2 ナユタのアトリエ
ダンジョンから出た私は、トウキョウ自治領・領事館の建設現場へと向かった。
「この辺でいいかな……?」
そしてその敷地の端に、鍛冶場を作った。
これは地属性魔法を駆使して、石造り(一部金属)の工房となっている。
火を使う場所だから木造は有り得ないし、建てるのにも時間がかかるからねぇ……。
で、炉とかも完備しているぞ。
「おお~っ、でっけーなぁ!」
完成した鍛冶場を見て、ナユタは歓声を上げた。
一応指導員としてドワーフの里から人員を呼び寄せるつもりだし、ついでに彼らには私がダンジョンから持ち帰った素材を使って商品を作ってもらい、我が領の特産として売り出してもらおうと思っている。
その為に作業場は、十数人の職人が仕事できるほど大きくした。
「さあ、何かを作ってみましょうか」
私の「狐火」で、炉に火を入れる。
そして材料は、これまた地属性魔法で生み出す。
ミスリルとか私にとって未知の物質は無理だが、銅や鉄程度のありふれた金属なら、地面から材質を抽出できるのだ。
足りなければ効率は悪いけど、魔力を物質変換することも可能だ。
魔法はイメージさえ明確ならば──物事の理屈さえ理解しているのならば、魔力量次第で大抵のことは実現可能である。
今回の場合、鉱物の成分などを知っていれば、不足部分を魔力で代替して生み出すことができる訳だ。
一方ナユタはドワーフとしての基礎として、簡単な鍛冶仕事の知識はあるそうだ。
里にいた頃に、色々と仕事を手伝っていたのだろう。
この世界は子供でも、労働力としてカウントするのがデフォルトだしねぇ……。
そこで彼女には手始めに、シファの練習用の手裏剣を作ってもらうことにした。
「こんなのはできますか?」
私は「幻術」で、十字手裏剣とクナイを空中に投影して見せた。
そのまま投擲するという、用途の実演もする。
形が分かっていても用途を理解していなければ、重心とか細かい部分には気が回らないものだ。
「へ~、投げナイフみたいなものか。
分かった、やってみるぞ」
そんな訳で、ナユタが鍛冶の作業に入ったので、私はナユタが作った武具に魔法の効果を付与できるよう、付与魔術を練習しよう。
まあ、付与するだけなら簡単だ。
人間に対してかける、防御魔法とかだってそうだし。
ただ、道具にその効果を、永続的に付与するのが難しい。
手段としては、魔法の術式を図案化した魔法陣を、対象に彫り込むという手法だ。
武具に持たせたい効果の他に、周囲の空間や使用者から魔力を吸収する効果を持つ魔法陣を彫り込んでおけば、エネルギーをいちいち充填する必要も無く、永続的に魔法効果を維持できるようになる。
ただ、いちいち魔法陣を彫り込むのは手間だし、そもそも小さなアイテムだと彫り込むようなスペースがほぼ無いので、職人のような技術が要求されることになるんだよねぇ。
米粒に文字を書くとか、そんな感じ。
さすがに無茶なので、私が試みるのは付与した魔法効果を、対象に浸透させて定着させる手法かな。
磁石に鉄をくっつけていると、いつしかその鉄も磁石の性質を持つことがある。
それと同様に、強力な魔法に触れ続けた物には、その魔法の性質が定着することがあるらしい。
まあ、魔法に限らず、人の強い想いが染みついて、不思議な現象を引き起こす道具とかもあるし、それと似たようなものだ。
そう、呪いの人形とかね。
実際、一歩間違えば、ある種の特級呪物と言えるようなものが誕生する可能性もあった。
たとえば「攻撃した相手を問答無用で即死させる」とか、「使用者の生命力を吸い尽くしてしまう」とか、そんな感じのヤバイのだ。
勿論、私はまともな物を作るつもりだが、まずはやってみないとどうなるのかは分からない。
そんな訳でその辺の店で買った安物のナイフに、「硬質化」の魔法を強くかけてみる。
短時間で効果が染み込ませる為には、並程度の魔力を込めても無理だからね。
攻撃魔法に使ったら、町が吹き飛ぶような威力になるほどの魔力を注入にして、「硬質化」の魔法を発動!!
ふむ……なんだか刀身が、わずかに光っているな……。
この光がある内は、効果があるってことかな?
でも、常に光っているのも邪魔なので、ちょっと加減を間違えたかな……と感じている。
なんにしても、耐久テストをしてみるか。
「おお……なんじゃ……?
鉄塊にナイフがサクサク刺さっておるのは、気持ちが悪いのぉ」
シファは引いているが、私が限界まで「硬質化」で強化したナイフはまず破損しないので、鉄の塊にだって簡単に刺さる。
今のナイフの硬度から比べれば、鉄は豆腐のような柔らかさだからだ。
で、何回くらい使えば効果が切れるのかと思って何度も刺しているが、いくら刺しても帯びている魔力は減ることはなく、少なくとも100回や200回で効果が切れることはなさそうだ。
あとは時間の経過でどれだけ効果が減衰するのか……だが、こればかりは実際に時間の経過を待たなければならない。
まあ、いくつか効果や込める魔力量の異なる試作品を作って、検証するか……。
いや、最初のナイフの時点で攻撃力はカンストしていると言ってもいいので、ナユタの新装備はこれでいいような気もするが……。
「あ、ついでに私の耐火服を作ってくれる?」
「あ、はい」
ネネ姉さんがすぐ服を燃やすので、耐火術式を付与した服も何着か作った。
そんな感じでダンジョン攻略をする傍ら、色々と作ってみた。
ナユタには日本刀の作り方を教えてみたけど、最初は失敗していたものが徐々に形へとなってきている。
何気に鍛冶の才能は高かったようだ。
「師匠、これでどうだー?」
「ふむ……良い感じですね。
あなたが使いますか?」
ぶっちゃけ私が能力を付与すれば、一撃必殺の威力を持つ妖刀になるだろう。
まあ……命中さえすれば……だが。
「いや……オレは、槌の方がやっぱりいいかな」
ふむ……使い慣れた武器の方がいいか。
どちらかというとナユタには、武器よりも防具の方を優先した方がいいかもしれないな。
防御力を上げる鎧や、素早さを上げる靴のような……。
「それではこの刀は、私が使いましょう」
「オレが作ったのでいいのか?」
「ええ、良い刀ですので」
私は武器が無くても戦えるけど、やっぱり刀は格好いいので1振くらいは欲しいからね。
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