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飲み仲間の3人




「・・・ちょっと、ランベール!ユリアン!」



「そんな誤解与えること言わないでよ!よそはよそ。うちはうちでしょ?」





二人にそう言った後、ヴァネッサさんが僕の方に顔を向けてくる。





「・・・エノク、一応言っておくけど、勘違いしちゃダメよ・・・?」



「うちのパーティも自由で不干渉な部分はあるけど、それは依頼受けていない時だけなんだからね」



「ギルドから依頼を請けたら一転して、ヘルマンはガッツリあなたに関わってくると思うわよ?もちろん私達もね」



「あっ・・・そうなんですか」





きょとんと僕は返事を返すと、ランベールさんが笑いながら答えてきた。





「ははは!すまんすまん」



「そんな、嘘を言うつもりで言ったわけではないんだがな」



「今、ヴァネッサが言ったことは本当だ」



「うちは、少数精鋭のパーティだし、仲間同士の意思疎通と連携は非常に重要だからな」



「依頼を請けて、任務期間中になったら俺達の交流の仕方はガラリと変わるのさ!」



「公私に渡って、ずっと団体行動することになる」



「ダンジョンの探索、戦闘、もちろん食事や、酒場での飲みの時だってそうだ」



「お前さんやそこの嬢ちゃんも、いずれヘルマンの絡み酒に付き合わされることになるかもしれんぞ、覚悟しておけよ?」



「・・・ははっ!なるほど納得しました」



「確かにそれは覚悟しておかないといけないですね」





僕がランベールさんの言葉に苦笑いしながら頷く。


すると、ヴァネッサさんの抱擁から脱出したレイナが「ぷはぁ!」と声を上げる。





「ふぅ、ふぅ・・・なんか、おっぱいの高い山に登らされた気分よ・・・」





レイナが若干ゲンナリしながら呼吸を整えると、彼女はランベールさんとユリアンさんを見上げてきた。





「・・・ランベールさん、ユリアンさん」



「改めてよろしくお願いします。レイナです!」





そう言って、レイナは防護カバンの上でちょこんとお辞儀をする。





「おう、レイナの嬢ちゃん。ようやく話せたな!」



「ランベールだ。よろしく頼むぞ!さっきの演説は感心したぞ!」



「あのヘルマンを正面から説き伏せるなんて、なかなか出来るもんじゃねえよ、ガッハッハ!」





ランベールさんはそう言って豪快に笑った。


ユリアンさんはその言葉に微笑みながら頷くと、レイナに手のひらを差し出してきた。





「ユリアンだ」



「あんたのさっきの言葉には俺もしびれたぜ!」



「あんたみたいな度胸あるやつは、誰であれ俺は歓迎さ」



「嬢ちゃんには期待しているよ。バッドステータス解けると良いな!」



「はい!ありがとうございます」





レイナはにこりと微笑みながら、目の前に差し出された身の丈もあるユリアンさんの大きな手にちょこんと手を重ねる。


そのまま、ランベールさんとも握手を交わすレイナ。


その光景を微笑ましく眺める僕。


握手を交わした後、ユリアンさんがこの場にいる全員を一瞥した後、声をかけてきた。





「・・・それじゃ、せっかくなんで、ここにいる俺達だけでも、先に親交を温めておくとするか?」



「他の奴誘ってもどうせ来なさそうだしな・・・」



「えっ、そうなんですか・・・?」



「ビクターさんや、ミランダさんはなんとなく分かりますけど、ヘルマンさんは来そうじゃないですか?」





ユリアンさんの言葉に僕は首を傾げる。


ビクターさんもミランダさんも、”馴れ馴れしいのは好きじゃない”とか言っていた気がするし、


こういう交流イベントには参加してこなさそうなのはなんとなく想像がつく。


だけど、ヘルマンさんは陽気だし、来そうな気がするんだけど・・・


僕がそう疑問に思っていると、ヴァネッサさんがため息混じりに言ってきた。





「ああムリムリ!」



「ヘルマンは基本自由時間は遊び歩いているわよ?」



「今頃、どっかの姉ちゃん引っ掛けて楽しんでいるんじゃない、あのバカ」



「ビクターもミランダも自由時間は単独行動がメインで、干渉されるのを嫌うから、誘うだけ無駄よ」



「結局、自由時間でいつもつるんでいるのって私達3人なのよね」





そう言ってヴァネッサさんは彼女自身と、ランベールさんユリアンさんを指差す。


それに無言の肯定で返すランベールさんとユリアンさん。


どうやら同じパーティの中でも付き合いのレベルに結構濃淡があるようだ。





「・・・ふーん。みんな割とバラバラなんだ?」



「ヴァネッサ達3人がつるんでいるのってなんでなの?」





レイナがヴァネッサさん達を見上げながらそう呟く。


すると、ランベールさんがレイナにニヤリと笑って答えてきた。





「俺達3人は飲み友達なのさ!」



「新しい町についたら地元の美味い特産品と地酒が俺達の一番の楽しみだからな」



「必然的に俺達は食い物にはうるさくってなるって訳だ!」





チラッ!





うっ・・・急にプレッシャーが!


ランベールさんのにこやかな笑顔が僕に突き刺さってくる。


レイナはそれを見て「ああ、それでかぁ・・・」とポン!っと手を打ちながら何か納得していた。


そう言えば、この3人とミランダさんは僕の最初の”差し入れ”にめちゃくちゃ反応していたもんなぁ・・・


・・・なるほど、この3人が料理当番の必要性をしきりに訴えていたのは当然と言えば、当然の話だったのだ。


僕が密かにプレッシャーを受けている中、ユリアンさんがその場にどっかりと座る。





「・・・まあ、今日は酒場で親交を温めるなんてことは出来ねぇからな」



「お互い軽く自己紹介といこうや」



「そうね」



「ああ」





ユリアンさんの言葉に頷くと、ヴァネッサさんとランベールさんもその場に座る。


僕も防護カバンを前に抱えながら、彼らに並んで座った。


船の甲板の上で僕達は円陣を組みながら話し始める。





「それじゃ、最初は俺からだな・・・」





そう言って、ランベールさんから自己紹介を始めるのだった・・・





・・・そこで僕とレイナは彼らの出自や経歴について話を聞くことができた。


まずランベールさんだけど、彼は”ザインシャンド連邦”の出身で、ヘルマンさんと同じ国の出身だった。


ただし、育った場所や環境は異なり、ヘルマンさんは都会の”ハイナ”州の出身に対し、ランベールさんは北部草原地帯の”クシラ州”出身との事だ。


年齢も異なり、ヘルマンさんが現在28歳、そしてランベールさんが38歳というから彼らはちょうど10歳違いということになる。


冒険に出た時期も異なるため二人とも幼い頃には面識はなく、冒険に出た後に知り合ったらしい。


ヘルマンさんがビクターさんと共にこのパーティを結成したのが5年前。


ランベールさんはパーティの2年目に加入したメンバーだ。


以来、パーティでは常にシールダーとして最前線で戦い、パーティの危機を何度も救ってきた様だ。


今度、その武勇伝を聞かせてくれると言うので楽しみだ。





そして、次に紹介をしてくれたのがユリアンさんだ。


彼はカーラの隣国、”フィアナ公国”のカスパド領の出身らしい。


カスパド領はフィアナ公国の一番東に位置している辺境の領土で、ハンザ王国とも国境を接している。


フィアナとハンザは同じイドゥン連盟の国同士ということもあって関係は良好だ。


国境を接している地域は紛争が起きるというのが常だけど、カスパド領はそれとは無縁らしい。


カスパド領の大半が肥沃な小麦の穀倉地帯であり、ユリアンさんの実家も農家だった。


当然、彼も実家の手伝いで幼少期は毎日クワを振りながら汗水を垂らしていたという。


モンスターの被害も少なく、国同士のいざこざにも巻き込まれずに、非常に平和な暮らしをしていた・・・


のだが・・・逆に彼にとってはそれが堪らなく苦痛だったようだ。


田舎の暮らしがとにかく退屈だったようで、たまに村に訪れる冒険者の話を聞いて外の世界に胸を踊らす毎日だったという。


そんなある日・・・彼は村一番の人気者で可愛いヘレンちゃんを教会に呼び出す。


幼い頃からヘレンちゃんに惚れていたユリアンさんはその場で彼女に「結婚しよう!」と告白したが速攻振られてしまったらしい。


そのショックで、「ちくしょう!!こんな村出てってやるぅ!」と言って、村を飛び出したことが彼が冒険者になるきっかけだという話だ。


その後色々苦労して、オーガスレイヤーと呼ばれるいっぱしの冒険者になり、このパーティに巡り合ったのだとか・・・


ちなみに、ユリアンさんの自己紹介の9割は、村での生活がいかに退屈で、いかにヘレンちゃんが可愛かったという話がほとんどだった。


僕が、一番聞きたかった、冒険者になった後の話は1割くらいでさらっと流されてしまったのだった。


まあ・・・飲みの席とかで聞く機会はいくらでも出てくると思うけど・・・





そして、最後にヴァネッサさん。


彼女は僕と同じカーラ王国の出身で、育ちもカーラ王都。


父親が商人で、ゴールド通り沿いに実家があるらしく、俗に言う上流階級の出身だ。


商人ギルド連盟の中でも有力な商人一家の跡取りとの縁談が幼い頃から決まっていたという。


そのため、学問を修めることはもちろん、淑女たるマナーを身につけるために家庭教師を付けられ、厳しく躾けられる毎日だったらしい。


そんな彼女は、上流階級の子女が将来の官職や社交界での面識を得るために通う王立学校に入学する。


そこでも様々な学問を学び優秀な成績を修めるヴァネッサさんなのだが、彼女が一番成績が良かったのが魔術だった。


補助魔法と回復魔法の才能を開花させた彼女は両親に嘆願し、15歳になって軍学校に転籍しそこで回復術を専攻する。


卒業後、18歳になった彼女はそのままカーラ王国軍に入隊し、5年間回復術師として軍で活躍したという。


そんな彼女が冒険者に転職するきっかけになったのが、軍の遠征で傭兵として同行していたとあるパーティ・・・言うまでもなく神殺しの剣だった。


・・・ヘルマンさんの誘い文句に乗っかって来てしまったのが運の尽き。


後で、「死ぬほど後悔したわ!」と嘆く誘い文句に乗ってしまった彼女は軍を退役し、神殺しの剣に合流したというわけだ。


ちなみに「どんな誘い文句だったんですか?」と僕は聞いたのだけど、きっ!!と思いっきり怖い顔で睨まれたので、それ以上は聞けなかった・・・




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