7 再会と出会い
私が「転移」で運んできた隊商に対して、その護衛をしていた冒険者達が抗議をしているようだ。
どうやら報酬金額を減らされたらしい。
それを不満に感じて抗議している者達を、キエルは宥めようとしている。
彼女は私がサンバートルの町に初めて行った時、最初に知り合った人間の女の子だ。
冒険者になりたいと言っていたけど、ちゃんと夢を叶えたんだな。
ただ、苦労はしているようだねぇ……。
それにしても、そばかすが消えて美人になったなぁ。
しかも10年前の当時ですら、年齢にしては大きかった胸が、更に大きくなっている。
私が異世界にきてから見た中では、間違いなくナンバーワンだろう。
あれで剣とか振れるの?
「しかし契約では、護衛した日数で決めることになっている。
護衛する期間が短くなったのだから、これで適性額だが?」
ああ……なるほど。
本来なら予め決められていた日当×旅にかかった日数──2ヶ月なら2ヶ月分の金額を貰えるはずだったのに、私の「転移」で大幅に期間を短縮させてしまったので、利益が激減してしまったということか。
でも、契約で決められていたのなら、それは仕方がないなぁ。
おそらく日割りで報酬が決められていたのも、何らかの理由で日程が短くなったり、能力の低い、あるいは素行の悪い冒険者を途中で解雇できるようにしたりする為だったのだろうし。
実際──、
「大体、あの盗賊の襲撃で、我々は馬車を駄目にされ、あれ以上旅ができなくなっていた。
加勢が無ければ、命があったのかすら分からない。
君達の護衛としての働きにこそ、我々は不満を持っているんだよ。
むしろ損害を賠償したいくらいだよ。
それでも契約は契約だし、命懸けで戦ってくれたことには感謝しているから、報酬を払うんだ。
……まだ文句はあるかい」
「ぐ……!!」
これは隊商の人の方が正しいかな?
ここで冒険者達を切り捨てるような態度を取れば、次の機会には協力を得られなくなるから、筋はちゃんと通しているように見えるし。
確かに盗賊団の規模が大きくて、想定外の事態ではあったのだろうけれど、それを理由に冒険者達が無理を通すことは正しくない。
本来なら任務失敗で、報酬は何も得られなかった状況だし、ナユタとレイチェルが加勢しただけで、あっさりと戦況がひっくり返ったのだから、冒険者達の実力不足も明かだ。
結局冒険者側も図星を指されたのか、それ以上反論をすることはなく、負けを認めた形になった。
ただ、今回は私の所為というのもあるし、キエルには恩もあるから、助け船を出そうか。
冒険者達の敵意が、私の方に向いてもつまらないし。
『やあ……災難でしたね』
「誰の所為だと……!」
「リリスさん!」
私が「念話」で声をかけると、1人が噛みついてきそうな気配を見せる。
ローブのフードを目深に被っているのでよく分からないけど、身長や声から察するにまだ幼さが残る少女といったところか。
それが故に血気盛んというか、メ●ガキっぽいというか……。
そんな彼女を、黒髪の……20歳には届いていないと思われる女性が止める。
うお、凄いな、この人。
聖職者っぽい服装の所為で目立たなかったけど、よく見ればキエルに匹敵するくらい胸が大きい。
キエルとパーティーを組んでいるのなら、巨乳コンビとして有名なのでは……。
あとキエルは「念話」に心当たりがあるのか、なにかに気付いたような顔をしている。
『今回は私達が横入りしたようなものだから、損失は補填しますよ。
キエルさんには、借りもありますし』
と、私は金貨10枚を出して、キエルに渡す。
以前、情報料として彼女に渡そうとしたのに、受け取ってもらえなかった額だ。
「やっぱり、アイちゃん!?」
キエルもその時のことを、憶えていたようだ。
『これは仮の姿ですけどね。
今度は受け取ってくれますよね?
仲間を食べさせていくには必要でしょう?』
「わ、分かった……。
正直言って助かるかな。
他のパーティーと山分けするよ。
ありがとう」
と、キエルは頭を下げた。
他の2人は状況が飲み込めていないのか下げなかったけど、ローブの娘は飲み込めていても下げないような気がするなぁ。
今も不機嫌そうな視線を、こちらに向けている気配がある。
その後、私が渡した金貨は、各パーティーに分配された。
ただこの護衛任務には3つのパーティーが参加していたので、金貨10枚では割り切れない。
そこで2枚追加して、1パーティーに4枚行き渡るようにした。
日本円で20万円程度だから、これをパーティー人数で割ると少ないだろうけど、無いよりはマシだろう。
『それで……私はこれから元の場所に戻って、そこからクラサンドへ向かいますが、あなた達はどうしますか?
サンバートルが拠点だというのならば、ここでお別れですが……』
「いや、うち達も普段はクラサンドで活動しているよ。
途中まででも運んでくれるのなら、ありがたいかな?
なんなら、その後は道案内もできるし……。
よろしくお願いするよ」
おっけーだもの!
そんな訳で私は、冒険者達を連れて元の場所へと転移した。
まあ、サンバートルに残るパーティーもいたので、全員じゃないけどね。
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