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3 里帰り

 王座の奪還──。

 できるかできないかで言えば、余裕でできるだろう。

 現王のラッジーンは魔族よりも強いなんてことはまず考えられないので、その気になれば私が鍛えたクラリス達だけでも勝てる可能性はある。

 問題はラッジーンの側についていると思われる、姉さんをどう無力化するか……だ。


 たぶん周囲をまったく巻き込まずに……というのは、難しいと思う。

 逆に言えば、姉さんさえ制圧することができれば、ラッジーンから王座を奪うことはそんなに難しくない。


「私なら王都を1人で陥落させることは可能ですよ。

 ただ、私が全部やってしまっては、誰もクラリスを王とは認めないでしょう。

 だから直接王城へ乗り込んで、ラッジーンを倒すところはクラリス自身にしてもらいますが……。

 私はそのサポートをしましょう。

 クラリス、その覚悟はありますか?」


「……やるわ!」


 クラリスは少し迷った末に答えた。

 うむ、決意に満ちた表情で、頼もしい限りだ。


「待て、待て待てっ!!

 軍は!?

 我々はどうするのだ!?」


 ハイラント公爵が慌てた声を上げた。

 まあ、蚊帳の外へと置かれているからね。


「正直言って邪魔なので、必要ありませんね。


「なっ!?」

 

「少人数なら『転移』や『飛行』の魔法で、簡単に王都まで移動できますし、身を隠して城に侵入するのも楽ですから。

 軍隊だとそうはいきません」


 普通、数千人規模の軍隊を使うのなら、徒歩か馬などで移動する必要がある。

 仮にサンバートルから王都まで軍隊を動かしたとしたら、移動だけで疲弊してしまって(いくさ)にならない可能性もあるし、物資も無駄に消費してしまうだろう。

 その上で、想定外の戦闘だって有り得る。


 私達もクラサンドまでの旅の間は2ヵ月近くかかったけど、その間に何度も野盗や魔物に襲われた。

 まあ、軍隊を襲う連中は少ないと思うが、魔物なら分からないし。

 いずれにしても軍隊は動かすだけで金を食うし、少なからず死者も出るので、動かさずに済むのならば、その方がいい。


 いや、今の私では「転移魔法」で1度に運べるのは数百人が限界だから、時間をかけて何往復するって手もあるんだけど、それでも私達少数精鋭が動いた方が、圧倒的にコストが安くて犠牲が少ないのは間違いないんだよね……。


「あなた達は、国を取り戻した後の政策の考えたらどうでしょう?

 取りあえず奴隷制度は廃止されている現状で再び元に戻すと、大混乱を引き起こすと思うので、犯罪奴隷以外は認めない方向にした方がいいですね。

 折角、元奴隷達が正式な国民になったのですから、将来的に彼らが収める税金で税収増が期待できますが、現状では彼らの生活基盤は安定していません。

 なのでそれを改善しなければ、税収には繋がらないということを肝に銘じて法案を策定してください」


「お……おお……?」


 私による早口の提案に押されて、公爵は反論する言葉を失っているようだった。

 魔族の私に、政治が分かるとは思っていなかったのか、面を食らっている。

 よし、勝ったな。


 ともかく政策のことは公爵やセリスに任せて、我々は出発の準備を進め──あ、私はその前にやることがあるな。

 ママンのところへ行って、今回の件に関わっていないのか確認してこよう。

 それに親を失ったクラリスや、親子喧嘩をしていたいセリスを見て、私も久しぶりに親の顔を見たくなったよ……。




 そんな訳で、旅立ってから初の帰郷だ。

 今の私ならば、「転移」でひとっ飛びだよ。


「おお、なんだ懐かしい空気!」


 密林の中だからなのか、空気が濃いというか……。

 ただ、結構北の土地なので、少し肌寒く感じる。


「お、何かくる」


 無数の気配が、こちらへと向かってくるのを感じた。

 まあ、気配を隠蔽していないから、すぐに察知はされると思っていたけど、思っていたよりも反応が早いな。

 中々優秀じゃないか。


 そして姿を現したのは、無数の赤いキツネ達だった。

 その数、20匹近く。

 おお、ここはキ●ネ村か?

 北きつ●牧場か?

 そう思えるような賑わいだ。


 随分と増えたなぁ、我が弟妹(ていまい)よ。

 それとも甥や姪だろうか?

 シスと比べても幼さを感じて、なんだか可愛い。


『ねえ、ママンいる?

 あなた達の中で1番長生きしているの』


『なんだお前は?

 怪しい奴め!』


 私は「念話」で話しかけてみたが、弟妹達は警戒しているようだった。

 今の私の姿は人型だけど、彼らにとっては初めて見る生き物なのかな?

 ということは、ママンもまだ人型には至っていないのか。

 単純な加齢だけでも、駄目なんだろうな……。


『私はあなた達のお姉ちゃんですよー。

 もしくは伯母?』


『!?』

 

 私がキツネの姿に戻ると、みんなは驚いたようだ。


『なんだ……?

 「幻術」じゃない……?』


『肉体自体が変形した……?』


 と、困惑している。


『おかしな奴!!

 お前みたいなのを、母には会わせられない!!』


『お祖母(ばあ)ちゃんを守れ!』


 そして、「ビャン、ビャン」とキツネ特有のダミ声で吠えだした。


 うむぅ……更に警戒させる結果になってしまったか。

 最初からキツネの姿できた方が、良かったのかもなぁ……。

 明日は定休日です。明後日はなるべく間に合わせたい……。

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