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ヒロイン剥奪! ~オープニングで悪役令嬢を落としたらストーリーから蹴りだされました~  作者: ぎあまん


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 途中の人間ドラマを端折って第二部のラスト近辺を説明してみる。

 ダイン王の前で疫病の元凶であることを暴露されたミーム。彼女はダイン王からの愛を取り戻すことが不可能であると自覚し、いままで止めていた疫病……魔女の呪いを最終段階へと移行させる。

 土に染みこんだ魔女の呪いは食物を通して前王国民に行き渡っており、ミームは呪いを通して彼らを支配することに成功した。

 そして自身もダイン王への愛で呪いに呑み込まれることに抵抗していたことをやめ最終形態への移行を始める。

 サンガルシア王国の全ての人々が敵に回ってレインはピンチに陥る。

 ……かにみえたが、対抗薬を用意していたレインによって一部の人々(攻略キャラ&傭兵キャラ)は支配から解放され最後の戦いへと赴くことになる。

 ……という感じ。

 状態異常と継続ダメージを撒きまくる鬱陶しい敵だったなぁ。

 だけど、この時のミームは結局、最終形態にはなりきらなかった。ダイン王の前で他者への憎悪に呑み込まれた醜い自分を見られたくなかった。

 なぜなら彼女は……。

 もしもあの時、ミームが最終形態になっていたらどうなっていたのだろうか?

 たとえば今のあの姿?

 ダイン王と呪いの究極の両方を手に入れたのがいまのあのミームの姿なのだとしたら?

 そして彼女を倒すため、疫病を根絶するために必要だったキーアイテムも失われてしまっているのだとしたら?

 あれ? これ詰んでない?


「あなたが何もしない限り、あなたの公爵令嬢にも何もしない」


 脅してくれやがりましたよ。

 結局その日は大工房からは出られたけれど王都から出ることはできなかった。強行突破なんてお手の物だけどアンリシアを人質に取られてるようなものだから無茶もできない。

 大人しく帰ってやりましたとも。

 この、レインちゃんが!


「くやし~~~~~~~~~っ!」

「そう、そんなことが」


 アンリシアの膝の上で存分に悔しさを吐き出す私。布地越しの、ふ、ふ、ふともも~癒される~。


「疫病によって聖女の必要性を強制する。それが彼女の狙いなのね?」

「そうだね」

「そう……哀しいわね」

「哀しい?」

「他人に必要とされることをそこまではっきりと求めないと自分の居場所だと思えない。それは哀しいことでしょう?」

「……まぁね」


 他人に求められるということは嬉しいことだ。自分が無価値ではないと感じることができる。

 アンリシアになにか頼みごとをされたら、私なんてもううっきうきだ。

 そして魔女は長い歴史の中で有用だけど害悪でもあると考えられてきた。突如として発現する人を超えた魔法という力を恐れられてきた。

 マウレフィト王国は代々のサンドラの尽力もあって有用の部分を認知させることができているけれど、サンガルシア王国は違う。

 過去に魔女を根絶し、そしておそらくその後に現れたであろう魔女たちも密やかに処理されて、自分たちが何者であるかの証明さえもできていなかった。

 墓もなく土の下に封じ込められた彼女たちの無念が見えない手となってこの国にしがみついている。


「……勝手にやっていてくれって話なんだよね」

「レイン?」

「この国の問題なんだから、この国の連中で因果をすったもんだしてくれていればいいんだよ。わざわざよそ者巻き込んでおいて言うことを聞けっていうのが間違いなんだよ」

「そうね」

「なんで私たちが、アンリが、巻き込まれないといけないの。おかしいんだよ。放っておいてよ。大人しく帰してよ」

「そうよね」

「……もういいよね?」

「なにが?」

「もういいよね。逃げ道を塞いだのは向こうなんだから、もういいよね? 焼いちゃっていいよね。こんな国、なくなっちゃってもいいよね? 燃やしちゃおう。全部なくなってしまえばいいんだよ。そうすれば過去の恨みもなにかもないよ。最初からなかったことにしちゃえばいいんだよ」

「レイン……」

「私とアンリの邪魔をするんだから消えちゃってもいいんだよね?」

「レイン」


 顔を上げた私をアンリシアは抱き寄せてくれた。


「あなたは強い子よ。レイン。だけど、だからって強がらなくてもいいの」

「アンリ……」

「あなたは何でもできる。どんな強いモンスターもあなたにとっては何でもない。赤竜女帝だって怖がっちゃうくらいにあなたは強い」

「うん」

「だけど、そんなこと自慢しなくてもわたしはあなたが好きよ、レイン。あなたに比べればわたしなんて家柄以外になにもないけど、わたしはあなたが好き」

「ありがとう」

「……人を殺したくないのよね?」

「うん」


 うつむいた私はアンリシアの胸の中に沈んだ。

 でへへへなんて言っている余裕もない。恥ずかしさで死にたくなる。

 いままで私様最強だとか言っていたくせに、いまさら人を殺したくない? なんの冗談だかって話だよね。

 なにを情けないことをと思うかもしれない。

 でも、できれば殺したくない。

 敵意を持って襲いかかってくる奴らに躊躇する気はないし、その覚悟は持っているつもりだけど……だからって自分から殺しにいきたいわけじゃない。

 しかもたくさんを……だなんて。

 虐殺者になりたいわけじゃない。

 そんなものになりたくて第二の人生を歩いているわけじゃない。


「……第一聖女を倒せば解決する。そういう問題でもないのよね?」

「うん」


 私の躊躇でアンリシアは事の本質にどんどん近づいてくる。

 彼女にはまだミームのことは言っていない。この国のことも概略を撫でる程度のことしか話していない。

 だけどアンリシアは賢い。

 私の喋ったことと周辺の状況で様々なことを察していく。


「考えましょう。レイン。私たちにとって最善とは何かを」

「……帰りたくないの?」

「そのこともちゃんと、一から話し合いましょう」

「うん」


 その夜はずっと二人でこれからのことを話し合った。




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