15 秘密基地を見つけよう
おそらくルヴェリクの中に生じた少年の人格は、家族による虐待から彼女の精神を守る為に生まれたのだろう。
最悪を想定するのならば、性的な虐待とか……。
女性であることが嫌になるようなことがあったからこそ、少年としての意識が芽生えたとも考えられる。
そりゃ、お嬢様の人格が、すべての人格を統合して記憶を共有することに、否定的な訳だ……。
本人がその記憶を知れば、トラウマになってしまうだろう。
しかしだとすると……、
「あなた……このままルヴェリクさんが独り立ちしたら、どうするつもりなんですか……?
あなたの居場所も無くなりますよ?」
このままでは人格を統合することもできず、彼女の中で永遠に眠るか消滅するしかなくなるんだけど……。
「俺達の存在が必要無くなるのなら、それが1番良い。
その結果の為なら、どうなっても構わない」
覚悟が決まっているなぁ……。
結構嫌いじゃないわ、こいつ……。
ただ、全面的に信用するには、一歩足りない。
「そうですか……。
だけど組織の背後にいる魔族との関わりだけは、ルヴェリクにとっては何一つ良いことは無いと思いますよ?」
「……」
彼は答えない。
急に心を閉ざしてしまったかのようだ。
一体その魔族とどんな関係があるんだ?
何かただならぬ事情がありそうだが……。
「お前には関係ない……」
そう言い残して彼は──、
「ふぇっ……なんで外に?」
ルヴェリクの身体を手放した。
「寝ぼけていたんですね。
さあ、テントに戻りましょう」
「え……?
いや……。
私また……?」
ルヴェリクも、まだ人格が交替してしまったことを察したのだろう。
ただ、彼との会話は、彼女に話せないことも多すぎる。
今は曖昧なことしかいえない。
「色々と不安でしょうが、他の子達はあなたの味方です。
心配しなくてもいいですよ」
「そう……なんでしょうか」
私の言葉に納得しなかったのか、ルヴェリクの顔はすっきりとしない様子だった。
翌朝──。
「下流では特に問題は起きていないようです。
被災者の支援も、魔物の駆逐も滞りなく──」
各地との連絡役をしてくれたダリーの報告を受け、この麻薬災害の対策が順調であることを知る。
ダリーは身体の一部をコウモリへと変化させ、そのコウモリで連絡を取り合うことができるから便利だ。
そしてその能力で、夜の内に上流の方も調べてもらった。
「一見して人工物のような物は確認できませんでした」
「ふむ……となると、自然物に偽装しているか、そもそも拠点が別の場所にあるのか……」
だけど継続的に河へ麻薬を流さなければ、これほどまでの被害は発生しなかっただろうし、船で下流に麻薬を運んでいるのならば、何かしら施設があると考えた方が自然なんだよなぁ……。
「河には麻薬の臭いがありますから、それを辿ってみましょう」
そんな訳で、再び私が先行して河を遡上する。
キツネの姿で、水面を走るの、たーのしー!
いや、ちゃんと麻薬の臭いも追っているよ?
麻薬の臭いが徐々に濃くなっているから、まだ河に流しているとは思うんだよなぁ……。
『……ん?』
麻薬の臭いが途切れた。
引き返してみると、下流に向かって麻薬の臭いはする。
つまりこの辺から流されている……?
しかし周囲を調べて見ても、麻薬を流している施設のような物は見当たらない。
工場排水のように垂れ流しているイメージだったけど、パイプとかも見当たらないね……。
もしかして水中から?
たぶん河岸の何処かに、水中へ麻薬を流し込む穴のような物があるのだと思う。
ならば河岸で1番臭いの濃い場所を特定して……。
『ここか……!』
私は「風属性魔法」によって空気の層を身体に纏わせ、水の中へ潜ってみた。
しかしこの方法だと、臭いが分かりにくいな……。
しかも水が濁っていて、視界も悪い。
じゃあ、敵に気付かれる可能性もあるが、ここはイルカのように音波の反射で周囲の状態を把握するエコーロケーションを利用してみるか……。
勿論、私って耳は良いけど、エコーロケーションに特化した身体機能は有していないので、魔法による擬似的なものだが……。
で、結局1時間ほどかかったが、河岸の水中に洞窟の入り口が見つかった。
そこに入り込み、洞窟の奥へと泳いで進むと、空気のある広い空間へと辿り着く。
その場所には、何艘かの船らしき物がある。
『船着き場……?
でもこれは……』
この世界の一般的な帆船ではない。
見ようによっては棺のように見えるこれは、もしかして潜水艦か……?
これで麻薬を水中から下流へと、人知れず運んでいたのか……。
取りあえず一旦拠点に戻って、みんなを連れてくることにしよう。
さあ、突入の時間だ。
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