22 紅蓮の獣?
ほどなくして、ラッジーンの護衛達は制圧された。
一応は国王の護衛だから、獣人族としてはトップレベルの強さだったのだろうけどねぇ……。
それでも私が参戦すれば、相手に勝ち目は無い。
いや、私が参戦するまでもなかったが。
元々レイチェルとナユタだけでも、数十人規模の盗賊団を制圧できるので、多少手練れがいても、数人程度なら敵ではない。
残りはラッジーンと──、
「おいっ、いつまで詰まっているっ!!
早くきて、こいつらを片付けろや!!」
姉さんだけだ。
……ん?
詰まって……?
『うるさいなぁ……。
今いくよ……!』
通路の奥から、「念話」が届く。
今私達がいる場所は、戦闘ができる程度には広いけど、通路の方は狭くなっている。
姉さんの身体は大きくなっているらしいから、狭い通路に引っかかったのか?
……そう思っていたら、通路の奥から壁が迫ってくる。
そしてトコロテンのように、にゅるんと赤くて巨大な筒状の物体が飛び出した。
なにこれぇ……?
「なんだい、この巨大なモップみたいのは!?」
リチアはそんな感想を漏らしたけど、ああ……確かにハンドモップに似たような形状のがあるな。
だけど私は、モップに知り合いはいない。
どちら様なんです?
直後、その物体は、水に濡れた犬が水分を飛ばすように、ブルブルと身体を震わせた。
すると通路の形に押し潰されていた体毛が、ぶわっと膨らむ。
……が、その姿は──。
「冬毛のタヌキよりも、丸くてモコモコじゃないですか……」
ただ、これは毛が長いというよりは……太っている?
いや、マジで誰だこれ……?
体毛の赤い色は私達と同じだし、尻尾も複数本あるようだけど、これを初見でキツネだと看破できる者はいないような気がする。
だけどこの気配と匂いは、懐かしいネネ姉さんのものだ……と思う。
姐御肌でボーイッシュだったネネ姉さん──。
スレンダーな肢体にスク水の日焼け跡が眩しく、ショートカットが似合う貧乳なネネ姉さん……(※擬人化した場合のイメージ)。
彼女は一体何処へ行ったのだ……?
知らない……。
こんなニャ●コ先生みたいな体型の物体……。
身内にはこんな肥満児は、いなかったはずだ……。
しかし状況証拠としては、これが姉さんだということを物語っている。
「おい、そこのサル!
なんであんなに、ブクブクと太っている!?」
私は思わず、ラッジーンに詰問する。
「え……いや……。
機嫌が悪いと命令をきかんから、餌で機嫌を取っていたら、ああなっただけだが……」
「ええぇ……」
私の迫力に押されて、ラッジーンはあっさりと話したが、想像以上にしょうもない理由だった。
そうだね。
人間の料理、美味しいもんね……。
あとは無理矢理従わされていることに、ストレスを感じて過食に走っているというのもあるのかな……?
いずれにしても、ラッジーン程度の奴隷契約では、やはり姉さんを完全に支配することはできなかったか。
それなら奴隷契約の術式を解除すること自体は、そんなに難しくはない。
が、まずは姉さんを、無力化しなければいけない。
大人しく解呪術式を受け入れてくれる状態じゃないと、さすがに解除できないのだ。
しかし──、
「オイ、早くこいつらを片付けろやっ!!」
解除には、ラッジーンの命令が邪魔だ。
そして姉さんは──、
『じゃあ、ご褒美くれる~?』
一応、抵抗している……?
素直に命令を聞くつもりは無いようだ。
だが……、
「後でなんでも食わせてやるから、働けっ!!」
『じゃあ、やる!』
食べ物につられて、姉さんが戦闘態勢に入る。
……って、まだ食べる気か。
解放したら、ダイエットだな……。
姉さんが炎を生み出す。
それが放たれれば、標的となったクラリス達は全員死ぬだろうな……。
炎が無効な私以外は──。
だが、私の間合いでは、すべての火属性を我が支配下に置くことが可能だ。
姉さんの炎は、彼女の制御を離れ、私の掌へと収まる。
『なんで!?
私の炎がっ!?』
「姉さん……まだ気付かないのですか?
あなた、炎の扱いだけではなく、すべてのことで私に勝てたことは無いでしょう?」
『だ……誰よ、あんた?』
姉さんは、私が誰なのか分からないようだ。
そりゃあ、人型にはなっているけど、それでも気配や匂いで気付いてほしかったなぁ。
私は9つの尾を、クジャクのように広げる。
「これを見て分からないようなら、ちょっと厳しいお仕置きが必要ですね……!」
『そ、その尻尾……!!
ま、まさかアイなの……!?
悪い悪い、お姉ちゃん、ちょっとド忘れしちゃっていたかなぁ~』
「そうですか。
憶えていてくれて良かった……。
で、その情けない姿について、申し開きはありますか?」
『そ、それは……」
そんな私の問いを受け、姉さんは後退りしはじめた。
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