぬおおぉぉぉ、あの3人は誰なんだ……!』

『ロココちゃんはおらんっぽい?』

『レイネたそもいないし、一方その頃、って感じか?』

『あ』

『え』

『窓』

『あれ、窓開いてた?』

『なんか人影通った』

『誰だ?』


 コメント欄の流れが加速したのは、そんな風に思考を整理しているその時だった。


 カメラが切り替わっているちょうどその間に窓が開いたらしく、そこから人影が通っていくのが映し出されていた。

 抜き足差し足忍び足といった形で音を立てないように、けれど、それなりのスピードで進んでいくその様は、手慣れているなという印象を受ける。


『コイツ、レイネたそが倒したヤツの仲間か?』

『あれで全部じゃなかったのか?』

『あの戦闘メイドが取り逃がしたってこと?』

『あ、ドア開けた』

『今のノックが仲間への合図か?』

『侵入したのが一人、外から二人か』

『別働隊ってこと?』

『なんか手早く手動かして合図してんな』

『どう見てもプロの犯行』

『お、カメラ切り替わった』

『犯人の斜め後方上部からの映像かな』


 監視カメラ風に映し出されていた映像が切り替わり、侵入してきた3人の男の映像に切り替わった。

 扉を入ってきた二人は音もなく階段を登っていき、一方で窓を開けた男はゆっくりと凜音ちゃんの眠っている部屋へと向かい、画面が今度はそれぞれの男たちを背景にしたものに分割されて映し出されている。




 そうして、両者が凜音ちゃんの寝室、そしてもう一方の知らない3人がいるロフト上へと辿り着いた。

 画面がロフト側、つまり女の子3人の方に向かった男二人を映し出したもののみに切り替わった、その瞬間――――




《――せーの……っ!》




 ――――ロフト上で眠っていた3人が一斉に起き上がり、同時に手を翳したかと思えば、幾何学的模様を描いた光――魔法陣が緑色に輝き、男たちをロフトの上から吹き飛ばした。

 ご丁寧に男二人が飛ばされた先には光の鞭のようなものが表れて、それぞれの四肢を拘束して空中に磔にしてしまった。


《いえーい!》

《うまいこといった!》

《よく捕まえられたわね、吹き飛んでいく人間を》

《り……んんっ、へーかに言われたんだよね。腕と足に魔力を先にマーキングしてそこに発動すればいいってさ!》

《お、そんな事もできるんだ! ねね、このみん。やってみていい?》

《やめて》


『え、魔法?』

『オープニングでも魔法はあったし、魔法だろうな』

『つまりアニメというかフィクションか』

『3人娘つっよww』

『ハイタッチしてるし仲良しでほほえま』

『ナイスゥー!』

『襲撃犯サイドは魔法とか使えない感じ?』

『というか仲いいな、この子らww』


 空中で磔になった男たちは、口元まで光の鞭でぐるぐる巻きにされて身動ぎするのが精一杯のようなのだけれど、そんな男二人を見て3人が特に気にした様子もなく会話を続ける。


《しっかしまぁ、襲撃を相手にするなんて初めてだけど……思ったより緊張しなかったわ》

《それなー。怖くなかったよね。こんな状況、普通なら泣き叫んでもおかしくないのにさー》

《私たちには魔法があるもの。相手が何をしても傷一つつかないどころか、そもそも私たちに触れる事すらできないのよ? 怖がる必要なんてないじゃない》

《言うてこのみん、声震えてない?》

《それな》

《う、うるさいわねっ!? 仕方ないでしょっ!? ただの女子高生が、こんな状況に慣れてる訳ないじゃないの!》

《おぉ、このみんキレた》

《ウケる》

《ウケるって何よ、ユイ!》


『草』

『話から察するに、この子らは一般JKが魔王様に魔法を教わって魔法を使うようになった、ってこと?』

『あー、そういう設定かぁ』

『古き良きラノベ展開かな??』

『一般人のオレが不思議な人に出会って力を得たけどおかしな戦いに巻き込まれることに、的なアレ』

『ワイもそんな人に出会いたい人生だった』


 ……なんていうか、台本らしい台本とかないっぽいのよね、あの3人娘。

 どう見ても普通というか、素で話してる姿を曝け出しているように見えるし。


 そんな風に思っていた、その時。

 真ん中にいた、ユイと呼ばれた女の子がこちら――カメラを見た。


《あ、そだそだ。これアタシら映ってんだよね?》

《え、カメラどこ?》

《あ……、忘れてたわ……。そう、そうだったわね。魔力を目に集中させるんだったかしら》

《お、あったあった。いえーい、見てるー? あれ、コメントとかって見れないんだっけ》


『おん? 流れ変わったな??』

『フィクションの話だと思ったら、どういうこと??』

『ん?? どゆこと?』

『み、見えてるよー!』

『見えてまーす!』

『ヒーローショーでお姉さんに向かって叫ぶ子供に戻った気分ww』

『そんなオッサンたちを眺めてる気分で草』


 ……え。

 まさか……。


《ほい、スマホ。お、ウチら映ってんじゃん》

《あ、見えてるって》

《本当ね……。って、ふふっ、ヒーローショーでお姉さんに向かって叫ぶって、なんか面白い表現ね》


『は????』

『え??』

『お、ワイのコメが拾われた!』

『それどころじゃねぇんだよww』

『え? ちょ、どういうこと? これリアルタイム配信なの??』

『こーれはどういうこった……??』


「……本気で?」


 ドラマ仕立てで撮影したもの。

 少なくとも視聴者はそう理解していたはずだし、この一連の騒動を眺めていたはず。


 なのに、これがリアルタイムの配信であると明言してしまえば……。


《んん??》

《リアルタイム配信以外に何かあるん? あ、撮影したものを投稿してるとか?》

《少なくとも、私たちは今現在、実際に配信しているわよ》


『え?』

『録画したドラマ仕立て部分と今の映像を組み合わせたのか』

『あ、そういうことね』

『キャッキャしたところからってことか。演技うまww』

『違和感なく繋がってる辺り、普通にこれ凄い技術じゃね?』


 理解が及ばない視聴者たちが、なんとか理解して納得しようと推測に推測を重ねて、あたかもそれが正しい真実であるかのように補足していく。


 けれど。


《んー、なんか通じてないっぽい?》

《いやいやいや、さっきの襲撃犯はほら、そっちにまだ磔になってるよ?》


 二人の少女がそんな言葉を口にして手で示した先、そこには未だに空中に浮かんだまま、光の鞭に縛り上げられて磔にされている男二人の姿があった。


『え????』

『いや、剛性だろ』

『合成なww』

『え、いや、ん? どゆこと?』

『ちょっとカメラさん、3人娘と磔の両方を映してもらえません??』


《カメラってウチらの指示で動いてくれるんかな?》

《基本はレイネさんが操ってるらしいから、レイネさんならやってくれるかも》

《――お呼びでしょうか?》

《ひゃあっ!?》


『さすがメイド』

『え、今一瞬で現れたよな??』

『このみんちゃんの悲鳴たすかる』

『かわいいww』

『レイネたそきたww』

『いや、ちょっと理解が追いつかん、情報量が増え続けるってどういうこと??』


 ……ちょっと……。

 これ、どうするつもりなの……?


 困惑する私を他所に、レイネさんがカメラに向けてふっと指を動かしてみせる。すると、カメラが動き、空中に浮いた状態で磔になった男たちと3人娘、そしてレイネさんがいるその場所を映す位置へと移動した。


『助かる』

『いや待って??』

『なんかホントもう色々待って??』

『どうなってんだ??』

『これ合成ってことよな??』


《あれ、なんか信じてもらえてないっぽい? 合成じゃないよー》

《まあ、モデルで映ってる訳だし、映像越しじゃ信じられない人の方が多いんじゃない?》

《……そういう問題かしら?》


 このみんちゃん、そう、その通りよ。

 これもう、そういう問題じゃなくてね……?




《――であれば、口の拘束を外せば良かろうよ》




 そこに響いてきた声は、このチャンネルで聞き慣れたチャンネルの主――凜音ちゃんの声。

 カメラが声の主を追うかのように向きを変えれば、そこには凜音ちゃんがぐったりとした一人の男の首根っこを掴み、悠然と佇んでいた。




 ……凜音ちゃん、本当にどうするつもり……?






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