2 出会い
城の上部にある謁見の間までは、階段で行くと時間がかかりそうだった。
30階建てのビルくらいは、高さがありそうだもんなぁ……。
なので「飛行魔法」を使って近くにある窓まで飛んでいき、そこから入ることにした。
『ここでいいですか?』
「はい、いいでしゅよ」
リーザに許可を得て、窓から中へと入る。
普通は警備上の問題で、こんなところから入るのは駄目だろう。
警備の人に見つかったら、怒られるどころでは済まない。
良くて牢獄行き。
悪ければ、その場で処刑だ。
でも、そんな場所からの侵入をあっさりと許可を出してしまう辺り、リーザにはそれだけ強い権限があり、それが許される地位もあるということなのだと思う。
見た目は頼りないけど、それでも皇帝の側近であることは間違い無いのだろう。
『リーザさんは、どのようにして皇帝と出合ったのですか?』
私は謁見の間へと続く廊下を歩きながら、リーザに聞いてみた。
いくら女神のお告げを聞く能力があるとはいえ、どういう経緯があれば皇帝に重用されることになるのだろうか?
リーザは気が弱そうだから、自ら自分を売り込むような真似はしないだろうし、何かしらの切っ掛けとなる事件があったはずだけど……。
「あ~……私は村で、占いをしながら生活をしていたんでしゅが、これが結構当たると評判でして」
そりゃ、女神や精霊の声が聞けるのなら、普通の人間では知り得ないようなことも知ることができるよなぁ……。
その評判が評判を呼んで、皇帝の耳に入ったとか?
「それで私の噂を聞きつけた男に、攫われたでしゅ……」
Oh……。
この世界の人間、すぐに人を攫いすぎじゃない?
「なんでも私を教祖にして、宗教団体を作るとか言っていたでしゅね、その男……。
言葉遣いも威厳がある口調に、矯正されそうになったでしゅ……」
うわぁ……カルト教団かよ。
この世界では今のところ宗教に関わったことは無いけど、一応宗教の概念はあるんだなぁ……。
確かにリーザの能力なら、信者を集めるのも難しくないだろう。
そして国家を凌駕する勢力として、世界を席巻することも可能なはずだ。
ただ、神が実在する世界で、その権威を利用したら、天罰が下りそうだけどね……。
だからこの世界には、大きな宗教団体は無いのだと思っていた。
事実、その男の目論見も成功していないし。
「そんな攫われた私を、たまたま通りかかって助け出してくれたのが、今の皇帝陛下でしゅ。
私はその時の恩を返す為に、陛下に仕えているのでしゅよ……」
なるほど……いい話だな。
そんな偶発的な出会いなら、皇帝もリーザの能力を利用する為に助けたという訳では無いのだろうね。
ますます皇帝の人となりが気になるなぁ……。
お、大きな扉の前に着いた。
左右には扉を守る兵士の姿もある。
ここが謁見の間か。
「陛下に謁見でしゅ」
リーザが兵士に声をあけると、彼らは扉を開けた。
中に入るとそこは、15mほどの奥行きがある部屋だった。
入り口から道のように赤いカーペットが敷かれていて、その先には玉座がある。
あの玉座に座っているのが皇帝か。
……って、思っていたよりも爺さんだぞ?
それにあまり覇気を感じないし、なんだか居心地が悪そうに座っている。
え……この人が皇帝で、本当に大丈夫なの?
というか、本当に皇帝?
「……何をしているのでしゅか、宰相閣下?」
リーザが困惑したように言う。
おや……?
やっぱりこの爺さんが、皇帝ではないのか。
でも、皇帝でもないのに玉座に座るとか、不敬罪で処刑ものだよ?
「陛下がここに座っていろ……と」
皇帝の命令で?
じゃあ皇帝は何処に……?
それらしき気配は、この室内には無いけど……。
いや、気配が無いのに、この室内に1人分ほど熱量が多いような気がする。
上手く体温を周囲の室温に溶け込ませているようだけど、完全に消し切れていない。
それに……微かに感じるこの匂い──、
「捕まえたー!」
「ビャウン!?」
私は突然抱え上げられた。
私に察知されずに、ここまで接近できるって、そんな馬鹿な!?
実力的には、私と同等ということだぞ!?
私が慌てて振り返ると、そこには見覚えのある顔がある。
こ……この美女は……私!?
いや、私と似たような顔は、私と同時に生まれた姉妹なら共通している。
しかしシスやネネ姉さんとは微妙に違う。
つまり──、
『まさか、アーネ姉さん!?』
「アイちゃん、お久しぶりー。
可愛い姿をしているねぇ」
やっぱり間違い無く、行方不明になっていた我らが長女だ。
姉さんも天狐族の完全体になっていたのか。
……って、もしかして……。
『姉さんが皇帝なんですか!?』
「そうだよ~」
いや、どうしてそうなった!?
昨日はちょっとお出掛けしていました。




