表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

まじゅう童話 ▶ 〈女神さまの島〉スペシャル 『トカゲがバナナに化けるわけ』

 

『トカゲがバナナに化けるわけ』


 むかしむかし、南海のとある大きな島に、一柱の美しい女神さまがおりました。

 女神さまはおやさしく、素晴らしい力をおもちでした。大昔、大きな島が災害で荒れはてたとき、わざわざ引っ越して来られ、水の豊かな緑の土地にもどしてくれました。


 だからなにかあったとき、島の動物たちは女神さまをたよったのです。……………… ちょっと、まいぺーすなのが玉にきずですけどね。



 ある日のこと、森にくらすオオトカゲが、女神さまの神殿おうちへやって来ました。きれいな大きな湖のただ中に、大きな木がポツンと生えています。

 白い神殿ツリーハウスがそこにありました。

 オオトカゲは岸辺で叫びます。


「女神さま! 女神さまあ!」


「はい、はぁい。そんなに叫ばなくても聞こえますよぉ」


 ザザザ………うねねね…………と。


 ぐい、と大木は湖面から持ち上がり、太い根をオオダコのようにうごめかせ、湖岸へにじり寄りました。白い神殿ツリーハウスは上にのせたままです。

 なめらかに歩きすぎ、ちょっと不気味。


 あと、大木の枝葉には果物が鈴なりでした。オレンジ、ブドウ、マンゴー、キウイ………… イチゴやスイカやメロンまで。

 カラフルに実りすぎて、へんてこりん。



 もっとも、オオトカゲは少しも気にせず。

「女神さま、お願いします!

 仲間が毎日、ムシャムシャ食べられています。

 西の森のキング金猿をなんとかしてください、このままではぼくら、絶滅してしまいます!!」


「キング金猿さんですか………(困り顔)」


「あいつはいつも腹ぺこなんです。

 食べれば食べるほど大きくなるので、食欲にキリがなくて、どんどん怪力になります。ぼくらでは、どうしようもないんです」


 オオトカゲは、群れで何度も立ち向かっても敵わず、今はひたすら逃げています。しかし、大猿はしつこくて、数は減る一方でした。


「………… 全滅は困りますねえ」

 女神さまは、でも、と続けます。


「【神界】のルールで、わたしは自然のルールそのものにうかつに手を出せないんです。

 キング金猿さんはやり過ぎなんですが………」


「………あのぅ、つまり?」


「つまり女神わたしが、オオトカゲさんに肩入れして、キング金猿さんを直接討伐したり、安全安心な新しい土地をつくってあげるのはダメなんです」


「そんなぁ!」


「だ、だいじょうぶ、まかせてください!」


 女神様は、とん、と自分の胸を叩いて笑顔。「オオトカゲさんへギフトです。あなたたちを、ちょっといい感じにしてあげます」


「ぼくらへギフト…… ?

 自分たちで戦う力を授けてくださるのですか?

 でも、あいつはケタ違いに大きくて強いんです」


 ひょろっとしたオオトカゲは、超大型の暴れザルに負けないパワフルなすがたをイメージしました………… ティ○ノサウルスくらいかな?

 みんな大きく強くなれば、逃げ回らずにすむでしょう。でも、そこまで変わったら、もうオオトカゲじゃありません。

 食べつくされるのと同じでは?


「だいじょうぶです、ちょこっと変わるだけですから。

 さぁ、質問です。…………バナナ、すきですか?」






「あ! 大食いサルが来たぞ。みんな、練習通りいくぞー!!」


 数日後、オオトカゲたちが隠れている森にキング金猿がやってきました。鼻がきくのです。

 しかし、オオトカゲはあわてず、騒がず。数匹づつ身を寄せると、近くの木の枝にぶら下がりました。

 数秒後、キング金猿がやって来ましたが、その場でキョトン。おいしいトカゲ(オヤツ)はどこにも見当たりません。


 さっきまでオオトカゲのいたところには、なんと、立派なバナナの房が…………

 黄色く完熟して美味しそうです。


 オオトカゲは、首のまわりに黄色のエリマキが生え。ひら、と、マントのように広げ、クルリと身体をつつんで、バナナにソックリの見た目になっていました。

 そばの仲間も同じバナナです。


 女神さまからのギフト、バナナ擬態でした。


 すがただけでなく匂いまでバナナ。どんな理屈でしょうか?

 でも、さすがは女神さま。すごいカムフラージュ!


 オオトカゲたちはバナナに擬態したまま、声を殺して喜びました。が、



「ホホ? ウッホホホぅ♪ フォ〜う!」


( あ!! バナナがいっぱいだ♪ いただきまーす! )


「「「え?」」」





「め、女神さま! ダメです!!

 ぼくら、おいしく(バナナ味で)食べられちゃってます! 

 なんとかして!!」


 オオトカゲ………… あらため、エリマキバナナオオトカゲは、また、女神様の湖にやって来ました。もっとつかれたすがたで、もっと必死に大声をあげました。

 でも、女神様の神殿ツリーハウスは今日は無反応。


【 しばらく、お散歩してます 】


 ………… 大きなメッセージプレートが枝に下がっていました。ちょっとホコリをかぶっています。


「ダメだコリャ!」





 ところが数日後。


 キング金ザルは女神様につかまり、神罰で骨のモンスターにかえられて、島のすみっコへ追放されました。


 大ザルはピカピカ光るものを拾って、パリパリ食べてしまっていました。キレイなものの味と歯ごたえが気になったのです。

 これが実は、女神さまのお気に入りのネックレスでした。

 お散歩中、うっかり、落としたのです。


 どうやら、オオトカゲたちへの肩入れはダメでも、女神さまへ『しでかした』ものに神罰を下すのはオーケーでした。


 エリマキバナナトカゲは大喜びです。


 女神さまの人気は急上昇、キング金猿の大食い(悪いくせ)をついた罠(ほんとに?)をほめたたえました。



 かれらは、今、島の森で平和にくらしています。


 バナナのふりをするからだはそのままなので、ときどき、ちょっとしたことで美味しそうに木の枝に成ってしまいます。けれどそのたび、キング金猿に追われた怖ろしいときを思い出すのでした。


 だから、エリマキバナナトカゲたちは、島の女神様をとても敬い、とても好いています。子どもはキラキラした目で拝みます。



 女神さまはそのたびに、恥ずかしそうにすがたを隠してしまいますけどね。






原典なしの創作童話。


小説『蜘蛛の意吐』の世界(大陸)の片隅に、新たなつくった二次創作の孤島が舞台で。ファンタジーモンスターと、アフターマン風の進化生物を紹介する話(記事)でした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ