17 地底からの来襲
数え切れないほどの巨大アリが、押し寄せてきた。
どんな生き物でも、1箇所に群れとしてかたまっていると気持ちが悪い物だな……。
正直言って、人間相手でもそう思うことがある。
混雑していると、感染症も怖いし……。
それはともかく、巨大アリは私にとっては雑魚だが、さすがに一般の魔族がこれだけの群れに襲われたら、ひとたまりも無いだろう。
……この奥に逃げ遅れがいたとしたら、生き残ってはいないと思う……。
『誰かいますかー?』
念の為、通路の奥へ「念話」で呼びかけても、返事は無かった。
生き残りはいないと判断しよう。
どのみち、数百匹以上ものアリをチマチマ倒していたら時間がかかるし、その方が被害が広がる。
最悪の場合、地上にも湧き出して町を襲う可能性もあるので、一刻も早く片付けなきゃ……!
それじゃあ、害虫は消毒よー!
私の「狐火」が、通路全体を飲み込んだ。
まあ虫なら、これで燃やせる。
飛ばなくても火に入る夏の虫。
……ただ、今燃やしたアリ達が、すべてではないだろう。
アリって1つの巣に、数百万匹もいる種類が存在するという。
さすがにこのアリがそうだとは思わないけど、それでもまだ数千から数万のアリが残っている可能性もあるのだ。
そのつもりで対応した方がいい。
そもそもこのアリ達をクジュラウスが操っているのだとしたら、何故古代兵器の発掘現場でこいつらを使わずに、ドワーフ達を攫った?
ドワーフ達よりも穴掘りに向いているはずなのに、それでも使わなかったことには理由があるはずだ。
例えばこの蟻たちが、クジュラウスにとっても制御しにくく、危険な存在だから……ということも有り得るんじゃないか?
際限なく増え続けて、手がつけられなくなる……とか。
だとしたらクジュラウスも、手段を選んでいられない状況なのかもしれないな……。
ともかくここはシファ達の後を追うよりも、アリ達を根絶しておいた方がいいかもしれない。
彼女達の安否はちょっと心配だけど、雑魚のアリが相手ならカシファーンとガルガもいるのだから、対応できるだろう。
『シファ、大丈夫ですか?
私はこれから、アリの本隊を叩こうと思うのですが』
『ん、大丈夫ではないが、なんとかするぞ。
アリが減るのは助かるのじゃ』
よし、「念話」に返答があった。
少なくともシファ達はまだ無事だな。
ただ、アリの物量には、やはり苦戦しているようだ……。
『それでは、いってきます』
『頼む!』
私は更に地下を目指して女王アリを見つけだし、そいつを滅ぼす為にアリ達が出てきた通路の奥へと進む。
何かしらの気配があるから、まだ残党がいるはずだ。
お、床に大きな穴が空いている。
今までもアリが1匹程度なら通れる穴はあったけど、これは1度に10匹は通れそうな大穴だ。
ここから群れの本体が、湧き出してきたんだろうな……。
おそらくこの下には、広大な蟻の巣が広がっているはずだ。
私は大穴に飛び込む。
やはり穴の奥にはアリたちの通り道があり、それが迷路のように広がっている。
女王はどっちかな?
確かアリって、フェロモンの匂いで、獲物の位置とかを仲間に伝えているんじゃなかったっけ?
それっぽい匂いを辿っていけば、いいのだろうか?
ともかく、行ってみようー!
暫く進むと、またアリの群れが押し寄せてきた。
やっぱり巣の中には、まだまだアリが残っている。
こいつらは根絶しておかないと……!
そんな訳でカム着火!
アリ達が燃える。
やはり現状では、何匹いようとも私の敵ではないな。
「……あ!」
しまった。
炎でアリの匂いが消えてしまった。
かといって、炎を使わないと効率が悪い。
倒すスピードもそうだけど、他の属性魔法だと死骸が残って、通路を塞いでしまうんだよね……。
だから完全に燃やし尽くしてしまった方が、効率はいい。
ちなみに酸素も燃焼してるので、狭い穴の中だと窒息の危険性もあるけど、そこは風属性魔法で空気を循環させているから問題無い。
いざとなれば私の周囲以外の空気を遮断して、アリたちを窒息させる手段も使えるぞ。
いずれにしても匂いが追えないのならば、これは地道に気配を探りながら歩き回って、女王を見つけなきゃいけないな……。
いっそ水属性魔法でここを水没させようか?
ただ、アリ達はダンジョンの真下まで穴を掘ってきた可能性が高いから、そこから水が抜けちゃう可能性もあるし、どのみちこれだけ広い巣穴を全部水没させるのは時間がかかるから、現実的ではないか……。
あと、地属性魔法で巣穴を崩壊させて埋める方法もあるが、今度は真上にあるダンジョンが崩れてしまう可能性もあるので、それは最後の手段だ。
結局私は、穴の中を歩き回るしかなかった。
その後も、何度かアリの群れに遭遇したけど、いくら倒しても減っている気がしない。
マジで万単位もアリがいるのか?
私がうんざりし始めた頃──。
「ここは……?」
少し広い場所に出ると、そこには卵らしき物が並んでいた。
エイ●アンの卵みたい。
近づいたら、中から幼虫が出てきて襲いかかってきそうだ。
これも燃やしておこう。
「卵があるということは、女王も近いのかな?」
おそらくそうだろう……と、確信を得た私は、足取りも軽く前に進む。
お、また広い場所……うげっ。
丸々と太った幼虫がいる。
う~ん……芋虫はさすがに気持ち悪いな……。
それにこいつらは、何を食べているんだ?
こんな地中深くに、巨大アリの腹を満たすほどのミミズや虫とかが大量にいるとは思えないんだけど……。
ましてや花の蜜とかがあるはずもない。
クジュラウスが、餌を供給していたのだろうか?
それが人間とかじゃなければ良いが……。
とにかく子供を殺すのはちょっと可哀想だが、生き残りが何をするのか分からないので、こいつらも燃やしておこう。
なんにしても、卵や幼虫がいるのなら、女王の居場所も近い気がするぞ!
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