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転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
第四章 手を伸ばした先に待つもの
117/201

【配信】いつからこれが重大発表だと錯覚ry




「――待たせたの。妾が魔界の唯一無二の王、魔王ヴェルチェラ・メリシスじゃ」


『ははー!』

『待ってた!』

『ここ数日忙しかったんでしょ? 大丈夫なん?』

『ゆっくり休め魔王』


 魔王城、謁見の間……というか、『謁見の間スタジオ』とでも言うべきその場所。

 変わらず玉座に座って足を組み、頬杖をつく形でカメラ目線。

 そうして挨拶を終え、今度は眼の前にふよふよと浮いたタブレット端末に流れるコメントの数々を目にして、「そういえば今週は配信頻度が少なかったんだった」と今更ながらに思い出した。


 というのも、今週は魔道具の改良実験と材料集めに勤しんでいたからね。


 神々の上位存在と名乗った、不思議な少年神――ルオとその従者。

 彼らが置いていった、異世界のダンジョンに繋がるという〝転移門〟。

 私とレイネはその門を使って異世界へと赴き、今生になって初めて魔物を倒して回ったりもした。


 その遠征の様子を配信してもいいと言われていたけれど……うん、さすがにあれを配信したら色々と説明がつかなくなるので撮影はしていないよ。


 ……それにしたって電波が届いていたあたり、超常の存在はなんでもあり、というか。

 

「うむ、この数日は少々バタバタしておっての。なかなか配信する時間が取れなかったんじゃが、そちらも一段落したのでな。その報告も兼ねて配信でもしようと思っての」


『あんま無理せんといて』

『個人勢なんだし、って会社になってるんだし企業勢か?』

『企業に所属するどころか企業を起ち上げたからなw』

『どこへゆく魔王、でSNSトレンド載ったからな、陛下w』


「所属も何も起ち上げた張本人じゃからな、妾。個人勢だとか企業勢だとかという分け方じゃと、まあ企業勢になるんじゃろうが。というかお主ら! トレンドのタグで妙なストーリー作るのやめい!」


『草』

『トレンドが魔王軍、汚職、辞任、パーティーで染まったのは爆笑だったわw』

『勇者パーティーが汚職で辞任、魔王軍大歓喜みたいに言われたアレかw』

『あれはマジで噴いた』


 無料で誰でも気軽に使えるSNS、モノロジー。

 あのSNSで最も多く呟かれた単語が画面の端でトレンドとして並ぶような仕様になっているのだけれど、時事ネタで政治家の裏金騒動がどうとかっていうトレンドが上がったんだよ。

 その時のトレンドにウチの会社――魔王軍の名前も出ていたのだけれど、その単語をひっつけて一つのストーリーみたいにするユーザーが多くて、そんなネタが実際にバズっていたんだよね……。


 コメントに書かれたようなものから、魔王軍で汚職が発覚して四天王が辞任、勇者パーティーにインタビューみたいなのとかもあって、有名な小説家がプロローグみたいなのモノロジーで投稿したりでお祭り騒ぎになってたし。


 それを見た時、レイネでさえ「ぷ……っ、ん、んんっ! ……不覚です」って堪えきれなかった感あったし。

 ああいうの、たまに破壊力高いのホントやめてほしい。


「まったく、想像力が逞しいと言うべきかもしれんが……どうなっておるんじゃ、この世界の人間どもは」


『へへっ、照れるぜ』

『待ってください。それは日本人の特色です、魔王さん。欧米では一般的ではないです』

『なんかどう見ても翻訳ソフトっぽいコメがあるんだがw』

『お? 日本の妄想力は世界一だぞ? やんのか?』

『なんだァ? ヘンタイ国家ナメてんじゃねぇぞォ……!?』

『怒る方向が斜め下過ぎて草』


「いや、ほんそれじゃろ。おかしさを誇ろうとするでない、愚か者共め。というより、わざわざ翻訳ソフトを使ってコメントしてくれておるのじゃから、歓迎してやらぬか」


 私の配信、魔道具を使った技術の関係で海外企業みたいなところからも色々とオファーが流れ始めたものだから、日本語のみ書き込み可にしてるんだよね。


 ちなみにこのフィルター機能外すと、今以上にコメントが読めなくなる。

 なんたって今日も今日とて同時視聴者数、二桁万人オーバーだからね……。

 チャンネル登録者数もあと少しで200万人いっちゃうし。


 Vtuberでチャンネル登録者200万人っていうのは、凄まじい数だと思う。

 ただ、私の場合はその数字にあまり胸を張って誇れるとは言えなかったりする。

 魔道具技術とかを使った結果ここまで増えただけに過ぎないし、ユズ姉さんのいる会社――ジェムプロの配信者であるエフィ達のように、個人のキャラクターやトーク技術、面白さなんかで人数を集められているそれとはあまりにも異質だからね。


 もちろん、それも含めて話題性の一つであると言えるのだろうけど。

 Vtuberとして大成した、とは言えないんだよね。


 もちろん、だからといって気後れするとか、卑屈になったりする事もないけど。

 技術は技術、力は力だからね。


 妾、魔王ぞ?

 配下の成果や技術で讃えられるなんて前世から慣れっこぞ?


「まあ、ともあれ本日は少しバブルを割りながら魔王軍の進捗の報告。あと、それとは別にサムネにも書いてある通り『重大発表』があるのでな。ゆるりと楽しむが良い」


『進捗助かる』

『あの機材を個人勢にも……! なにとぞ……!』

『推しの個人勢のために視聴者推薦枠とかどうか……!』

『推薦枠とかあっても大手に勝てないだろw』


 まあ、やっぱりレンタル開始に関する話とかになるよね。

 気になる企業とか個人勢もかなり多いだろうし。


 これはユズ姉さんから聞いた話なんだけれど、私の配信の時間が分かるとジェムプロのメンバーはもちろん、それどころか箱勢、個人勢含めてVtuberの配信がほぼなくなるらしい。

 もちろん、前もってスケジュールを発表しているVtuberなんかはそうはいかないみたいだけど、そういうVtuberの人達も堂々と同時視聴していたりもするんだってさ。


 ともあれ、それだけ最新情報に耳を傾けるというか、注目されているのは事実。

 なので私も情報は少しずつでも発信していくつもりだ。


 そんな事を考えながらバブルをチェック。

 ふーむ、やっぱり話題はコレかぁ。


「ふむ、やはり機材レンタルの件を知りたいというような声が多いようじゃな。お主らの気持ちも分かるが、しかし妾も会社――ビジネスとしてやる以上は色々と考えねばならんと思うておる」


『それはそう』

『あー……、まあ順当』

『宣伝効果ないんじゃ意味がないしなあ』

『ってなると、個人勢がレンタルできるようになるのはまだまだ先になりそう』


「という訳で、個人勢枠、企業枠で取り扱い在庫を分けて対応しようと思っておる」


『ふぁっ!?!?』

『えっ?』

『マジ!?』

『なんだって!?』


 いや、コメントの速さで視聴者のテンションがよく分かるよ。

 ビジネスだからという話をしたらコメントも明らかに失速したけど、その後はまるで鉄砲水でも流れてきたかのように濁流となってコメントが流れだした。


「くくくっ、なんじゃ、お主ら。何を勘違いしておる。宣伝なんぞ妾が請け負っておる。さらにすでにジェムプロ、クロクロにも貸与しておるのじゃぞ? 今更改めて慌てて宣伝する必要などなかろうよ。そも、レンタルという形である以上、貸し出し続けてさえいるのなら相手が個人勢であろうが企業勢であろうが、妾にとってはなんら変わらんからの」


『それはそうw』

『ぐぬぬ、これは……!w』

『こーれハメられましたわw』

『陛下、おそろしい子……ッ!』


「新技術の撮影用機器については、すでに増産体制の構築に向けて動いておる。現状は妾もプロモーションを兼ねて大手の箱にしか貸与はしておらんかったが、中堅企業や成長中の少人数企業にも今週から順次レンタルの間口を広げていくつもりじゃ」


『さらっと重大発表きたあああ!』

『マジかあああぁぁぁ!』

『ジェムプロやクロクロで参加できなかった子も見たい!』

『いやいや、対応はっやw いきなり増産とか、バックにどんなスポンサーいるんよw』


 バックにいるも何も、配信でたまに出てきているレイネがバックだからねぇ……。

 まあレイネの後ろというより、むしろ下にいるのがこの国の旧華族家という、なんともアレな状況ではあるけど。


「もちろん、ジェムプロ、クロクロのような大手には引き続き優先的に貸与はするつもりじゃ。先程は宣伝もいらぬと言うたが、まあちょっとしたお仕事の話も進んでおってな。お互いに条件も合うからの。ま、詳細は語らんが」


『生殺し!?』

『ちょ、ちょっとだけでもお漏らししてくれてもええんやで?』

『気になるうう』

『前回の配信に参加できなかったジェムプロVに推しがいるワイ大歓喜』


「で、じゃ。量産できるまでにはさすがにまだ時間がかかるのでな。とりあえず、個人勢向けの在庫数はかなり限られた状態で開始してしまう事になるであろう。その辺りについては予め了承しておいてほしい」


『しゃーない』

『どうしたってそうなるよなぁ』

『それでも個人勢にも貸与してくれる辺り、もはや神』

『魔王ならぬ魔神……? 世界ほろびそう』


 この辺りは、ぶっちゃけ嘘なんだけどね。

 実際、すでにレイネが用意した魔道人形を用いて制作の下準備は進んでいるし、それが落ち着けば量産は可能、っていうのが現実的なところ。

 それでも時間をかけると判断したのは、レイネが言った通り解析やら分析やらの対策のためだ。


 企業勢ならともかく、個人勢を対象にするとなればどんな人間が応募してくるか分からない。レイネの魔法なら追跡して本人を洗い出すなんて事もできなくはないけど、そんな事を毎回やっていたらキリがない。

 なので、対策としてプロテクト系の魔法も仕込みつつ、おかしな干渉を感知したら自壊させるようなトラップも仕込む事にした。


 魔力や魔法をこの世界に広めるとしても、コントロールできない第三者機関を通して広めさせるつもりはないんだよね、私は。


「ま、簡単じゃが案内は以上じゃな。スタジオについてはホームページで更新する予定じゃから、概要欄から勝手に飛ぶがよい」


『スタジオに対する紹介の雑さよw』

『まあ、スタジオはVtuber本人しか興味ないだろうしなぁ』

『一般視聴者だけど、スタジオの地図見て震えてるw なぁにこれぇ』

『規模でっっっっっかw』


 レンタルスタジオ専用のホームページなんだけど、そっちにはすでに見取り図とスタジオイメージなんかが公開されていたりする。


 接続人数が多くてもサーバーが落ちないように、それなりに高いサーバーをレンタルしたって話だけど……読み込みがどう見ても遅くなってるね。

 落ちないだけマシと割り切ってもらおう。


「――さて、そろそろ重大発表といこうかの」


『えっ』

『ここまでが重大発表なのでは?w』

『撮影機器のレンタル進捗じゃないんかいw』

『情報量多くて重大発表のハードル上がっとるぞ??』


 困惑する視聴者の反応を見てほくそ笑みつつ、ちらっと視線をカメラから外す。

 その先で、2本の耳がぴるぴると震えているのが見て取れて、ついつい笑ってしまう。





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