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どうも主人公の座から蹴りだされたただの小魔女です。
『サンドラストリートの小魔女』の『マウレフィト王国編』のストーリーをリヒター王子攻略で思い出してみよう。
色々あって工房を引き継いだ小魔女……この際主人公の名前は省略……の主人公が薬をいくつか作れるようになったところで彼らがやって来る。
カインに案内されたリヒター王子だ。
その時はまだリヒター王子の正体に気付かない主人公だけれど、彼が見舞われているトラブルを解決する過程で王子だということに気付く。この件で、王子は主人公に興味を抱くけれど、そのために婚約者候補であるアンリシアに敵視されるようになり、王子との身分違いを理由に離れるように命令される。
一度は納得した主人公だけれど、しかし王子は初めて自分から欲しいと思った主人公に執着する。その結果、元々魔女憎しのアンリシアとその父親の怒りが激化し、主人公は命を狙われるようになる。その激しい反応が王子に魔女派貴族への接近を後押しさせることになり、アンリシアたちの立場はさらに悪くなり、ついには魔女が危険だということを証明するために悪魔の種というアイテムに手を出した結果、自滅。彼女はモンスターとなってしまう。
そうなった彼女はもう倒すしか道はない。
主人公は王子と将来的に結婚するかも? みたいな雰囲気を出してクエストは終了。
幸せな結婚をしました、とならないのはこのゲームが三つのクエストからなっていて、この後のクエストでも攻略対象となる人物が現れるからなんだけど、ちゃんと王子との好感度を維持していれば、王妃エンドに辿り着く。
マウレフィト王国は魔女に優しい国になりました、となるのだ。
とはいえ現主人公であるサリアがリヒター王子ルートを選ぶとは思えない。
思えないけれど、このゲームにはバッドエンドというものはない。誰一人攻略しなくてもそれなりにハッピーそうなエンドを迎える。
そして、そんなエンドでもアンリシアの運命は変わらない。
彼女の運命は『マウレフィト王国編』の最後を飾るため回避不可能だ。
冗談ではない。
私が主人公のままなら王子をペイと蹴りだしてしまえばそれでいいやと思っていたのだけど、こうなってくるとそういうわけにもいかない。
アンリシアを守るためにもっと積極的に動かなければ……。
「殺るか」
「なにをだい?」
「え? 王子?」
「え?」
「え?」
気が付くと、店舗のドアを開けてサンドラが入ってきていた。
……ん?
ショックを受けたり考え込んだりしている間に朝になってしまっていた。
「あれ? サンドラさん?」
「……あんたが今日の分の薬草を取りに来なかったからね。様子見に来たのさ」
あ、なんか「聞かなかったこと」にしたっぽい。
よしならこっちもそれに合わせよう。
「あら、もうそんな時間になってましたか。すぐに作ります」
「はいよ。なら、待たせてもらうよ」
バスケットに入った薬草を受け取り、サンドラさんにお茶を淹れてから薬を作る。最近は薬草温室が順調に稼働しているので自分用に取っておいたりはしない。全部初級回復薬にしてしまう。
「……あいかわらず、たいしたもんだよ」
たくさんできた初級回復薬を見て、サンドラさんが何度も頷く。
「いえいえ、そんなことはないですよ」
「……で、なんで王子を殺すんだい?」
「……聞かなかったことにしてくれるんじゃないんですか?」
「いや、本当に殺されたらたまったもんじゃないからね。で?」
「ええ……だって、うちのアンリシアを弄びそうなので」
「うちのって……あんたは本当に、なんで保守派のバーレント家と仲良くなってしまうかねぇ」
「ううん……偶然?」
いや、この世界で目覚めたときからアンリシア・エンドを目指していたんだから遅かれ早かれ仲良くなっていたんだろうけども。
「あの家は魔女の頭を押さえつける連中の首魁だよ」
保守派貴族ですからね。魔女の社会的地位向上に大反対なのが彼らです。
「まぁ、そうですけど。あの家の方々は魔女に好意的ですよ。むしろ、下の連中が暴走しないように抑えてくれているぐらいです」
とはいえバーレント家はその中でも穏健派。弾圧したいぐらいに嫌っている過激派連中を押さえつけてくれている。
「……そんなのは嘘だよ。あんたは騙されてるんだ」
「うーん」
私の意見を一顧だにする様子のないサンドラに閉口する。ゲーム中のあの人たちは過激派だけど、いまのバーレント家はちゃんと穏健派だ。
でも、サンドラはその事実を受け入れる気はなさそうだ。
「……もしかしてですけど、サリアのところに王子が行くように仕向けたのってサンドラさんだったりします?」
「……そんなこと、あたしにできるわけないだろう?」
うーん、本当かなぁ?
ていうか、サリアのところに王子が行ったことには驚かないんだ?
怪しいなぁ。
「どっちにしろ、サリアが王子のお気に入りになってくれたら、こっちとしてはありがたいね。次の王様もちゃんとサンドラストリートが必要だってわかってくれるってことだからね」
「貴族のお気に入りになることが目的ですか?」
「そうだよ。そうすることでこの国の魔女たちは生き残ってきた。突然変異のあたしたちは化け物とおんなじように見られてる。魔女と化け物の違いは、人の役に立つかどうかだよ」
魔女が人に恐れられる理由はこの黒い髪と目。血筋とか関係なしにある日突然に変わってしまうという気持ち悪さと、そうならなければ手に入らない魔法という能力。
人間から生まれる化け物。
それが魔女。
……そういう風に考えられている。
「あんたはバーレント公爵家のお気に入りだ。最近じゃ、ナルナラ公爵家の坊ちゃんも通っているそうじゃないか。いいことだよ。そのままお気に入りでいておくれ。王子のことは放っておくんだ。あたしらは貴族様のお気に入りじゃなければ生きていけないんだからね」
そう念押ししてサンドラは帰っていった。
なんだか、このことを釘に刺しに来た、みたいな感じだよね。
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