エピローグ 新しい国
この章のラストです。
ラッジーンの公開処刑は、つつがなく終了した。
どこかの帝国皇女のように、過去へ戻ってやり直すなんてことがあるのならばともかく、もう彼絡みでの問題は何も起こらないずだ。
「お疲れ様でした」
「……ええ」
処刑が終わった後、クラリスは本当に疲れているようだった。
「やっぱり嫌なものね……。
女王であり続ける以上は、これからもずっとこんなことをしていくのよ……」
なるほど……。
ラッジーンの処刑は終わりではなく、次の処刑の始まりでもある。
クラリスが女王である限り、罪人を裁き、兵士を戦場に送り……と、直接・間接問わずに人の命を左右することからは逃れられない。
それは気が重いだろうねぇ……。
「…………」
そしてクラリスの役割を分け合う立場となるレイチェルも、真剣な顔をしていた。
今後は彼女にも、同じような判断が求められるだろう。
それでも取りあえず一段落で、癒やしの時間も必要だ。
「ねーねー、撫でてもいいにゃ」
慰めているつもりなのか、ネコ姉妹がクラリスに頭を向ける。
この子達……自分の可愛さが、癒やしを与えるレベルだを理解しているな!?
「ふふ……ありがとう」
ネコ姉妹の頭を撫でるクラリスの表情が、少しだけ緩んだ。
その隣でキエルが、そわそわとしている。
彼女も撫でたいのだろうけど、さすがに空気を読んで我慢しているようだ。
ココアかネネ姉さんを貸そうか?
なお、キエルとネコ姉妹は、クラリスの親衛隊に採用されている。
アリゼは宮廷魔術師だ。
女王の傍に仕えるのだから、それなりの身分も必要ということで、男爵位を授けられるという大出世である。
そんな親衛隊に、実はナユタも誘われていた。
クラリスとしては、ドワーフなどの様々な種族を重用することで、人間と獣人以外の種族に配慮する姿勢を見せたかったのだろう。
まあ、ナユタは「師匠と一緒がいい」って断ったけど。
愛い奴。
ちなみにリチアはロリコンな所為で、親衛隊としての品格に問題があると判断されたのか誘われもしなかったが、クラリスの協力者としての報奨金は受け取っているので、それを元手に孤児院を作るそうだ。
……大丈夫? おまわりさん呼んだ方がいい?
そして私も、必然的に誘いを受けている。
その時のクラリスとの会話は、こんな感じだった。
「あなたの村を自治領として、我が国に組み込みたいと思っているのだけど……。
そしてあなたには、辺境伯として自治領の運営をしてもらいたいわ」
「いや、我が村は国とか関係なく、勝手に自由にやっていけますが……?」
将来的には都市国家となるまで、発展させるつもりだし。
「でもねぇ……。
正体不明の集団が近くにいると民が不安がるし、あなた達も国から公式に認められるのは悪くない話だと思うのよ。
形だけでもどうかしら?」
「それは……まあ……」
国に属しておらず、そして勝手に土地に住み着いているだけなら、それはただの難民という扱いにもなりかねない。
しかもその中にはゴブリンや魔族も含まれており、他者からは警戒されてもおかしくない集団である。
そんな我が村が国家の樹立を宣言しても、それが国や世間に承認されなければ、国としては成立しないのだ。
現状ではそれで困ることはないけど、将来的には国際社会の舞台には立てなくなるかもしれないというデメリットはある。
それが国に所属することによって、問題が無いとお墨付きを得ることできる。
また、どの勢力に属しているのかをハッキリとさせておくことによって、他国などからの侵略などの介入を食い止める効果も期待できるかもしれない。
「それに魔族であるあなたが、我が国で高い地位に就くことと、その統治下にあらゆる種族が共生する地域があるということには、大きな意味があるわ。
しかも国への所属は形だけで納税の義務は無いし、私とあなたは同格だから、誰かから命令されるようなことも無いわよ」
「ふむ……」
獣人を正式に国民として認め、今後は多民族国家になっていくこの国の未来の姿──そのモデルケースに、トウキョウ村がなってほしいということなのかな?
しかも表向きには自治領でも、実質的には独立国家として扱うとクラリスは言っている。
前世の世界でもかつてカナダやオーストラリアなどはイギリスの自治領だったらしいが、現在では対等の国家ということになっている。
トウキョウ村も同様の扱いになるのは、悪くはない話だ。
「不当な扱いを受けたら、すぐに国から離脱しますが?」
「いいわよ?
なんならこの国がおかしくなっていると感じた時は、潰してくれても構わないわ」
……その場合は、新国王として国民の面倒を見ろって言うんでしょ?
ようするにクラリスは、今回のラッジーンの件のように国が乱れそうになった時には、すみやかに政権が交代できるように、予備を用意したいと考えているらしい。
ええぇ……面倒臭い~。
クラリスもちょっと私に甘えすぎだと思うけど、それで国民が平穏に暮らしていけるのなら、自分が王であることにはこだわらないという姿勢は、正直嫌いじゃないんだよなぁ……。
それにこの国には私の関係者が多くいるから、彼女達が不幸になるようなことにはなってほしくない。
「……まあ、そんなことにならないように頑張ってください。
最低限の協力はしますよ」
「ええ、お願いね」
そんな訳で私は辺境伯となった訳だが、まあ実務は今まで通りセリスさんとかの他人に任せるよ。
これからシファの為に、ダンジョン攻略を再開しないとならないしね。
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