12 彼女の属性
獣人や魔族に対して差別意識を持つ生徒達との間に、ちょっとしたいざこざが生じた。
貴族の子弟に囲まれていたコロロを、マオちゃんが助けたのだ。
まあ、それでこの話は終わりそうだったのだが、人の価値観なんて簡単には変わらないから、後々再燃するかもしれない。
そこへ乱入し、マオちゃん達の側に立って庇ってくれたのは、なんとあの勇者の末裔であるアカネだった。
……え?
魔族に敵愾心を持っていたんじゃないの?
それとも勇者の末裔だからこそ、誰にでも公正であり、正義を貫くという思想を持っているとか?
それならば、差別行為が禁止されているこの学園で、それを行った貴族の子弟達が彼女に責められるのも当然ではある。
「申し開きは?」
「な……何も無い。
い、いや、我々とそやつらの間には何も無かった。
無かったのだ!
そういう訳だから、我々はこれにて失礼する」
アカネに追及された生徒達は、苦しい言い訳を残し、慌ててこの場を立ち去った。
この場合、外野から言われるよりも、直接身分が上である公爵令嬢のアカネに言われたことの方が大きいのだろう。
マオちゃんは女王や魔王に影響力を持っていることは確かだけど、彼らにしてみれば他国の権力構造は馴染みが無く、実際にどれだけの権限を持っているのかが分からないのだから……。
一方で明確に身分が上のアカネならば、その権力のほどが想像しやすい。
彼女から自身を処分できる立場の人間へと、今回の件が直接伝わる可能性が高くなるから、無視はできないという訳だ。
「ありがとう……」
マオちゃんは素直に、アカネへと礼を言った。
これまでの彼女の態度には、何も想うところが無いのだろう。
それに対してアカネは、
「べ、別にあなたの為に、やった訳じゃない!
僕は正義を尊重する。
それだけだ!」
と、言い残し、アカネも逃げるように立ち去った。
……まさかのツンデレなの?
今までのマオちゃんに対する張り合うような態度も、素直になれなかっただけ?
これはちょっと、確かみてみろ……もとい、確かめてみる必要があるな。
でもその前に……。
『ダリー』
「はっ、ご主人様」
私の影が伸びて、そこから男の娘で吸血鬼でメイドという、属性の多いダリーが姿を現した。
実は私へと常に付き添って、王都での生活を補助してくれている。
私の芳醇な魔力を含む血液を与えていたら超強化されて、現在では日光も克服しているという、頼もしい子だ。
『先程の連中について、調べてください』
「かしこまりました」
そしてダリーは再び、影の中に沈んでいく。
影の中を自由に移動できる能力を持つ彼ならば、貴族の身辺調査くらいは朝飯前だ。
まあ、今回の件だけで彼らをどうこうするつもりは無いけど、あのような思想は親から受け継いでいるのだろうし、そういう家ならば何か後ろ暗いことをやっている可能性もある。
それが見つかれば、家ごと潰すということも一考しよう。
そして私も──。
『マオちゃん、私もちょっと行ってくる』
「うん……」
私はアカネについて、調べてみるか。
さあ、気配を消して、追跡だ。
でも、アカネにはすぐに追いついた。
校舎の影で、しゃがみ込んでいたからだ。
そして何事かを、ブツブツと呟いていた。
「直接お話ししちゃった……。
どうしよう……尊い」
ん?
「あれが魔王に連なる存在……。
理不尽に立ち向かうその姿、なんて高貴で勇ましい……。
格好いいなぁ……」
あっ、これはただのファンだ。
実技の授業の時に、マオちゃんの戦い方を真似るようなことをしていたのも、ファンだからこそであり、自身の存在を認知してもらえるようにアピールしていたということなのかも……。
いつぞやの舌打ちも、マオちゃんの周囲に女の子が集まっていたことに嫉妬したから?
「きっと闇のオーラとか、使いこなすんだろうなぁ……」
あ~……十代前半の子って、悪魔とか闇の眷属とかに憧れを持つもんなぁ……。
これは中二病の一種か。
それならば、彼女を危険視する必要は無いかな?
むしろ面白そうだから、積極的に絡んでいくのも良いのかもしれない。
『そこな少女よ……』
「何やつ!?」
私が念話で話しかけると、アカネは飛び跳ねた。
わー、何かに驚いて、ジャンプするネコみたい。
完全に油断していたね。
『私はマオの母親的存在です。
先程は庇っていただき、ありがとうございました』
「あの子といつも一緒にいるキツネ!?
いや、母親だと!?
馬鹿な……ということは、先代の魔王……!?」
マオちゃんが現魔王の妹という扱いになっているから、その姉妹の母親的存在となると、そのような解釈をされても仕方がないな。
いや、シファは娘的な存在じゃ無いけどね。
まあ、ここはその勘違いに乗っておこう。
『そう、大魔王です。
今の姿は仮の姿であり、密かにマオを見守っていました』
まあ、魔族で私より強い者は存在しないし、指図できる者もいないので、そう名乗っても問題無いだろう。
しかしアカネは──、
「大魔王!?
ま、まさか……そんなことが……。
い、いや、さすがに信じられない……っ」
やっぱり信じなかった。
実際に公式では、そんな役職は存在しないからなぁ……。
だけどここは信じてもらった方が都合が良さそうなので、なんとか分からせてみよう。
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