二度目の初めましてから始めよう
「おはよう蓮夜!待たせたか?」
「今来たところ……って言うのは嘘だが俺が早めに来ただけだから問題ない」
西条から電話がかかってきた翌日、待ち合わせ場所である駅前でスマホをいじっていたら爽やかそうなイケメンに声をかけられた。こいつが西条か。
時計を見ると集合時間の10分前。時間にルーズという訳ではないらしい。俺より西条が先に来ていた場合だと誰が西条か分からず声が掛けられないと思って30分前に来たが正解だったな。
「そこは嘘って言うなよ」
「女子相手ならともかく野郎相手に待ち合わせの定番のセリフを言っても虚しいだけだろ」
「違いない」
そうケラケラ笑っている西条を頭からつま先まで眺めてみる。残念ながら西条を見ても突然記憶が蘇ったりはしなかった。ならばしょうがない。プランB(行き当たりばったり)だ。
「とりあえず移動しようぜ。しばらくみんなに会っていなかったから会うのが楽しみなんだ」
そう言って西条に話しかける。ありきたりなセリフだから違和感を持たれることもないだろう。
「……蓮夜?」
そう思っていた時期がありました。
やばい、速攻で違和感を持たれている。そういや記憶を失う前の俺は面倒くさそうな性格をしていたんだったか?
「どうした?俺がみんなに会うのが楽しみって言ったらおかしいか?」
「…正直おかしいと思う。前までならそんなこと言わなかったろ。なんかあったのか?」
「まあちょっと思うことがあってな」
「ならいいが…」
ちょっと怪しまれたがなんとか誤魔化すことができた。危ない危ない。ボロが出ないように気をつけないとな。
「それより早く行こうぜ。みんなを待たせる訳には行かんだろ」
そう笑顔で西条に話しかける。
「………」
「どうした?」
特に変なことを言ったつもりはないんだが?
「……お前、本当に蓮夜か?」
ボロ出し過ぎだろ。というかどこで違和感持たれたんだ?分かんね。あーもういいや(諦め)。
「月読蓮夜で合ってるぞ。ただしここ二年くらいの記憶を失っているが」
「……は?」
面倒くさくなって記憶喪失と伝えると西条は唖然とした表情になった。まあそうなるわな。
「は?マジで記憶喪失?冗談じゃなくて?」
「冗談じゃなくてマジで。俺自身もまだ戸惑っているが。嘘だと思うなら瑠璃に聞いてみろ。クラスメイトだろ?」
「瑠璃?……ああ、藤林か。本当だって言うならわざわざ聞かないが…。というか昔は下の名前で呼んでたのか」
「ん?記憶を失う前の俺は違ったのか?」
「あー俺の記憶が確かなら入学式の時から苗字で呼んでたぞ」
「そうなのか」
そういや病室で目覚めた時に下の名前で呼んだら戸惑っていたような気がするな。記憶を失う前の俺は高校生にもなると異性を下の名前で呼ぶのが恥ずかしいとでも思ったのだろうか?
「昨日の電話で冗談って言ってたが本当だったのか。大丈夫なのか?いや、すまん。大丈夫じゃないから記憶がないのか。怪我は?」
幼馴染とはいえ付き合っていない女性を下の名前で呼ぶのはやめたほうがいいのだろうかと考えていると西条が気遣うようにこちらを見ていた。嘘と思われても仕方ないことを言ったのにそれを信じて俺を心配してくれるなんてこいつはいい奴だな(単純)。
「頭を打ったらしいが記憶がないこと以外は他に大した怪我はなかったらしくてな。検査したが大丈夫そうだ」
「それならよかった……ってあまりよかったとも言えないか。不幸中の幸いというか…それも不謹慎だよな…。上手く言えないがすまん!」
西条は何も悪くないのに何故か謝られてしまった。どう反応していいのか分からないのだろうが俺としては気にせず普通にして欲しい。まあ逆の立場なら俺もどう反応したらいいか分からないだろうからこちらから積極的にいくべきか。
とりあえず二度目の初めましてから始めよう。
「改めて月読蓮夜だ。よろしくな」




