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ヤドリギの体現者②




「3つ目のメリットよ」



「これが最後であり、一番大きなメリットなんだけど・・・」



「でもそれを言う前に、あなた達に聞いておきたいことがあります・・・」





そう言って、前置きを挟むとレイナはパーティメンバーをゆっくりと見渡していく・・・


そして、最後にヘルマンさんを見据えた後、レイナは静かに言葉を発した。





「あなた達・・・本当に”大冒険者”になる気あるんですか?」



「・・・・・っ!!!?」





今の発言に、レイナを除いたこの場にいる人間全員が彼女をポカーンと見つめる。


だが、そんな彼らに構わずレイナは続けた。





「質問の仕方を変えるわ・・・」



「あなた達、”神殺しの剣”なんてご大層な名前のパーティ乗っているけどね・・・本当に神を殺す気あるんですか?」



「・・・もし、本当に神を殺す気でいるのなら、それこそ私の同行を拒むなんて、自らチャンスを捨てているに等しい」



「・・・そう言っているのよ、私は」





そう言って、レイナの鋭い視線がヘルマンさんに向けられたのだ!





「ぶっ・・・!!ちょっ!レイナ!!?」



「はあぁ!?」





その余りにも挑発的な言動に思わず僕は驚いてしまった!


僕が声を上げると同時に、ミランダさんも素っ頓狂な声を上げて反応する。


ヘルマンさんも今のレイナの言葉には流石に困惑した様子だ。


苦虫を噛み潰した顔をしながら彼はレイナに言葉を返した。





「・・・おいおい嬢ちゃん!最後にぶっこんできたなぁ!」



「嬢ちゃんを同行させない事が、なんで神を殺すチャンスを捨てることに繋がるんだ?」



「”神殺しの剣”は俺達のアイデンティティだ!それを否定するような言葉は俺も聞き捨てならねぇな・・・」



「ちゃんと納得する理由があるんだろうな・・・嬢ちゃん?」





ドスを効かせた声でヘルマンさんがレイナを静かに威圧してきた・・・


口調こそノリが軽く、一見するとおどけているようにも思えるヘルマンさんだが、その目は全く笑っていない・・・


ヘルマンさんはまだ28歳と若いが、その貫禄と威圧感はさすが熟練の冒険者と言うべきか・・・


思わず僕はブルッと身震いしてしまう・・・


しかし、レイナはそれをものともせず、冷静に彼に相槌を返すのだった。





「ええ・・・たぶん納得してくれるんじゃないかと思う」



「あなた達は先程私の姿を見て驚いてたわよね?」



「”縮小化の呪い”に掛かった人物を見たのは初めてだろうし、思わず憐憫の情が湧くほど惨めな呪いに犯された姿の人間を見たこともそうそうはないんじゃないかしら?」



「・・・私もこの世界に転生してしばらく経つけど、私ほど酷いバッドステータスの呪いを受けている人間は見たことないわ・・・」



「思わず自分でも笑っちゃうくらいにね・・・」



「・・・・・」





ヘルマンさんは腕組して黙ったままレイナを見つめる。


それは無言の肯定だろう・・・


僕も16年生きてきたが、レイナ程酷いバッドステータスの呪いを見るのは初めてなのだから・・・





「・・・”大魔王”にこれほど強力な呪いを掛けられた人物は非常に稀と言って良い・・・」



「だけどね・・・それは裏を返せば、”私ほど大魔王が恐れている人間も稀”ということよ!」



「さっき、エノクが話したわよね・・・?」



「私は”プライマリースキル”として巨大化魔法(グロース)縮小化魔法(ミニマム)を持っていると・・・!」



「あっ・・・・!!」





ヘルマンさんが思わず目を見開いた!


彼はレイナが言わんとしたことに気づいたようだ。


グロースとミニマムのスキルは一般人からすれば珍しいものだが、冒険者の間では所持している人も割といると聞く。


その理由は当然と言えば当然だが、その効果が”非常に強力”だからに他ならない。


グロースは自身や対象者のステータスを数倍にも高める一方、ミニマムは数分の一にしてしまえる。


効果時間が最大20分弱と短い。他の能力との掛け合わせが出来ない。他者に掛ける時はINTの阻害を受けやすい。ラーニングが非常に難しい。


これらの弱点はあるものの、補助系では最強格と言っても過言ではないスキルだ。


・・・だが、ヘルマンさんが今、はっとさせられたように、冒険者たちが認識しているこれらの効果は『セカンダリースキル』のものなのだ。


普通のスキルならプライマリースキルとセカンダリースキルの使用者は明確に認識されるものだが、


グロースとミニマムはセカンダリースキルの使用者のみというのが”常識”だ。


・・・なぜなら、そもそもプライマリースキルの所持者がいないから・・・


ヘルマンさんがレイナの”凄さ”を認識しなかったのはまさにこの常識が邪魔したからだろう。


勘違いしてはいけないのが、レイナの持っているグロースとミニマムのスキルはセカンダリースキルではない・・・


”プライマリースキル”なのだ・・・!





「そう・・・さらっとエノクが話しちゃったもんだから、みんなスルーしちゃったようなんだけど・・・」



「私の持っているグロースとミニマムはセカンダリースキルではなく、『プライマリースキル』よ」



「バッドステータスの影響で、今はまともにこのスキルを使うことが出来ないけど、もしこれを使いこなすことが出来たらどういう結果になるか・・・」



「そんなのは言わなくても分かるでしょ?」





改めて告げられた事実に神殺しのメンバーも驚きを隠せないでいるようだ。


ヘルマンさんは腕組みしながら「うーむ・・・」と頭を掻きながら唸っている。


周囲で見ていた他のパーティメンバーも「嘘でしょ・・・」「まじかよ・・・」と信じられない様子で声を漏らしていた。


これは熟練の冒険者のパーティを動揺させるほど、今のレイナの発言が衝撃的だったという事だ。


グロースとミニマムを”MPの制限なく使用できる”なんてそもそも想像すら付かないだろう・・・


セカンダリースキルでさえ超強力な魔法なのに、それをプライマリースキルとして使用するなんてことになったら、いったいどうなってしまうのか・・・


・・・余りにも非現実的すぎる想像の結果に、僕だって未だに半信半疑だ。


だが、この場にいる誰しもが「とんでもない事になる」というのは、どうやらみんな想像が付いたようだ・・・


そんな彼らを見渡した後、レイナはヘルマンさんを改めて見据える。





「ヘルマンさん・・・何故、神を殺すチャンスを捨てる事になるのかと聞いたわよね?」



「それに対する、私の答えはこうよ・・・」



「私の存在がまさにあなたの言う”ヤドリギ”だからよ・・・!」



「・・・・っ!」





芯が通ったレイナの声が周囲に響き渡り、ヘルマンさんの視線がさらに鋭くなった。


レイナの台詞に僕も含めて周囲の人間が息を呑んだ。


その一挙手一投足に注目するべく、彼らの視線がレイナに突き刺さる。


みんながレイナに注目していた・・・!


そんな中、レイナは俯き加減に目を閉じると、胸に手を当て内に宿る闘志を述懐するのだった・・・





「私は確かに小さい・・・」



「魔物はおろか、普通の人間にすら簡単に踏み潰される存在よ・・・」



「他の人にすがっていないと生きていけないし、身を隠さないと自分の生存すらも危うい・・・」



「だけどね・・・そんな私の中には無限の可能性の力が秘められている・・・!」





キッ!とその瞳に覇気を宿らせながら、レイナは上を向いた。


そして、声高らかに宣言したのだ・・・!





「後悔はさせないわ・・・私を連れていきなさい!」



「そして、私のバッドステータスを解くのを手伝って!」



「雲を掴むような話かもしれないけど、もしそれが叶った暁にはあなた達を”本当の神殺し”にしてあげる!」



「神や悪魔、巨人、ドラゴン・・・大魔王ですらも倒せる力が手に入れられる・・・・!」



「これが私を仲間にする最後にして、最大のメリットよ!!」





空気を震わせるレイナの大声が、船の往来で賑わう港の一角を震わせる・・・!


外野は賑やかなのに、この瞬間・・・僕達のいるこの周辺だけシーンと静まり返ってしまった。


レイナを除くこの場にいる全員が彼女の言葉に唖然とさせられてしまう。


それは、荒唐無稽であり、机上の空論と言っても良い夢物話・・・・


しかし、ホラ話と切って捨てるには、その言葉は余りにも魅惑的で、刺激的な内容だった・・・


一瞬間を置いた後、沈黙を破ったのは女性陣二人だ。





「・・・わーお!凄い・・・あの子」



「なに、あの小人・・・馬鹿じゃないの。偉そうに・・・」





感嘆の声を上げるヴァネッサさん。


それとは対照的に、レイナの言動が癇に障ったかのように不満げに呟くミランダさん。


・・・だが、直後、それらの声をすぐにかき消してしまう程の笑い声が辺りに広がる。





「ふっ・・・ふはははは!!」



「あははは!!!おもしれぇ!おもしれぇな嬢ちゃん!!」





突如、大口を広げながらヘルマンさんが手を叩きながら笑い出す。


それに伴い、ランベールさんやユリアンさんも「ふはは」と釣られるように破顔したのだ。


彼らはひとしきり笑った後、ヘルマンさんが上機嫌な顔でレイナに言葉を掛けた。





「いやぁ、気に入ったよ、嬢ちゃん!」



「たとえ、虚勢だったとしてもそこまで言えるのは大したもんだぜ!!」



「嬢ちゃん自身を”ヤドリギ”に例えたのも上手かったぞ?」



「確かに嬢ちゃんにはそれを言う資格があるだろうし、まさにぴったりな存在だろうよ!」



「・・・”神殺しの剣”の名は俺達の誇りだ」



「それを出されちゃ、俺もあんたを無視して置いていくわけにはいかねぇな・・・!」



「・・・・・っ!」



「えっ・・・それじゃあ!!」





僕もレイナも目を見開きながら、お互い顔を見合わせる。





「・・・ああ、いいぜ合格だ!」



「来なよ・・・嬢ちゃん」



「その虚勢が嘘じゃない事を証明してみな・・・!」





ヘルマンさんはそう言ってニヤリと笑うのだった・・・








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