可愛いは守りたいです
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その日、学園に行くと何やら事件があったらしく人だかりができていた。
「うっかりしてて、ごめんなさい」
「そんな謝まりかたで許される域を越えています!貴女は私にココアをかけたのよ!」
いつも絡んでくる公爵令嬢がどうやらココアをかけられて怒っているらしい。
見れば、彼女の手が赤くなっている。
あれ、かなりの熱々をかけられたのだろう。
周りの人達は何故かそんなに怒らなくても……みたいな空気を出している。
私からしたら慰謝料とか言ってないし、ちゃんと謝れって言ってるだけじゃん?
あんな悪者みたいに言われたら公爵令嬢が可哀想だ。
「つまずいちゃっただけだし、そんな風に怒んなくっても……」
うわ、言い訳してさらに悪いと思ってないよあの女。
「何を騒いでいる!」
そこに現れたのは王子と鬼エルフ。
さっきの声は鬼エルフだ。
「王子殿下にアークライト様のお手を煩わせるような事では……」
気まずそうにする公爵令嬢に王子は公爵令嬢が悪いのだと思ったようで公爵令嬢に向かって言った。
「ならば、この場は俺の顔に免じておさめてもらって良いか?」
「勿論でございます」
王子がこの場をおさめたせいでギャラリーが散っていく。
私は公爵令嬢に近寄り火傷している手を触らないように腕を掴んだ。
「な、何?」
「動かないで」
私は魔法で火傷を冷やして汚れてしまった制服を綺麗にしてあげた。
「………なんで?」
「え?う~ん。公爵令嬢として立派だと思ったから?」
公爵令嬢は困ったように笑った。
可愛いじゃんか公爵令嬢。
興味がなくてよく見て無かったけど、綺麗な赤毛を毛先だけ縦ロールにしている彼女の瞳も燃えるような赤い瞳で笑うと幼く見えた。
「じゃあ、ちょっと言ってくる」
「え?何をですの?」
「えっ?王子と鬼エルフにどっちが悪いか言ってこないと気がすまないんだけど!何なのあいつら!周りの空気に流されて本当に悪い方を庇うって!飛び蹴りしたぐらいじゃ許せない!」
公爵令嬢は慌てて私に抱きついて私を捕まえた。
「や、止めて下さい!私が大事にしてしまったのが悪いんですから王子殿下に飛び蹴りなんて!本気でなさらないでしょ?」
本気で飛び蹴りしようと思っていた。
だってムカつく。
あの女、自分が悪いと思ってなかったんだから。
熱々のココアかけといて悪いと思わない女なんて悪くでしかない。
「公爵令嬢ちゃん!」
「エリザベート・ラグズ・ビーですわ!」
「エリザベートちゃん!私は王子と鬼エルフの友達としてあいつらにあいつらがいかに愚かな判断をしたかを教えてやる義務がある!だから、止めてくれるな!」
私はそれだけ言うと、転移魔法で王子の背後に移動。
王子の背中に飛び蹴りをした。
ぶっ飛ぶ王子と唖然とする鬼エルフ。
私は指をポキポキ鳴らした。
痛そうに起き上がる王子は私がやったと解るとジト目で言った。
「何しやがる」
「飛び蹴り」
私は二人を蔑んだ目で見た。
「ミロードさん!」
そこに慌てたように走って来たのはエリザベートちゃんだった。
エリザベートちゃん足早い。
「ひっ!本気で飛び蹴りしたとか言わないですわよね?」
エリザベートちゃんが床に座ったままの王子を見て息を飲んで私に聞いてきた。
私はとりあえずエリザベートちゃんにピースして見せたがエリザベートちゃんは真っ青になって私の所まで走ってきて私の頭を掴むと頭を下げさせた。
「本当に申し訳ございません。ミロードさんは私のためにこんな事をしてしまったのです!罰は私に何なりと!」
ああ、エリザベートちゃんスッゴクいい人だ。
「小鳥、どういう事ですか?」
鬼エルフが困ったように私に話しかけてきた。
「王子と鬼エルフの見る目の無さにガッカリした」
私は怒りそのままにそう言った。
二人は顔を見合わせあった。
「アーク、部屋に戻るぞ!小鳥どういう事か、ちゃんと説明をしろ!」
王子は軽々と立ち上がり鬼エルフを連れて先を歩いて行ってしまった。
私はエリザベートちゃんの手を掴むとその後を追いかけた。
王子の部屋につくと、私は見たままの話をした。
「エリザベートちゃん、あってる?」
「ま、まあ、おおまか、そうですわね」
私がした説明に何故か恥ずかしそうなエリザベートちゃんが可愛い。
仲良くなれないかな?
しっかりもので可愛いエリザベートちゃんと友達もいいな~。
「「………」」
「王子に鬼エルフは火傷しているエリザベートちゃんに罪を擦り付けてそれでも国の中心を担う重要人物なんですか?」
「ミロードさん!言い過ぎです!」
エリザベートちゃんが慌てて私の口をふさいだ。
王子と鬼エルフはエリザベートちゃんに近寄ると頭を下げた。
「申し訳ございません」
「すまなかった」
私は満足だがエリザベートちゃんは恐縮してしまっている。
「ぶつかった子ってエリザベートちゃんの知り合い?」
「知り合いっていうか、最近男爵家に引き取られた子らしくて貴族としてのマナーがなってないと社交界で有名なんですの」
男爵令嬢にしては態度が壊滅的だった。
庶民なら貴族に逆らおうなんて思いもしないのに、男爵ていどであの態度とは。
彼女は長生き出来なそうだ。
「社交界の事なら王子と鬼エルフの方が詳しい?え?って痛たたたたたたたたた~離せ~」
私が声をかけると鬼エルフに安定のアイアンクローをされた。
「さっきから、誰が鬼エルフですって」
「い、今女子にアイアンクローをかましてる鬼エルフ様がです!って力強い!」
「教育的指導です。耐えなさい」
「理不尽!」
エリザベートちゃんに助けを求めようとしたら思いっきりひきつった顔をしていた。
「ほら!鬼エルフが女子に暴力をふるうダメ人間だってバレちゃいますよ」
「意図も簡単に逃げられるくせに逃げないのは、僕の性格が悪いと彼女に印象付けるためですか?」
作戦がバレたので転移魔法でエリザベートちゃんの後ろに逃げた。
「ラグズ・ビー令嬢。そこに居る小鳥という女はその年にして、魔法使いのトップが認める魔法使いですから普通だと思わない方が良い」
王子がニヤニヤしながらエリザベートちゃんに余計な事を吹き込んでいる。
「私は魔法使いになんないってば!」
「お前みたいな化け物を国で管理しないで誰が管理するんだ?」
「化け物はお母さんだけ!」
「小鳥は霧子に一撃喰らわせられるんだよな?」
「たまにね!」
「俺は霧子が一撃喰らってるのを見たことがない!って事はお前も化け物だろ?」
う、嘘だ!
私は普通の人間だ!
「え、エリザベートちゃん!王子と鬼エルフが苛めるよ~女の子に向かって化け物呼ばわりなんて酷いよ~」
私は泣き真似をしてエリザベートちゃんに抱きついた。
「お二人とも酷いですわ!ミロードさんが可哀想ではありませんか!」
エリザベートちゃんが私をかばってくれ、王子も鬼エルフも慌ててエリザベートちゃんに謝っていた。
その日、私はエリザベートちゃんと仲良くなることに成功した。
そのかわり、授業をサボったとエリザベートちゃん共々ルッカ先生に説教されたのは言うまでもない。
喉が痛くて死にます(+_+)




