「プリクラ撮影のきっかけ」
22話付近の物語です。
「美里ちゃんお久しぶり」
待ち合わせ場所のショッピングモールの入り口付近に立っていると陽気な女性が肩を叩く。大学時代の友達の早苗ちゃんだった。
「お久しぶり、早苗ちゃん。元気だった? 」
私が尋ねると彼女はニコリと微笑む。
「勿論、美里ちゃんも元気そうでよかったよ」
彼女はそう口にすると私の手を引いた。
「それじゃあ、久しぶりのお台場、楽しんじゃおう」
「うん」
私が答えるとともに彼女はショッピングモールの中へと足を踏み入れた。
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「それでさ、パインでの話、本当? 」
ショッピングを終えて喫茶店で休憩とパフェを食べていると突如として彼女の目つきが変わり食い気味に尋ねてきたので思わず面食らう。この前の話というのは修三君のことだった。
「本当だよ、私もびっくりしちゃった。普通にスーパーで買い物してたんだもん」
「灯台下暗しってやつだね。それでどう? その彼とは上手くいってるの? 」
「……多分」
私が答えると彼女がパンと両手を叩いて音を鳴らす。
「やったじゃん! あの告白されても断ってた一途な美里ちゃんが報われる時が来たんだ! それでどんな人なの? 写真とかないの? 」
「えっと、それは……」
不意な問いに思わず目を逸らす。思えば彼と写真を撮ったことなんてなかった。
やっぱり私達思っているほど進展していないのかな
不安に駆られ俯くと早苗ちゃんが胸を叩いた。
「そういうことなら私に任せて」
口にするとともに彼女はスマートフォンを手に取る。
「これを使えばいいんだよ 」
そう言う彼女が手にしているスマートフォンの画面にはプリクラが映されていた。
「それじゃあ、このプリクラを彼に送って」
そこまで言って彼女の考えていることが分かった。このプリクラをきっかけに私と彼がプリクラを撮る流れを作ろうとしてくれているのだ。
「気が付いたみたいだね、お礼は彼とのプリクラでいいよ」
冗談交じりに彼女が口にしたその時だった。ふとある考えが頭に浮かんだ。
「それならさ、その前にこの自由の女神を送るのはどうかな? そこからお台場にいるよってなって最後にプリクラを見せたり、どうかな? 」
「凄いよ美里ちゃん、そっちのほうが自然だよ」
私の提案に彼女が満面の笑みを浮かべて答える。
「ありがとう、それじゃあ。行くよ」
スマートフォンを手にする、気のせいかいつもよりもずっしりと重い気がした。
上手くいきますように
私は彼女が見守る中で深呼吸をすると送信ボタンをクリックした。




