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転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
第四章 手を伸ばした先に待つもの
127/201

【配信】情報量の多すぎる配信





 ――動画配信を行うにあたって、基本とも言えるSNS上での配信通知。

 それは常日頃から配信を観てくれている視聴者に配信の予定を伝える役目もあり、また同時に、配信を見た事のない層に対する宣伝といった目的も兼ね備えている。


 個人勢Vtuberであり、大手事務所とのコラボ配信内におけるFPSゲームでの炎上騒動によってその名が広く知れ渡り、最近では〝新技術3D配信〟なるものを世間にお披露目した存在――ヴェルチェラ・メリシス。

 そんな彼女の配信は、時折配信にも映るメイドであるというレイネという名の女性によって支えられ、SNS告知や配信の手伝い等を担っていることは、『臣下』と呼ばれるヴェルチェラ・メリシスのチャンネル登録者たち――視聴者に広く知れ渡っている。


 故に、コメントには困惑の声が広がっていた。


『わこつ』

『え、今日配信予定だっけ?』

『配信告知とかなかったな』

『ちゃんと宣伝してもろて』

『メイドさんにしては珍しい失敗だなー』

『配信通知オンにしてたから気付けた』


 なんの前触れもなく始まった、ヴェルチェラ・メリシスの配信。

 視聴者にとっては見慣れたオープニングのアニメーションが流れているその最中、唐突に画面が暗くなり、黒背景にヴェルチェラ・メリシスの配信チャンネル用に作られたロゴがゆっくりと浮かび上がり、そして消えていった。


『お、何が始まるん?』

『え』

『は??』

『ふぁーーっ!?!?!?』

『え、ガチのアニメでも始まるん!?w』

『何この歌ww』

『うおおおおおっ!! かっけーー!』


 唐突に流れ始めた、パイプオルガン風のメロディ。

 その中に響き渡る透明な声が、ブレス音を混ぜながら静かに響き渡った。


 映像は海面すれすれを飛ぶ白い鳥の姿を追いかけるように映していて、鳥が空へと高く飛び上がると同時に、映像の中には絶海の孤島に浮かぶ島――その上に佇む魔王城を映し、背後で流れていた音楽もロックテイストの強い激しいドラム、ベース、ギター音が混じり始める。

 リズムをチチチチと刻むような落ち着いた音圧へと変わっていき、メロ部分が始まった。


『ふぁーーっ、良作アニメオープニングあるある感ww』

『こーれ狙ってんねぇ!w』

『お、出た、陛下!!』

『メロ部分の日常シーンっぽいの、わかりますww』

『あの、ガチでアニメクオリティなのやめてもらっていいですかww』

『というかこれ全部新技術で撮影してたりせん??』

『ロココちゃん、壺割って涙目とか解釈一致すぎて草』

『というかこれ新技術で撮影してる? 3Dアニメ? 分からんのだがww』


 映像は日常を切り取ったワンシーンを編集したもののようであった。

 配信主であるヴェルチェラ・メリシスこと凛音が本を読みながら大きく欠伸をするなり、体を伸ばしてそのまま寝そべってしまい、それを見たレイネが頭を左右に振る姿。

 場面が切り替わり、ロココが無理に抱えていた大量の荷物を運んでいる最中、それが崩れそうになって慌てた様子でよたよたと歩き回り――結果、廊下に飾られた壺の載った台にぶつかり、壺が落ちて割れてしまう。惨事に気が付いたロココの顔面が蒼白となって涙目になり、きょろきょろと周りを見回す姿など。


 ――――ちなみにこれらは何もこの為に演技して撮影したものではない。

 凛音とレイネの間でアニメーションっぽいオープニングムービーを作る事が決定し、隠蔽魔法によって姿を消したカメラが何気ない日常を撮影したものであり、それらをアニメのオープニングよろしくレイネが編集したものだ。ノンフィクションな出来事である。


 やがて曲調が変わり、静かなBメロに入る。

 映像では凛音が風を浴びながら魔王城のバルコニーで海を眺めており、かつての魔王時代を思い出しながらどこか寂しげな、懐かしさに浸っていた瞬間を映し出していた。


 ――余談ではあるが、凛音はこのシーンが撮影されている事には本当に気が付いていなかったりもする。


『いやいや、陛下の演技力やばww』

『というかガチで最新3D映画レベルよな、映像が』

『目尻に涙を溜めて、それが風に拐われる感じ、あるあるよなww』

『ちょいちょいアニメオープニングあるある入ってて好きww』

『普通にアニメ始まるやん、これw』

『サビくるぞ!!』


 レイネ、ロココが何かに気が付いて振り返るような映像が音楽のリズムに合わせて素早く切り替わっていき、凛音の顔がアップになり、その口元が愉しげに弧を描いて瞳が赤く染まった。

 同時に、ロック調の音楽が激しく鳴り響き、場面は広々とした洞窟を思わせる空間へと切り替わった。


『え、なんか戦い始めたんだがww』

『ふぁーーーwww』

『うおおおおお!』

『なにこれ、どうやって作ったん!?!?』

『いやいやいや、マジでアニメかよwww』


 奇怪な姿をしているゲームやアニメ等で魔物と呼ばれるような存在たちが疾走してくるその先、腕を組んでニヤリと笑みを浮かべた凛音が頷いてみせれば、その横を黒い影が駆け抜けていく。

 その黒い影――レイネの斜め上空から追いかけるように映された映像が前方を映せば、レイネに対して襲いかかろうとする魔物たちの姿があった。しかし、メイド服を着たレイネは涼しい表情を浮かべたまま眼前の魔物を殴り飛ばし、飛びかかる狼のような魔物を蹴りつけ、その反動で飛び上がったまま両手を突き出し、幾何学的な模様を中空へと描き――中心部に生み出されていた黒い光を解き放った。


『魔法!!』

『つっっっっよwww』

『黒いビームww』

『オーバーキルですやんw』

『着地からの一礼が美しいw』

『いや、マジでどうやって撮ってんのよ、これ……!? アニメだよな!?』


 魔物を一掃し、凛音へと一礼するレイネへと歩み寄ってきた黒いドレスを身に纏った凛音の後ろ姿が映る。

 するとカメラがぐるりと凛音の斜め前へと回り込むように移動し、凛音の斜め後方から迫っていた一匹の狼型の魔物を映した。


 凛音の顔半分ほどをアップに収めていたカメラが凛音があげた手を映し出し、指をパチンと鳴らすような素振りを映したかと思えば、狼型の魔物の周囲に幾つもの赤黒い幾何学模様――魔法陣が生み出され、そこから同色の赤黒い槍が飛び出し、魔物を蜂の巣よろしく貫き、魔物を消し去った。


 ぐるりとカメラが回るかのように場面が再び切り替われば、そこには洞窟の奥から大量に押し寄せる魔物たちが映り、そんな魔物たちを少し背の高い崖上から眺める凛音とレイネの姿がある。


 凛音が鼻で笑うような表情を浮かべ、足のつま先を地面へと叩きつける。

 すると次の瞬間、押し寄せていた魔物の群れ全てを覆うように大地に赤黒い光を放つ魔法陣と思しき光が描かれた。

 光がまるで滲むようにじわじわと広がり、刹那、魔法陣の光と同じような色合いの赤黒い光の巨大な柱が立ち上り、魔物の群れを跡形もなく消し去った。


『これは魔王ww』

『さすがでございます、陛下w』

『溢れ出る魔王感w』

『戯れにもならん、とか言いそうw』

『だからどうやってこんなの撮影してんだよ!?!?』

『同業っぽい輩がさっきから叫び続けてて草』


 コメント欄は凄まじい勢いで流れており、常人では目で追えない程の速度だ。同時に、配信上だけではなく、SNSや掲示板なども含めてインターネット上での反響は凄まじい事になっていた。

 あまりにもクオリティの高いアニメーション映像よろしく編集されたその動画クオリティをSNSで叫ぶ者も多く、同時視聴者数はすでに35万人を超えている。

 ちなみにコメント欄にはすでに固定コメントにて『このオープニングアニメは別途見返せるように投稿しておきます』と書かれており、途中から来た視聴者たちにも配慮がされていて、それを喜ぶ視聴者も多かったりもするのだが、それはさて置き。


『というかこの歌誰の曲??』

『どう考えてもプロの犯行』

『アニメ界の流行りの歌手より透明感あって好き』

『アニメ風ならそろそろ歌の題名とか作詞作曲とか出るやろ!』

『ここまでアニメリスペクトしたオープニング作ってくれてるんなら、出てくるはずw』

『きた』

『あっ』

『え』

『は????』

『マ??』

『作詞作曲陛下とかガチ??』

『歌も陛下やんww』

『演奏にひっそりメイド隊って書いてあるの草なんだが』

『メイド……隊? え、レイネさん以外におるん??』

『エフィール・ルオネット〆:ちょっと待って?? ウチのも作ってくれない??』

『エフィおって草』

『ジェムプロはフルアニメーションで異世界物語の時作ったでしょw』

『水無月サツキ:じゃあウチにお願いしますお願いします!』

『クロクロのトップおるやんけwwww』

『草草草』

『配信者の多いインターネッツですねww』

『この数分で情報量多すぎるwww』


 画面下部に表示されている、曲紹介。

 たった数秒のそれだったというのに、その瞬間にありとあらゆるコメントが投げられ、コメントした視聴者が言う通り、妙に情報量の多いやり取りが行われていた。


 そんな事を知る由もなく、場面は移り変わり、魔王城の玉座に腰掛けて足を組み、肘置きに肘をつきながら、その折り曲げた肘から伸びる細い手を緩く握って頭を乗せた凛音と、その左右にレイネとロココが映ったところで、カメラが離れていく。


 凛音らからカメラが離れていくその最中、数十人というメイドが赤絨毯の左右に並び、僅かに腰を曲げて頭を下げている姿が映し出され、そして画面は暗くフェードアウトしていき、再びヴェルチェラ・メリシスの配信チャンネルのロゴが映し出された。


『メイド隊おったあああぁぁぁ!』

『あれ本当にいるんかな?』

『ちょ、マジでどうなってんの……?』

『ヒントを、ヒントだけでもください陛下……!w』

『画面の前のワイ、あまりの情報量に無事口開きっぱなし』

『案ずるな、俺もだ』


 拍手の絵文字やコメントが大量に流れゆく中、ヴェルチェラ・メリシスの配信チャンネルロゴがフェードアウトしていき――そしてザザザと音を奏でながらノイズが走ったかのように映像に白黒の線が走る。


 次の瞬間、機械が起動するようなブオンと音が鳴ったかと思えば、それは映った。


『え、バグじゃないよな?』

『グルった訳でもないし、演出か?』

『お、映った』

『何これ? なんか監視カメラ見てる気分なんだが』

『あ、陛下とメイドさんおった』

『え、これ魔王城じゃなくね?』

『うおっ、なんか見たことないのが3人もいる!?』

『ああぁぁぁっ! 何が始まったんだ!? 情報量が多すぎる!!!!』





 ――――こうして、後に『魔王陛下はアンタッチャブル』、『魔法という存在が初めて放送された日』と呼ばれ、多くの者が知る事になる配信は幕を開けたのであった。






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