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14 子供達の今後

 その後私は、お腹を()かせている子供達の為に、「空間収納」から食料を出して炊き出しを開始した。

 まあ、調理するのはレイチェルだが。

 いい匂いが、周囲に漂う。


 その匂いを嗅ぎつけて、襲撃してくる者が現れる可能性もあるので、私は「幻術」で周囲の道をすべて隠しておいた。

 これは視覚的に道を見失なわせるだけではなく、魔力の流れを操って方向感覚も狂わせる術なので、突破してくる者はまずいないだろう。


 暫くして、料理が完成。

 それを食べた子供達の反応はというと、それは劇的なものだった。


「美味しい!?」


「うえぇぇん……美味(うま)いよぉ~!」


 こんな貧民街(スラム)では、全員が満足に食べるだけの食料を手に入れることすら難しいだろう。

 上等な食材など、口にしたことさえ無いはずだ。

 ほぼ初めて食べたまともな料理に、子供達は感動の声を上げていた。

 中には泣いている者すらいる。


 いきなり栄養価の高い物を食べさせたら、身体(からだ)が拒絶反応を起こすんじゃないかな……と、ちょっと心配になるなぁ。

 一応、消化の良いスープとかを、提供しているけれど……。

 アレルギーもあるかもしれないし、なんだか緊張する。 

 それでも喜んでいる子供達の姿を見ていると、食べさせることができて良かったと思う。


「あんなに嬉しそうに……。

 見ている方も幸せな気分になれるよ。

 なあ、子供はいいだろう?」


 リチアに言われると別の意味にしか聞こえないが、(おおむ)ね同意だ。


 あと、シファは子供達よりも食べないように。

 ホント、レイチェルの料理が好きなんだなぁ……。

 いや、私も好きだけどさ。

 私も適当に食べておこう。


 そして食事が終わると、今度は地属性魔法で大きな湯船を作ってお湯を張り、子供達を入浴させた。


「お湯がこんなに一杯!!」


 大量のお湯を見て、子供達ははしゃぐ。

 つまりここの子供達はお風呂なんて知らず、水浴びくらいしかしたことがないということだ。

 だから全身が汚れているし、皮膚病を(わずら)っている子もいる。

 それを治療する為にも、石鹸やシャンプーを使って、みんなを綺麗に洗う必要があった。


 まあ、「浄化」の魔法を使う手もあるけど、長い年月でたまった垢は簡単に落ちないので効率が悪いし、あまり徹底的にやると皮膚にいる常在菌のバランスが崩れて、かえって害にもなるからなぁ……。

 それにこれは、子供達が自分自身で身体を清潔にできるようにする為の、準備段階でもある。

 常に私達が洗ってあげる訳にはいかないので、将来的には自分で身体を洗えるようになってもらう為にも、その手順を経験させてあげる必要があるのだ。 


 ただ、毛皮を持つ獣人の一部は水……というか、お湯で毛が濡れるのを嫌がったけど、君達にはノミやシラミもいるから丸洗いは強制だ。

 私みたいに炎を浴びて、消毒できれば楽なんだけどねぇ……。


 とにかく人数が多いので、仲間達や比較的年上の子にも協力してもらって、子供達を洗う。

 その中でクラリスは、ちょっと苦戦しているねぇ。

 かつては王女として、入浴も侍女に手伝ってもらっていた立場だからぁ。

 さすがに今は自分で身体を洗えるようにはなったようだけど、それでもアリゼに背中を流してもらっているところは何度か見かけたし、まだまだ洗うのは苦手なのかもしれない。


 あ、男の子は、少し離れた場所に壁を作って、そこで洗っている。

 担当しているのは、あんまり性別というものを気にしていないナユタだ。

 ……というか、アリゼやキエルのような巨乳に任せていたら、早くも性に目覚めて性癖が歪んでしまいかねないからね……。

 その点、ナユタは男の子のような見た目と性格だし、男の子達にとっても自然に接することができるだろう。


 あと、私も男の子の相手はNGだ。

 私自身が百合原理主義者で、人間関係に男の子の入り込む余地が無いというのもあるが、今の私の姿では、性癖が破壊されてしまう者が確実に出てくるはずだもの。

 このケモミミ尻尾つき美少女という私の姿って、ケモナーの入門的存在だし。


 いや、女の子がケモナーに目覚めるのは、歓迎ですよ?

 さあ少女達よ、私と特殊な百合を体験してみないかい?

 今なら我が尻尾をモフり放題です。

 というか、実際に尻尾をスポンジ代わりにして子供達を洗っているが。

 9本同時に使えるので効率がいい。


 そんな感じでこの集団での入浴は、2時間ほどかけてなんとか終わった。

 その結果、貧民街に似合わない、小綺麗な子供達に仕上がった訳だが……。

 人身売買組織にとっては、商品価値が上がって狙われそうだなぁ。

 でも子供達に、そんなリスクを抱えさせるつもりは無い。


「……で、この子達をどうしますか?」


「どう……とは?」


 私はリチアに問う。

 小さな子供達がいつまでも、こんな貧民街で生活を続けていいはずがない。

 そもそも、今回で少し贅沢を知ってしまったから、今後の貧しくて不衛生な環境での生活には、不満が大きくなるだろう。

 それを我慢させるのも可哀想だ。


「私の村で受け入れることも、可能だということですよ。

 ゴブリンや魔族とか、色んな種族もいますが、基本的には平和なところです」


「いや、魔族がいると言われて安心はできないなぁ……。

 そもそも実在したのかい……?」


 リチアからは、ごもっともな反応が返ってきた。


「ここだけの話、私やそこのシファ、そしてキツネのココアも魔族ですよ」


「なんだって、それは本当かい!?

 魔族って可愛い子しかいないのか!?」


 ……注目すべき点が、違うんじゃないかな?


「どう……なんでしょうね?」


 確かにヤギみたいのはいたけど、その一方でクジュラウスとかは一応美形だったし、案外そうなのかもしれない。

 いずれにしても、リチアは興味をしめしたようだ。

 

「取りあえず、村へ来てみませんか?

 『転移魔法』で、一瞬ですから」


「『転移』が使えるのかい!?

 それは凄いな……」


 人間にとっては、かなり上級の魔法らしいね。

 それが使える私の実力を、リチアは理解してくれたようだ。

 そして彼女は少し考えた後──、


「まず私だけを、その村に連れて行ってくれないか?

 それから判断したい」


「勿論、それでいいですよ」


 そんな訳で、私は一旦村へと帰還する。

 1度行ったことがある王都には、もう自由に「転移」できるし、今後は好きなように往復できるぞ。


 まあ、ちょっと距離が離れているので、魔力の消費が大きいから、1日に何度も行き来はできないけどさ……。

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