幕間 小話:JKによる魔法の有用性とは
本編に入り切らないお話を幕間として放出。
ちょっと短いです。
――魔法。
それは人間が持たない力、不可思議な現象。
海外だと映画になったりもするけれど、日本だと魔法と言えばゲームやアニメ、漫画なんかで馴染みのある題材で、そういう文化に詳しくなくたって知っているような代物だ。
私――相澤 由依華――も〝魔法〟って存在は知ってるよ、うん。
というか、私とトモは昔からウチの親とトモの親の影響で、アニメとかゲームとか、そういうのが結構身近にある環境で育ったからね。
おかげで結構ディープな話題にもついていける程度には詳しくなったりもしたよ。
最近じゃ、アニメや漫画がイコールしてオタクだのなんだのと揶揄されることもなくなってきたけど、ウチの親やトモの親の学生時代はそういうものだったらしい。
別に誰が何を好きになってようが関係ないんだから、いちいちそんなことをからかって何になるのか分かんないけどね。バカみたい。
まあ、陰キャだの陽キャだのっていうのと同じだよね。
本人が好きなものが違うだけ。
他人を否定することで自分を正当化したいだけって、リンネも配信で言ってたし。
うん、まぁそんな話はどうでもいいとして。
そんな私が。
そして小さい頃から一緒に遊んでいて、〝ごっこ遊び〟で魔法ごっこなんてやっていたトモと一緒になって、まさか本物の魔法を使えるようになるなんて、思いもしなかったよ……。
「――……ヤバ、にやにやしちゃう」
「ほんと」
「おかげでこの休み中、寝不足よ……」
リンネから魔法を教わったその翌々日。
私とトモ、それにこのみんの3人でトモの家に集まった私たちは、改めてお互いの魔法の練習結果を見せ合ったあと、ジュースとお菓子を机の上に置いてくっちゃべっていた。
「はあー……。それにしても、リンネヤバすぎ」
「ほんそれ。アタシら連れて瞬間移動? 転移魔法、だっけ? そんなことまでできちゃうんだもん。あれどうやってんだろーね」
「想像もつかないわね……。私たちじゃ、目の前にあるものにすっごく集中して、やっと少し操るっていうのが限界なのに。次元が違うというか」
「それなー……」
「しかもリンネが夏なのに涼しい顔してるのも、冬なのに全然平気そうな顔してたのだって魔法のおかげなんでしょ? めっっっっっちゃ羨ましい!」
うん、ほんとそれ。
リンネがたまに「北欧の血が」って言ってたりしてたのが、まさか魔法だったなんて。
「まー、リンネが普通じゃないってことは気付いてたけどさー」
「なにそれ、どゆこと?」
「ほら、東條のせいでウチが拉致られたじゃん? あの時にね」
バレンタインデーだったっけ。
まだ半年も経ってないけど、あの時はホントに焦った。
リンネが助けたなんて話を聞いてはいたけど、さすがに私は魔法がどうのなんてあると思ってもみなかったよ。
てっきり、武術の達人というか、天才というか、そういうもんかと思ってたし。
「で、トモは何を見たの? というか、まさかリンネが魔法を使えるって知ってたとか?」
「さすがに魔法を使えるとは思わなかったけど、なんか不思議な力を持ってるっていうのはさすがに察したよね。実はあの時さ、リンネが人間じゃ有り得ないようなパンチしたの見たんだよね」
「有り得ないようなパンチ? 人が吹っ飛ぶとか?」
思わず頭の中に出てきた、パンが頭になってるヒーローの国民的アニメ。
東條にそれが当たったら吹っ飛んでお星さまになる光景が頭の中に浮かんで、思わず噴き出しそうになった。
「んー、当たってたら吹っ飛んでたと思うけど、それ以前にぐっちゃぐちゃになってたかも」
「え゛、なにそれこわ」
「なんかもう、打ち上げ花火を間近で見た時みたいに、ドンッて衝撃が伝わってきたし」
「おぉ……」
「私が見た、蹴り上げからの踏みつけで床に亀裂が走ったアレと似たようなもの、かしらね」
「それもマジで見てみたい。まだ当時のまま教室残ってるんかな?」
「旧校舎っしょ? 夏休み中に完全に解体するって話じゃなかったっけ?」
「あー……、間に合わなかったかぁ……。っていうかさー、二人とも、リンネの活躍見れたんだよねー? いいなーって言うのはちょっとアレだけど、やっぱ羨ましいなー」
私だけ見れなかったってことだもんね。
いや、危険な目に遭わなくて良かったんだし、不謹慎だっていうのも分かるけどさ。
でも、私だけ見てないんだもん。
そんな風に思っていたら、トモが苦笑した。
「まーまー。見せてって言えば見せてくれると思うよ、もっと凄いの」
「そうかもだけどさー。でも、実際に戦ってるシーンなんてそうそう拝めないっしょ?」
「それはそうかもしれないわね……。でも、話は戻るけれど、トモ。リンネのパンチは東條に当たらなかったの?」
「ん? うん。ほら、一昨日のあの島で、メイドさんいたじゃん? あの人がいきなり現れて受け止めたんだよ。その衝撃だけで東條は吹っ飛んでたけど」
「……衝撃だけで人が吹っ飛ぶ、ね。メイドの人も魔法を使える、ということなのでしょうね……。ともかく、確かにそんなものが人間に直接ぶつかったら、その場で衝撃が行き場をなくして身体が破裂してもおかしくないわね」
「ひぇ、唐突なスプラッタ!?」
やめてよ、私そういうの苦手なんだから。
死ぬ運命から運良く逃れられたと思ったら、次々グロい死に方で死んじゃう映画とか海外にあるんだけど、ああいうグロい系のはホント無理だから。
「それにしても、トモもよく無事だったね。そんな衝撃があったんならトモも吹っ飛ぶじゃん」
「ウチは何もなかったんだよね。衝撃音だけだったし」
「……衝撃に指向性を持たせたのか、あるいは結界か何かでトモを守ったのかもしれないわね」
「なるほど、それだよ! 結界だよ、このみん! ほら、リンネの花粉症対策!」
「……ッ! あぁ、そうだったわ!」
「結界! 次の春までに覚えないと……!」
魔法っていう便利な力を手に入れたんだもの。
これで花粉症なんかに脅えなくて済むんだ……!
「――……平和な使い方だなぁ」
後日、リンネに魔法をまた教わる機会があって、私たちが花粉症対策と汗対策、オシャレ対策で結界、魔力障壁とやらが知りたいと伝えると、リンネになんだかほっこりしたものを見るような目で見られた私たちだった。




