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一度崩れた信頼は元には戻らない~今更何を言われようと俺の心には響かない~  作者: 日野 冬夜


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昔の自分を直視するのは気恥ずかしい

 夏休みもいよいよ最終日。今日は幼馴染達と四人で遊び現在は帰りの電車の中。電車内は俺達と同じように夏休み最終日を遊んで過ごした学生達と夏休みなんぞ存在せずいつものように仕事をしてきたのであろう大人達でそれなりに混んでいる。社会人の皆様はお疲れ様です。


「夏休みもついに終わっちゃったね」


「まだまだ遊び足りないよなー」


「巧真は課題終わってるんでしょうね?」


 電車に揺られながら幼馴染達が談笑している。俺にとっては見慣れた風景。


「俺だけ学校が違うからな。お前達に頼れないから頑張って終わらせたぜ!」


「すごい。見ないうちに成長したね巧真君」


「やればできるじゃない。なら昔から私達に頼らず自分でやりなさいよ」


 だが幼馴染達にとっては見ないうちにとか昔からとか言ってしまうくらいには前のことらしい。相川が成長してくれて俺も嬉しいよ。でもよく考えたら自分で自分の課題をやるのは当たり前のことでは?


「明日から学校だけど大丈夫?蓮夜」


「まあなんとかなるだろ」


 記憶を失う前の俺が課題を終わらせてくれていたので幼馴染達や高校のクラスメイト達と頻繁に遊んでいたのだが結局俺の記憶は戻らなかった。


 クラスメイト達と話していれば何か思い出すかもと思ったがそんなことはなかったな。そこまで都合良くいかないか。


「困ったことがあったら言ってくれていいからね」


「瑠璃は同じクラスらしいし頼りにしてるよ」


 俺がそう言った瞬間すぐ近くから大きな声が聞こえた。


「この人痴漢です!」


 その声を聞いた途端頭に痛みが走った。


「…っ⁉︎」


「蓮夜⁉︎」


「大丈夫か⁉︎」


 思わず頭を押さえて体をふらつかせた俺を巧真が支えてくれる。


「ち、違う!俺は触ってなんかいない!こいつの勘違いだ!」


「嘘吐くんじゃないわよ!私見てたんだからね!あなたがこの子のおしり触ってるの!」


 巧真に支えられながら痛みを堪えているとそんな言い争いが聞こえてきた。それにつられるように電車内もザワザワしだす。


「しょ、証拠はあるのか⁉︎お前達がグルで俺を嵌めようとしているんだろ!」


「しょ、証拠ならあります!私もおじさんが女の子のおしり触ってるのが見えて、証拠があったほうがいいかなってスマホで撮りましたから!」


 これです!って言い争いしてた人とは別の人の声が聞こえたら電車内の騒めきが大きくなった。見せつけるように掲げられたスマホを見ようとしているのか電車内の人達が体を動かしているのが視界に映る。


「たまたま当たっただけだ!その瞬間を撮っただけだろう!これは冤罪だ!」


 おっさんは冤罪を主張して叫んでいるが周りの乗客はおっさんを冷たい目で見ている。誰も信じているようには見えない。


 その光景を頭を押さえながら見ているといくつかの場面がフラッシュバックした。同時に戸惑いとか不安とか絶望の感情も湧き上がってきた。






 あー…。なるほどなるほど。あの時の俺はこんな感じだったんだー。







「くそっ!こうなったら…」


 おっさんは駅に到着したら乗客を掻き分けて飛び出していった。逃げたことを考えると本当に痴漢していたのか?まあしていなくても警察に連れて行かれた時点で人生が狂うから逃げるのが正解かもしれんが。


 あの時逃げていたら今とは違っていたのだろうか?


「……考えるだけ無駄か」


 どれだけ後悔しようが過去は変わらないんだから考えるだけ無駄。そう分かっているのに何度もこうしたら、ああしていればと考えてしまうのは人の性なのかねえ。


 支えられていた体を相川から離し、自分の足で立つ。


「ありがとな、()()


「……蓮夜?」


 支えてもらった礼を言いいながら顔を向ければそこにあるのは戸惑った表情の相川。その戸惑いは頭を押さえてふらついたのに何事もなかったかのように平然としているから、苗字でよんだからか、自分では見えないが恐らく無表情であろう俺の顔のせいか。


「大丈夫なの蓮夜君?」


「つらいようなら次の駅で休む?」


「いや、大丈夫だ()()()()


 心配そうに声をかけてきた宮本と藤林に返事をすると二人の動きが止まった。


 何かを口にしようとしては口を閉じることを繰り返している二人は何を思っているのか。


「記憶が戻ったのか?」


「おかげさまでな」


「……よかったな!」


 ……返答に少し間があったな。急に記憶が戻ったから戸惑っているのか?


「記憶を失っている間のことは覚えているの?」


「覚えているぞ。世話になったな」


「え、ええ…」


 藤林が記憶を失っている間のことを覚えているか聞いてきたので正直に答えることにした。


すると藤林や宮本が何かを言おうと口を開いては結局何も言うことはなく口を閉じることを何度か繰り返した。何か言いたいことでもあるのかねー?


 しっかし記憶喪失とは稀有な体験をしたものだ。痴漢冤罪されたことも忘れたせいで以前の性格になってたし。某リンゴが好きな死神の出てくる漫画でもノートのことを忘れた主人公は別人みたいになっていたし、きっかけを忘れると性格にも影響が出るのか。


 記憶を失っていた間のことを覚えているせいで昔の自分を見せつけられてしまった。誰だって昔の自分を見る機会があったらなんとなく気恥ずかしく思うだろう。中には黒歴史を思い出して悶える人もいるかもしれない。


 もちろん俺も気恥ずかしい。なんだあの前向きで人生楽しいと言わんばかりの俺は。思わず顔を手で隠し、ついでに溜め息がでる。そんな俺の動きに相川達がビクッと反応しているのが見えた。






 まあ幼馴染達やクラスメイト達は今の俺なんかより昔の俺の方がいいみたいだがな。




 

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